『なぜ中国医学は難病に効くのか』
日大医学部脳神経外科研究所助教授 酒谷 薫
PHP研究所 出版 \1400
『中医臨床23-3(90)』の書評
科学的知識を持った現代人が必ずぶつかる壁、「陰陽五行説」についても、当初筆者自身がアレルギーを起こして抵抗を感じたという経験から、受け入れやすい解説を与えている。
そしてさらに、その理論は、最新の物理学にも通じた、先進的な生命観を有するものであるとも著者はいう。
最近は殆ど単行本を読む気にならなかったのに、この一点に惹かれて本書を一気に読みました。
次にいくつか注意を引いた事を列挙してみます。
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・現在の中国では針麻酔はどこにも行われていない。結局、針麻酔はまやかしだったのです。
(いきなり大胆な結論でショックを受けましたが中国の現実がそうならそれが本当の所でしょう。しかし日本でこんなにハッキリと断定した人は居なかったのではないでしょうか。)
・中国では一つの漢方薬を長期間に渡って投与し続けることは少ないから……小柴胡湯の間質性肺炎については問題にもならなかった。
(柴胡や黄岑が原因だとか、証が合わないからだとか色々いわれましたが、それを云う先に何よりも長期投与が原因であるという視点は単純明快です。)
・現代日本の漢方治療は、暗闇の中で手探りで鍵を鍵穴に差し込むような治療、と言える。
(理論的な中国医学に対して旧来の方証相対を根拠とする日本漢方を批評している。)
・中国医学がホリスティック医学と並べて論じられるが、ホリスティック医学は有機的総合体とか自然治癒力とかいうけれど、彼らは部分を考えずに、全体を議論している。
(ホリスティックの方は観念論に過ぎない。中国医学の方は全体を構成している部分に対する分析があっての全体性であると指摘している。)
・中国医学は西洋医学に対して、治療だけでなく診断も補完する可能性を有している。
(日本の漢方が西洋医学の治療の一助としてエキス剤を利用しているに過ぎない。薬物だけでなく診断法においても西洋医学と対比できる内容があると。)
・中国医学は日本漢方と別物といって良いほどの違いがある。
(類似点もあるだろうが手厳しく批判したほうが分かりやすいというもの。)
・中国医学の臓器とは架空の臓器である。
(病気のメカニズムを考える上で必要になった概念としての臓器。解剖上の臓器とは区別したほうがスッキリしますね。)
・陰陽偏盛を実証、陰陽偏衰を虚証とする。
(正虚邪実をもって虚証・実証とする従来の説明を別の角度から云われてハッとした。)
・治療方針が単純であればあるほど、その選択の正否は治療結果に大きな影響を及ぼす。
(中国医学の治療方針が「不足は補す」「有餘は瀉す」という単純なものだからといって軽視してはいけないということ。)
・脾に問題があると、汗をかきやすくなるのです。
(中医師たちには常識なのですね。)
・気血不足も淤血です。
(気虚血淤の概念は知っていてもこれ程にハッキリと言い切られると驚く。)
・中国医学こそ、日本のホスピスに最も適した治療法ではないかと思うのです。
(死を待つだけのものではなく、最後まで治療法があるという意味で。)
最後に注目したいのは著者自らが目撃した2つの症例、進行性筋ジストロフィーと筋萎縮性側索硬化症の患者に対する手応えは本書での圧巻です。
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Comments
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Posted by: 中国ランキング | 2005.02.20 06:24 PM