漢方メール相談について

私のHPを見て漢方の相談メールを出される方には必ず「相談表」に年齢と生年月日を書いてもらっています。なぜ生年月日まで要るのかと疑問に思われるかもしれませんので説明します。

メールによる相談は本人との対面がないので情報が不足しています。特にインスピレーションのような直感がありません。そこで少しでもそれに近づきたくて生年月日を提出していただきます。
これによって私は質問者の九星(占いの一種)を知ることができます。長年の経験から九星によってその人の体質を垣間見ることができるのです。
更に身長と体重も記入してもらいます。女性などはこれを省略する場合がありますが、漢方診断では大切な情報なのです。恥ずかしがらずに書いてほしいものです。

世間では「漢方相談は直接本人と会わなければ正しい診断は出来ない」と云われていますが、そんなことはありません。
問診表が完備して、生年月日と身長体重があればかなりの所まで診断が出来ます。
問診表には病名のほかに詳しく症状を自分なりの言葉で表現してください。「自分なりの言葉」はインスピレーション(直感)にも勝る確かな情報になります。

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鼻炎は胆経鬱熱が多い

鼻は肺の竅(穴)ではあるが慢性鼻竇炎ともなると肺からではなくて胆経から治さなくてはならない。
なぜなら鼻炎の初期は感冒外感から始まるが表熱が長引くとやがて裏へ入り胆経の鬱熱に変わるからだ。
胆経は上って鼻を犯し頭脳(鼻竇)を蒸灼するというのが中医の理論である。

鼻渊は又脳漏と称し,現代医学の急慢性鼻竇炎に相当する。
小儿の鼻渊の主要な発病機理は外感風寒、風熱,胆経鬱熱,肺気虚寒の三方面であるが,胆経鬱熱による鼻渊が臨床上もっとも多い。
胆木は最も風邪を悪み,外感風寒、風熱で表邪が解けず胆中に入ると鬱熱となる。

清代の医家で陳士鐸の著《辨証奇聞》には取渊湯というのがあり、辛夷、当帰、柴胡、貝母、梔子、玄参の六味薬からなる。
書に曰く:“胆は陽に属し,頭は亦陽なり。胆熱は久蔵されず,必ず熱は上走して頭に移る。脳は頭中に在りて,頭は蔵熱の処にあらず,小さな穴(経穴)から入り,大きな穴(竅)から出る,鼻がそれである。
六味薬の中,当帰の用法が最も巧みであり,原方では補益脳気の意味で大量に使う。張教授は小儿の鼻渊を治療する時,当帰を20gとする。
《聖済総録》に謂く:“脳は髄海なり,蔵するばかりで瀉するものはないのだが胆熱が脳に移ると,蔵した者も瀉される。
それで脳液が鼻から下滲して,劇症の時はあたかも水源から下るように濁涕が下りて已まない。”

それゆえ張教授は,鼻渊は脳液が尽く出てしまうから,脳気を大補しなければならないし,又脳液が直かに流れると,髄は精を作らないので,精が少なくなり,大腸に分布されず干燥する,故に当帰を大用するのは補脳添精の功と,滋潤腸燥の益を図っているのである。
全方は清宣と補瀉を并用し,胆火を消し脳気を盛んにすれば,濁涕は止り鼻竅は通ずる。
張教授は本方を鼻渊に応用しており臨床では鼻塞が厳重で,黄緑色の流涕や,血を帯びるのや,質が稠で気味が濃重で,舌紅苔黄,并せて煩躁易怒を伴い,頭暈口苦の症状がある。
もし肝胆湿熱の重い者なら,竜胆瀉肝湯を合用し肝胆を清瀉し,利湿開竅する。

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尿路結石に壮水行舟法

宋代の理学思想家 朱熹の詩の一首に《泛舟》というのがある。
昨夜江辺春水生、艨艟巨艦一毛軽、向来枉費推移力、此日中流自在行
(昨夜川岸に春の水が流れ、巨艦も一毛のように軽く滑っていく。これまで船を押すのに苦労したのが無駄であったかのように、この日は流れに自在に進んでいくではないか)
これは一旦 豁然として貫通したときの喜悦の心情を表している。
ここに形容されるように壮水行舟之法を用いる事が腎結石の治療に最も相応しい。

