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膝痛 (変形性膝関節症)

『中医症状鑑別診断学』には膝腫痛の項目はあってもこれは「鶴膝風、歴節風」の類で、いわゆるリューマチを取り上げており、腫れを伴わない膝痛(変形性膝関節症か)を“膝中痛”として別に扱うと云いつつ、詳説はありません。

最近幸いにして続けて三例の膝痛治験がありました。
どれもみな使った処方は健歩虎潜丸でした。
 (熟地8 亀板・何首烏・牛膝・杜仲・鎖陽・当帰3 威霊仙・羌活・白朮・党参・白芍・黄柏・干姜2 附子1)41

一番目は71歳の男性、赤ら顔でやや肥満体型、足の親指に痛風も持っていました。
二番目はその妹で57歳、中肉。
三番目はこの二人の長兄、76歳、痩せ型。

一番目の人が20日ほどで劇的に軽快するや二番目、三番目へと話が伝わり、どれもこれも次々と軽快して行ったのです。

二番目の女性は何度か抜水もしていましたが果たして本当に抜かなければならないほどに水が溜まっていたかどうかは不明です。
膝に水が溜まるのは「膝液症」「膝関節積水」といって又別の扱いになります。
一応この三例は“膝中痛”で、水は溜まっていないものと考えています。

ところで『中医証候鑑別診断学 (証候2版)』ではどうなっているだろうか。
「62.陰虚湿熱証」というのがあって、その説明は次のようです。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
多くは陰虚之体で,陽气が偏盛だと,臓腑経絡には先ず蓄熱が有ります。ここで風熱湿邪を感受すると発病してしまいます。体虚が本で,湿熱が標です。
肢体の関節や肌肉が疼痛して,痛みは定処に止まり,沈重感や,肌膚の麻木不仁,筋脉拘急牽引,活動后の劇化,患処の腫脹,灼熱があり,屈伸し難く,行動は不便になり,日中は軽く夜に重くなる。形体は消痩で,口眼は干燥し,顏面は黄で顴紅,潮熱や盗汗があり,失眠多夢,大便干結,腰膝酸軟無力となります。
治方は滋補肝腎に宜しく,三妙丸(《医学正伝》)合六味地黄丸(《小児葯証直訣》)を用いると良い。

蒼朮 黄柏 牛膝 熟地黄 山茱萸 山葯 茯苓 牡丹皮 澤瀉
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

上の解説文の中で潮熱盗汗,失眠多夢などは必ずしもなければならないものではありません。典型的なケースを述べてあるものと思わなければなりません。

ところで『燕山医話 (于増瑞)』に次のような実例が載っています。
nifty FKAMPO (13)#447

劉某という24歳の患者。1982年の盛夏に初診。
一ヵ月前に男の子を出産し、安産だった。
産褥期に、まだ早過ぎるのに冷たい物を沢山食べ、又その上に冷たい水で体を拭いたりして寒湿に侵され、腰膝の関節が疼痛し、日増しに痛みがつのり歩くのも困難になって夫に助けられて診察を受けにきた。
苦しそうな顔をし、肥満している。
腰と関節の痛みは冷やすと悪くなり、夜は一番ひどくなる。
乳は十分出ているし便通もよく、食欲もある。脈は弦細。
ただ舌は紅く、苔は黄色で根部が厚い。
患者は産後に寒湿の邪を感受したものであろう。
一群の寒痺の徴候に対しては本来、去寒・温経・通絡・化湿・止痛の治療をするのが良いのだが、しかし舌には湿熱の象が出ており、体は湿熱内薀の様子を現しているから、ここの所を飲み込んでおかなくてはならない。

尤在径の《金匱翼》に曰く「臓腑経絡に先に蓄熱があると、そこへ風寒湿邪を感受すると熱が寒の為に塞がれて出られなくなり、寒自身もまた長く止まると熱化し、頑痺となる。」
患者は妊娠期も産後も膏粱の物を食べていた為に体は肥り、湿熱内薀の体質になっていた。
産後に寒湿が襲い、それが長引いて熱化した。
この証は実の所、湿熱が経絡に阻滞した熱痺である。
清熱・宣痺・通絡で調えたら5剤で症状が少し良くなった。
薬が的中したと考え、更に5剤を飲んだら治った。

処方:黄柏・知母・蒼朮・忍冬・当帰・生地・仙霊脾・鶏血藤・海風藤・防風・防己・意苡仁・秦九・生甘草

ここで私が特に注意を喚起したいのは「陰虚湿熱の体質者にはもともと臓腑経絡に蓄熱があるわけで、そこへ更に風寒湿邪を感受すると熱が寒の為に塞がれて出られなくなる“寒包熱”の状態になる為に膝痛が起こるのではないか」ということです。


さて私は『中医証候鑑別診断学』を読む前に三例の経験をしたので三妙丸合六味地黄丸ではなく健歩虎潜丸を使いましたが、どちらも熟地黄・牛膝のほかに黄柏という寒薬を使用している所が特異的です。
黄柏は補薬ではないにもかかわらず、腎水不足を補い潤燥堅腎する働きがあります。
『医学發明』には「腎は堅を欲す、急ぎ苦を食して以って堅くす」と瀉剤転じて補剤になる訳を述べています。(以前に汗疱の治験で龍雷之火を消しうるのは黄柏のみであるとコメントしたことがあります)

 なお健歩虎潜丸の構成には虎骨が含まれていますが省略しました。

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Comments

関節に水たまり困っております

Posted by: 平柳省一 | 2004.11.30 at 09:57 PM

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