『中医証候学』

中医学をコンピュータ(PC)化するにはどうすれば良いか?
既に中国では着々と実用化が進んでいると聞く。この度は『中医証候学』上・中・下(中国医薬科学出版社 2008年第一版)を入手して少し読んでみた。
PC化するにはまず誰が見ても納得するような証候学が完成していなければならない。それに挑んだのが本書である。
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中医内科学 淋証9

681. 尿濁の治療原則は何か?臨床的にはどのような証候に分けられるか?
尿濁の初期は湿熱によるものが多く、実証である。
治療は清熱利湿が適し、病状が長引くと脾腎が虚損し、治療は脾腎を補い下元を固摂するべきである。
虚実が混在する場合は標本同治を行う。
臨床的には湿熱内蘊脾虚気陥腎元虧虚の三つの証候に分けられる。

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中医内科学 淋証8

679. 淋証の予後について述べよ。
淋証の予後は、そのタイプと病状の重さに関わることが多い。
一般的に、淋証が初期段階であれば、治療は比較的容易である。しかし、一部の熱淋や血淋では、湿熱が三焦に広がり、温熱が営血に伝わることで、高熱、意識混濁、譫妄などの重篤な症状が現れることがある。
淋証が長期間治癒せず、または繰り返し発症すると、労淋に転化するだけでなく、脾胃の衰微、腎虚肝旺、肝風上擾を引き起こし、めまい、四肢のだるさ、吐き気、食欲不振、焦燥感、さらには昏迷や痙攣などの症状が現れることがある。
血淋が長引くと、血尿が続き、患者の顔色は憔悴し、体は痩せ細り、時には腫瘤が触知されることもある。これは気滞血瘀が進み、癥積が形成されたためである。
石淋では、砂石が大きすぎて長期間排出されず、水路を塞ぎ、尿の流れを妨げることで、濁陰が内に留まり、腎気を損ない、さらに水邪が滞留して全身に氾濫し、浮腫を引き起こす。
長引くと、濁陰が上逆し、心や肺を犯し、癃閉、喘息、動悸、意識混濁などの症状が現れる。したがって、淋証の治療は迅速かつ徹底的に行い、病状が深く長引いて他の症状を引き起こすのを防ぐべきである。

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中医内科学 淋証7

677. 労淋の主症状、治療法と方薬について述べよ。
症状としては、小便の赤みや渋みが強くないが、淋症が持続し、発作を繰り返し、疲労時に悪化し、腰や膝がだるく無力感があり、舌質は淡く、脈は虚弱である。
治療は健脾益腎が適切。方剤は無比山薬丸を加減して用いる。
薬物組成は山薬、茯苓、沢瀉、熟地、山茱萸、菟絲子、巴戟天、杜仲、牛膝、肉蓯蓉、五味子などである。

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中医内科学 淋証6

675.血淋の主症状、治療法と処方薬について述べよ。
血淋の証治には実証と虚証に分けられる。
実証では小便が熱くて刺すように痛み、尿色が濃い赤色、または血の塊が混じり、激しい痛みと膨満感があり、あるいは心煩、舌苔が黄色、脈が滑数となる。
治療は清熱通淋、涼血止血が適する。方剤は小薊飲子導赤散を加減して用いる。
薬物組成は小薊、生地、蒲黄、藕節、白茅根、石葦、木通、竹葉、梔子、滑石、琥珀、甘草などである。
虚証では尿色が薄い赤色で、尿の痛みや渋滞感が目立たず、腰や膝がだるく力が入らない、全身倦怠感があり、舌は淡紅色、脈は細数となる。
治療は滋陰清熱、補虚止血が適する。方剤は知柏地黄丸を加減して用いる。
薬物は生地、山薬、山茱萸、丹皮、知母、黄柏、阿膠、旱蓮草、小薊などである。