腎結石( 石淋) はヤカンの底に溜まる湯垢のようで、腎水不足によって虚火が起こり廃渣を煉灼して結聚になったものである。
腎石が阻塞すると排尿は不暢となり尿液が瀦留しやすくなり、更に結石の増大につながる。
一般に腎結石の治療には車前子、木通、沢瀉等の利尿剤が多用されている。
しかしこれは尿管まで降りた結石には有利であるが、利尿し過ぎると必ずや腎水を耗傷し腎臓功能にも影響する。
筆者は本病を治療するに化石通淋の基礎に立ちつつも必ず腎水を補うようにしている。
「壮水行舟」とは水が漲れば船が行き易いように、腎や輸尿管中に嵌頓した結石も自然に下るという意味である。

熊某, 男,48 歳。

【病因】腎水が虧虚したので, 膀胱に熱が結ぼれ, 虚火が煉灼するや, 廃渣は結聚となった。

【証候】左腰腹に陣発性絞痛が2 年つづく, 尿意は頻頻としてあるが不暢であり, また耳鳴, 頭昏もある。
舌質は偏紅で, 裂紋あり, 脈は左尺部が弦細。
X 線で左腎腎盂に約1.1cm ×0.6cm の陰影がある。

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帯状疱疹后遺肋間神経痛

病例
 張某,女,61歳。2003-04-20初診。
前右側の脅肋が疼痛しているうちに疱疹が出現してきた。
西医診断では帯状疱疹である。
西薬治療26日で疱疹は消失したが右側肋間に持続性疼痛が后遺した,夜間には尤も甚しく,入睡し難い,検査では肝胆疾病はない,西薬にて止痛治療を3年余行ったが効果はない,并せて胃部不適も引起した。

中医診: 右側脅肋の疼痛,食欲不振,舌質は紫,脈は弦細。

診断: 帯状疱疹の后遺肋間神経痛(淤血型)。

治法: 活血化淤通絡。

薬方: 旋覆花湯加減。

薬物組成: 旋覆花・紅花・焦山査12g,桃仁・当帰15g,柴胡・鬱金・川楝子・延胡索・炒白朮・新絳(茜根)10g。

服薬3剤の后,疼痛は大いに減り,睡眠、飲食ともに正常となった。
守方継服2剤にて痊愈した。

※旋覆花湯《金匱要略》が肝着病を治すのに用いられている事より旋覆花には化痰作用のほかに血脉を通じて理気止痛にも働くと思われる。

※肝着の着とは邪気留着の意である。肝臓の気血が鬱滞して胸脅の痞悶不舒あるいは脹痛を出現する。按摩をすれば楽になり、また熱飲を喜ぶのが特徴である。

天津市寧河県豊台医院中医科,中医内科臨床,韓以季(1954-)
(河北中医 2007年 1月 )

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膀胱の気化作用とは

「素問、霊蘭秘典論第八」 にある「膀胱者,州都之官,津液藏焉,氣化則能出矣」というくだりをどのように解釈するか?
まず州都とは城市(都市)のことで、辺地から中央へと川の流れが集まる事を意味する。
城市では出入に関所が設けられているように、川の流れも一旦水門によって貯められる。
それで膀胱は政府の官職が行う水門の開閉によって集聚した水液を管理しているのである。
気化作用といえば「水が気化して水蒸気になる」ことを意味している。
だから従来の解釈では気化を腎の透析機能そのものと看做してきた。
しかし気化が腎だけではなく肺(肌表)や肝によっても行われることを見逃してはならない。

医案例1
3歳の男子、時邪疫毒に外感した。
発熱38℃、全身および目が鮮明な黄色となり、口渇あり、小便短少で色は黄赤、大便は秘結し、顏色は灰白色で、腹が膨張している。舌苔は黄膩、脈は弦数。

