吃逆 (しゃっくり)
患者は75歳の大柄な男性で、吃逆が出始めて今日は2日目になる。
数年前には脳梗塞で倒れ、現在は腎透析も5年目の状態。
医師に相談したら仕方がないから“柿の蒂”でも飲ませてくれ、といわれたそうだ。
代理の人が私の店へやって来ての説明では、吃逆の音は大きくて、部屋を二つ隔てても聞えるほどだそうだ。
看護人はその音を聞くと余りにも辛そうで見ておれないのだという。
高齢だが本人は冷え性ではなく、食欲も普通にあり、水分を控えているので小水も遠いとのこと。
吃逆といえば誰でも直ぐに思い出すのが“柿の蒂”で、丁香柿蒂湯という有名な処方があります。
しかしこれは温薬ばかりで出来ているので本件の場合には当てはまらない。
『中医証候鑑別診断学』によれば「5.気逆証」は実証が多いとなっています。
即ち臨床では風寒邪凝胃,胃腑実熱,痰气交阻的実証が多く、脾胃气虚,胃陰不足的虚証は比較的少いようです。
また「219.胃气上逆証」では、本証は多くは外感六淫,内傷七情,飲食不節,脾胃虚弱による胃气の通降失常からなるものである、とあります。
吃逆の音が大きいという事から実証であろう。
それならばと、飲食不節による胃腑実熱と見当をつけて、今度は『中医症状鑑別診断学』から胃火吃逆証というのを見ると、これは辛辣之品を嗜食して胃腑積熱をきたすもので、吃声は響亮有力である、とあります。
中医証候鑑別診断学(第2版) : 中国中医研究院 : 人民衛生出版社(2002/9)
中医症状鑑別診断学(第2版) : 中国中医研究院 : 人民衛生出版社(2000/6)
そこで選んだのが竹葉石膏湯加味という処方です。
(竹葉・半夏・麦門冬・党参・柿蒂4 粳米5 石膏10 甘草2)39
2,3日して家の人がまた来て云うには、また次に起こった時に備えておきたいから院外処方箋に紹介してほしいととのこと。
あの後、帰ってすぐ夕食後に飲ませたら2時間ほどですぐ効いてきて皆ビックリしたそうだ。
お陰でその晩は一同皆ゆっくり寝られ、看護の妻も何日ぶりかで寝放したと言って笑った。
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Comments
先程、[oriental-med 2704] 葛根湯をカゼに使ってはならない、掲示板『漢方まんだら』は表示が500文字と短くて不便だったので次へ引っ越しました。
http://youjyodo.cocolog-nifty.com/kimagure/">http://youjyodo.cocolog-nifty.com/kimagure/
からやって来ました。この ML は時々しか読んでいませんが、納得させられる論調でした。今日、私はここココログ「Promenade Musashino」に初記事を書いたばかりでした。「漢方まんだら」楽しく読ませて頂こうと思っています。
Posted by: koji | 2004.01.09 11:01 PM