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茯苓の淡滲は傷陽となる

茯苓の味は甘く淡白で、性質は平、心・脾・肺・膀胱の経に帰する。効能は健脾補中・利水滲湿・寧心安神である。漢方薬において「平平淡淡一君子」と呼ばれている。常用される方剤の中では、よく茯苓が見られる。
「補気の主方」である四君子湯から、「痰飲の通剤」である二陳湯、「補陰の主方」である六味地黄丸、「水中補火の聖薬」である腎気丸まで、どの処方にも茯苓が欠かせない。
しかし、よく使われる補気方「補中益気湯」には茯苓が使われていないことに気づく。これは製方者の意図的な削除か、それとも無意識の見落としだろうか。

補中益気湯は李東垣によって考案された。李東垣の『内外傷弁惑論』と『脾胃論』を読むと、補中益気湯は四君子湯を加減して作られたものであり、李東垣は意図的に方中の茯苓を除去したことがわかる。
補中益気湯と清暑益気湯は四君子湯から茯苓を除き黄耆を加味をしたものである。これは茯苓が秋の降と冬の蔵には適するが春の昇と夏の浮には適さないからである。すなわち淡滲下泄で脾気の昇清に不利な茯苓を意図的に除き、益気昇清の効能を持つ黄耆を用いたのである。
数ある漢方薬の中でも、淡味薬ほど地味なものはないだろう。その地味さゆえに、功績はあっても過ちを犯しにくく、多くの臨床医の処方で頻繁に使用され、用量も往々にして大きい。例えば脾胃の病を治す際には茯苓を用いずにはおられず、15~30gと大量に使われることも多い。脾虚を健やかにし、湿気を滲ませ、熱を上げず、中を冷やさない。『神農本草経』では延命長寿の効能があるとされ、現代の薬理研究では免疫力向上や抗癌効果も認められている。しかしこのような「聖薬」も、李東垣の見解では使用には最も慎重を要し、大量投与はもちろん、乱用は特に危険である。淡味で滲透作用のあるものは陽気を損ない気を消耗するからだ。李東垣の言葉を借りれば「重くその陽を竭ツクす」のである。

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六経弁証と臓腑弁証

かつて女性患者を治療したことがある。毎月、月経が来そうで来ず、10日以上遅れ、下腹部の膨満感、頭痛、不眠、体の熱感や焦燥感を自覚し、月経が終わってからようやく症状が緩和する。
普段から手足が冷え寒がり、疲れると動悸がし、冷たいものを食べると胃痛がする。
丹梔逍遥散を服用すると月経を促し経前の諸症状を緩和できるが、体調を完全に回復させることはできない。
今回もまた月経前で、症状は前述の通り、舌質は紅、舌苔は薄白、脈は細弦である。
臓腑弁証で考えると脾虚肝鬱血熱が加わった状態であり、丹梔逍遥散が適している。
しかし六経弁証で考えると、寒邪が内侵し、熱症状は寒邪が鬱して熱に化したもので、病の根本は寒にある。
さらに考えを進めると、寒邪は陰にあり陽にはない、三陰経の病である。
冷飲食による胃痛は太陰病の疑いがあり、四肢の冷えや寒がりは少陰病の可能性があるが、脈が細弦であることから、本証は厥陰経に邪があると考え、太陰経を解する桂枝湯や少陰経を解する麻黄附子細辛湯は適さず、厥陰経を解する当帰四逆湯を処方した。
処方:当帰12 桂枝9 赤芍12 大棗3個、細辛・炙甘草・通草3 烏薬・牛膝9 射干12 3剤を煎服。
服用後月経が来て症状が消失した。この方法で3ヶ月治療し、体調が回復した。

筆者は臓腑弁証を貶めたり六経弁証を高めたりする意図はない。歴史上、臓腑弁証を巧みに用いた中医大家は数多い。二つの弁証治療法の違いを理解し、優れた方法を選択することは臨床効果を高める上で大いに役立つ。
 临证传心与诊余静思:从张仲景到李东垣/高建忠著 より