弁証
陽黄で、熱が湿よりも重い。急性黄疸型伝染性肝炎。

治法
太陽を開き湿熱を清すれば、発汗利尿して太陽・陽明に遏伏する湿熱が両解しよう。

方薬
麻黄連翹赤小豆湯
 麻黄3 連翹・杏仁・鶏内金6 桑白皮・枳殻・大黄5 茵陳蒿9 赤小豆10

 一週間で諸症は癒えた。

解析
淤熱が裏にあるのに表が塞がっているから急性黄疸型伝染性肝炎を起こした。
苦寒清熱の薬が行くところではない。
太陽の表を開き湿熱の裏を清して、肝胆および皮膚内の湿熱病毒を追い出さなければならない。
茵陳蒿は気分薬で陽明に遏伏する湿熱を清し、また太陽膀胱に入り気化を助け、発汗利水・利胆退黄に働く。

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花粉症の漢方は

漢方ではアレルギー性鼻炎のことを鼻[鼻九]といいます。
突然あるいは反復発作性の鼻塞、鼻癢、噴嚏、鼻流清涕が特徴です。
季節性であったり通年性であったりしますが、花粉症と最も近いと思われるのが肺経鬱熱型の鼻[鼻九]でしょう。
(中国には花粉症は無いのでアレルギー性鼻炎の中から類例を探すことになります。)

このタイプは熱気に遇った時や辛熱性の食物を食べた時に「鼻脹塞、酸癢不適,噴嚏頻作,鼻流清涕」の症状をあらわします。

私もこのタイプの鼻炎になっています。
例えば寒い戸外から暖かい室内に入った時や、熱いラーメンを食べた時などは食後にドーッと鼻流清涕があります。水洟であったり白い粘性の鼻涕であったり。
ほかには寝起きに鼻血が混じることもしばしば。

これは多くは肺経の湿熱が鼻竅に壅結する事で起こります。
その湿熱はどこから来るかといえば、長期にわたり鼻竅に風湿熱の邪毒の侵襲を受けたり、或いは厚味を嗜食して肺胃に熱がこもる事によります。
湿熱の邪濁は鼻竅に蓄積し続けるとやがて鼻粘膜に変性を起こします。
軽ければ鼻塞だけですが、ひどくなると凝滞したものは半透明で柔軟な鼻息肉(ハナタケ/鼻痔)となり、鼻腔を塞ぐようになります。
花粉症ではここまでは行かず症状は鼻粘膜の変性に止まっています。

この湿熱鬱滞せる花粉症を治すには、肺胃の熱と鼻竅の風湿熱を清散しなければなりません。
その働きは現代風にいえば漢方薬の抗アレルギー剤になるでしょう。

主方は辛夷清肺飲(呉謙《医宗金鑑》)加減です。

処方: 黄岑,知母,桑白皮,枇杷葉,山梔子,升麻,麦門冬,百合,辛夷花,地竜干
     若しクシャミ(噴嚏)が多ければ +蝉蛻、白僵蠶、烏梅

※元の処方には石膏が入っていて鼻汁は粘稠な場合に限られるから必ず去らなければならない。地竜には抗アレルギー作用がある。

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女性の陰部掻痒 (カンジダ)

2種類の陰痒があります。

1. 湿熱が原因
 分泌液が多く、ただれたり おりものがあります。多くは急性で竜胆瀉肝湯が主方です。
2. 陰虚が原因
 陰虚なので分泌液はなく乾燥性です。多くは慢性で知柏地黄丸が主方です。
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女 27歳 小太り
もっとも治して欲しいこと:
一番目: 外陰部と肛門の痒み(ただれてしまい、特に夜痒くなる)
 幼児の頃から陰部が痒くなりやすかった。
17歳頃にアトピーが非常にひどい状態になってから再度 痒みが再発した。

二番目: 鼻と喉の境目辺りに常に痰がたまっていて、声がかすれることがある。
 23歳くらいから痰の切れが悪くなった。

三番目: 17歳頃、急激なダイエットをしてから つばを飲んだりすると耳の奥で“ブツッ”というような音がする。耳鼻科で耳官閉塞症と診断された。自分では耳垢がたまっている感覚があり、ついつい耳の中を綿棒でいじってしまい、耳の中が常にただれたりかさぶたのようなものがある状態。