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中医内科学 淋証5

673. 石淋の主症状、治療法と方剤について述べよ。
症状としては尿中に砂石が混じり、排尿困難、あるいは排尿時に突然途切れ、尿道に苦痛を感じ、下腹部が引きつるように痛み、または腰が張るように激しく痛み、尿に血が混じり、舌は紅く、苔は薄黄で、脈は弦または数を示す。
治療は清熱利湿、淋を通し結石を排出させることを主とし、石葦散を加減して用いる。
薬物には金銭草、海金砂、石葦、冬葵子、鶏内金、萹蓄、瞿麦、滑石、白茅根、車前子、甘草などがある。

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中医内科学 淋証4

671. 古人の「淋証は発汗を忌み、補を忌む」という説をどう理解すべきか?
『金匱要略』には「淋家は発汗すべからず」という戒めがある。臨床的に見れば、必ずしもそうとは限らない。
淋証には悪寒発熱が見られることが多いが、これは湿熱が蒸し上がり、邪気と正気がぶつかり合うことで生じるものであり、発汗解表は適切ではない。
淋証は膀胱に熱がこもり陰液が不足していることが多く、辛散発表を誤用すると、熱を下げられないばかりか、営陰を傷つける弊害がある。
ただし、淋証が明らかに外感によって誘発された場合や、淋病患者が新たに外邪を受けて悪寒・発熱・鼻詰まり・鼻水・咳・咽頭痛などの症状が出ている場合は、辛涼解表剤を適切に配合し、表裏を同時に治療すればよい。
『丹溪心法』は淋証について「最も補気の薬を用いるべからず。気は補を受ければますます脹り、血は補を受ければますます渋滞し、熱は補を受ければますます盛んになる」と述べている。これは実熱証の場合のみに当てはまり、補うと「実実の戒め」に触れることになる。
しかし、腎虚や脾弱などの虚証については禁忌とする必要はなく、虚すれば補うのが原則である。
したがって、淋証の忌補説に固執すべきではなく、臨床では証を詳しく観察して原因を求め、原因に基づいて治療方針を立てるべきである。

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中医内科学 淋证3

669. 淋証の弁証の要点を述べよ。
淋証の初期または急性発作期は実証に属し、膀胱湿熱・砂石結聚・気滞不利が主である。
久病は多く虚証に属し、脾腎に病変があり、脾虚・腎虚・気陰両虚が主である。
同一の淋証でも、病因・病機の違いにより、実証もあれば虚証もあり、あるいは虚実挟雑の証候もある。
例えば同じ気淋でも、気滞不利によるものは実証に属し、気虚下陥によるものは虚証に属する。
同じ血淋でも、湿熱下注で熱盛が絡を傷つけるものは実証に属し、陰虚火旺で虚火が絡を灼くものは虚証に属する。
また、熱淋は治療後、湿熱が未だ尽きず、腎陰不足や気陰両傷など虚実併見の証候が現れることがある。
要するに、淋証は虚実を弁別するとともに、臨床特徴を踏まえて証候分類を行う必要がある。

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中医内科学 淋証2

667.熱淋、石淋、血淋の三つの病因病機にはどのような関連があるか?長期間患った後にはどのような病理的変化が現れるか?
三者は密接な関係があり、いずれも熱邪によるものである。
熱淋は湿熱が下焦に鬱結し、膀胱の気化が不利になることで生じる。
もし熱が盛んになって絡脈を傷つけ、血を妄行させると、血液が尿とともに溢れ出て血淋となる。
熱邪が尿を煎熬して砂石を結成すると、石淋となる。
三者はいずれも初期には熱証・実証に属する。
病気が長引くと、いずれも実証から虚証に転じたり、虚実混在の証となったりする。
例えば血淋が長期間治癒しないと、腎陰が消耗し虚熱が内生する。
石淋が長期間治癒せず血尿が止まらないと、気血を消耗することになる。
熱淋が長引くと陰液を消耗し、腎陰不足などを引き起こす。
三者はいずれも長期化して反復治癒しない場合、脾腎を損傷し、労淋となることもある。

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