四番目: 紫外線に極端に弱い。
 10歳頃から直射日光に長時間当たると皮膚が真っ赤になり、あたりすぎるとただれてしまう。特に顔の皮膚が弱い。
現在も、たった15分程度強い陽射しをあびただけで顔が腫れて真っ赤になってしまうことがある。

その他の身体状況: 暑がり。乾燥肌。胃は丈夫。食欲旺盛。

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胃痛・腹脹・背中痛

女 29歳 痩せ型
もっとも治して欲しいこと:  もともと便秘症で3年半前から胃が悪くなり、病院で薬をもらっていますが一向に良くならずに悩んでます。
症状は食事をした後 胃が痙攣したように痛くなり、その後みぞおちから右の肋骨の下→腹の中心部→そして右の背中が痛くなり、腹にガスがたまり苦しくてちくちく刺すように痛い。
食事をしていない時でもおなか全体や胃腸、右背中も痛くなります。
朝、吐き気がよくあります。

その他: 月経痛がある おりもの 乳房にしこりがある
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これは気の疏泄がスムーズに行われていないため肝気が鬱滞 (または肝鬱・気滞) していると思われます。

肝気が鬱滞すると「木克土」(または肝克胃) といって、五行の相克が起こりやすくなります。
木の肝が、土に当たる胃を犯して様々な胃障害を起こします。
最も多いのは胃痛や腹脹や便秘や吐き気などです。
たまに背中痛を訴えることもあり、肝鬱を取り除くと解消されるのを経験しています。

肝鬱それ自体では月経痛や乳房のしこりとして現われることが多いです。

肝胃不和 (気鬱と怒りが肝を傷つけ胃の消化機能に影響する) の証に該当します。
次のホームページを参照して下さい。

※ ホームページのメール相談例「胃痛」「胸やけ/げっぷ/胃痛」の例が出ていますので参考にして下さい。
あなたのケースとメカニズムが似ています。

おすすめの漢方処方

(1) 柴胡疏肝散・・・・・・・・・・(煎じ薬)
 (柴胡・陳皮・枳穀・川弓・白芍・香附子・甘草)

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営衛不和と不眠

日中の陽気である「衛気」が夜になっても陰脉に入れない"陽盛陰虚"という状態は「営衛不和」に似ている。
張仲景の桂枝湯は営衛を調和するのに用いているが桂枝湯系列の処方には不眠治療は出てこない。
ただ桂枝加竜牡湯には"男子失精,女子夢交"の治療があり、これは"虚労虚煩不得眠"の治療でもある。
小建中湯では"心中悸而煩"を治療し、桂枝去芍薬加蜀漆牡蛎竜骨湯では"臥起不安"を治療している。
(桂枝湯加減で不眠を治療するのは后世医家の応用法である。)

桂枝湯加減が適応する病人には食欲不振、自汗、盗汗、悪風が無ければならない。そして煩躁はない。
それを徐守愚は曰く"汗が出て不寐なるは陰陽の不足に非ず、陰陽の不和なり。"
しかも不眠と嗜睡が交替に出現し、不眠は連続して数日続くが比較的に元気である。
嗜睡は十数時間しか続かない。
だからこれには営衛を調和するだけで一般的な安神方法は用いないのである。
常用処方は桂枝湯加竜骨・牡蛎等である。
竜牡を加える訳は《杏軒医案》の所説にある。"心は虚霊の臓なり,草木は无情なり,物類の霊を借りて引となさずば効を望めず、亀板・虎睛・竜歯・琥珀・珍珠などを加入する也。"

从経典著作探求不寐辨治 より

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酸棗仁湯で不眠症が治るか?

不眠症にはいつも大変てこずります。
不眠症に至る過程は長いのに病人は性急に効果を求めるからです。
一般に汎用されている漢方処方は次の様です。

虚証
1. 心脾虧虚  帰脾湯
2. 心胆気虚  安神定志丸
3. 肝血不足  酸棗仁湯
4. 陰虚火旺  黄連阿膠湯
5. 心腎不交  交泰丸

実証
6. 痰熱内擾  温胆湯
7. 肝鬱化火  竜胆瀉肝湯
8. 淤血内阻  血府逐淤湯

実証の不眠は極めて稀ですからここでは虚証についてのみを考えてみます。
エキス剤にあるものは帰脾湯と酸棗仁湯です。
それで世間では酸棗仁湯が多用されているようです。
何故かもう一つは帰脾湯ではなく加味帰脾湯なのです。腑に落ちません。

ここで取り上げたいのは酸棗仁湯エキスです。
これで本当に効果があった例はあるのでしょうか?

酸棗仁湯 (酸棗仁 茯苓 知母 川弓 甘草)

このように誠に薬味が少ない処方ですが方意は難解です。
構成薬味から考えられるのは「滋陰養血,清熱降火,調血疏肝,安神除煩」とそれぞれ別々の効能からなり、原因としては肝血不足が挙げられ、症状としては「虚熱内擾,肝陽上旋,虚煩不得眠」となります。
だから中医では主治が「失眠,心悸盗汗,頭目眩暈,咽干口燥」となっています。
肝血虚といえば婦人の更年期障害が代表例で、足がほてり寝苦しく、夜中にカーッと熱くなり汗をかくというような時の症状とよく似ています。

それ以外の老齢による不眠症などは肝血虚ではなく、半夏[禾朮]米湯で述べた“陽盛陰虚”(陰陽のアンバランス)が原因となる場合が多いのではないかと思うのです。
半夏[禾朮]米湯はエキス剤には無いので使いづらいでしょうが、だからといって証を見ないで酸棗仁湯で済ませてしまうのだけは止めて欲しいものです。

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不眠症の奇経治療2

不眠症の奇経治療 への追加です。
健康体では衛気は日中体表を回り、夜になると体内へ潜むので睡眠を催すと云われています。
不眠症の者はこの衛気の移動がスムーズにいかず、いつまでも衛気が陽[足尭]脉に盛んのまま残っています。

なぜ衛気が陰[足尭]脉に入れないのかというと『霊枢』では「厥気が五臓六腑に客したため衛気が陰に入れず」となっています。
その厥気(冷え)とは具体的に云うと"痰湿"のことです。痰湿はどこから産するかといえば胃経からです。

一方では陽[足尭]脉に残っている衛気は体表に近いので発汗法で外へ出してやるのが早道です。
そこで半夏が出てくるのです。
半夏の薬性は辛温です。
胃経の気分に入り厥気(冷え)の元凶である"痰湿"を除きます。
痰湿は汗となって衛気を伴って体表から発散します。

日中の衛気が入って来なかったので陰[足尭]脉は虚の状態になっています。
そこで胃経の血分に入って滋陰するのが「」即ち[禾朮]米です。
粟は北方の膏梁で味は甘酸、よく胃経の血分に入る。
内からの滋養で衛気は再び生産されます。

外では衛気を泄し、内では衛気を生産し睡眠体勢を整えると不眠症は解消します。

《霊枢》卷十。厥気客于五臓六腑,衛気不得入于陰,陰虚,目不瞑。

《古方選注》:今厥気客于臓腑,衛気独行于陽,陽[足尭]気盛不得入于陰,陰虚目不瞑。

最後にもう一つ、半夏[禾朮]米湯を煎じるには長流水を用います。
即ち千里の長流を下る江河、渓澗の水です。これは通利作用が強く出ます。
更に長流水を大きなお盆に取り、柄杓で掬い上げては落とし、水泡が無数にできるまで繰り返します。
これを“労水”といい、昔の人は「水も動かせば陽性に変わり,上へ揚げれば下走の勢を得る」と解釈しています。
長流水で出来た労水は軽くて発汗法という泄邪の目的によく適します。

煎じ方にも一工夫があります。葦薪火で煎じよ、となっています。
葦薪火とは武火すなわち強火のことです。瀉法になります。

病が新しい者は飲んだら直ぐに寝なさい。
汗が出れば治るし、久しき者でも3飲すれば治るでしょう。

(病新発者,覆杯則臥,汗出則已矣;久者,3飲而已矣。)

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