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防風通聖散では痩せられない!

いまだに大勢の方が防風通聖散を「痩せ薬」として使っているようです。
一体いつ頃からこういう使い方がなされるようになったのでしょうか?
健康雑誌の影響が一番大きいのでしょうが権威ある方々も結構繁用しているのではないでしょうか。

『中医方剤大辞典』(人民衛生出版社1993.12) には次の様な説明があります。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

062 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん) 『宣明論』

【功用】疏風退熱・瀉火通便

【主治】風熱が壅盛で表裏・三焦ともに実証のもの。
    身熱のため煩躁し、頭痛・昏眩・口苦して渇し、
    咽喉は不利で、胸膈は痞悶し、腹部は脹痛し、
    譫語や驚恐あり、手足は引きつれ、大便は秘結し、
    小便は短赤である。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

この説明を見る限り、どこにも「痩せ薬」としての根拠はありません。
解説を加えますとこの処方は「三焦表裏皆実の証」に使うものです。
「三焦の実」とは身体の上から下まで通じて流れる水分代謝や利尿が停滞した場合をいい、
「表裏の実」とは体表に悪寒や寒気の存在があること、及び体内に熱や便秘があることです。

具体的には“風熱”を外感していて、且つ“腸胃積熱”が内にある状態です。
たとえば扁桃腺炎などの発熱・頭痛・咽喉痛に、或いは麦粒腫の腫脹などが代表例です。

ちなみに処方名の「通聖」とは皮膚・鼻・肺・腸胃・肝までひと通り全部の聖薬であるという意味です。

昭和に入ってから肥満への応用が始まったらしいのですが、その根拠になるのは太鼓腹・重役腹という表現です。
この表現は一貫堂流の漢方家が三大体質の一つとして挙げているもので、太鼓腹のものに防風通聖散が合う場合が多い、という経験でした。
まだ未熟だった頃の昭和漢方が生み出したミスです。
症状や病気や体質ではなく体型別に処方を出すということは医学的に暴挙といわなければなりません。
再び繰り返しますが、防風通聖散を肥満に使うのは間違いです。

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漢方」カテゴリの記事

Comments

統計学的に根拠があります。

Posted by: エヴィデンス | 2006.03.18 at 12:20 PM

『宣明論』当時は肥満が問題となってなかったか、
作用に気づいてなかっただけでしょう。
『宣明論』を根拠にミスと即断することこそ未熟なミスでしょう。
『宣明論』は唯一絶対の真実であるなんてわけ、ないのですから。

「太鼓腹のものに防風通聖散が合う場合が多い、という経験」があれば処方して様子を見ることは、現在の医学では常識です。
副作用が問題にならないという前提ですが。
「症状や病気や体質ではなく体型別に処方を出すということは医学的に暴挙といわなければなりません。」
とありますが、症状がその体型に現れているだけの話です。
事実認定を誤っています。

Posted by: 自分で実証した人 | 2007.05.14 at 01:26 PM

書き忘れました。

防風通聖散は麻黄、甘草、荊芥、連翹、ほか合計18種類の生薬より構成されます。
このうち、麻黄はエフェドリンを多く含み、甘草、荊芥、連翹にはカフェインより2.5倍強力なホスフォジエステラーゼ阻害作用があります。
エフェドリンは交感神経終末からノルアドレナリン放出を増強し、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞のアドレナリン受容体を活性化します。
ホスフォジエステラーゼ阻害作用を有する甘草、荊芥、連翹にはノルアドレナリンの効果を持続させる働きがあります。

このことから、防風通聖散には、
「白色脂肪細胞での脂肪分解作用に加えて褐色脂肪細胞を活性化させて、脂肪燃焼効果を発揮する」という明確な薬理作用があるといえます。
(Yoshida,etal:Int.J.Obesity, 19:717-722, 1995 をご覧ください)

Posted by: 自分で実証した人 | 2007.05.14 at 01:39 PM

 単味の生薬にある効果と、それらをコンビネーションした漢方方剤の効果とは単純な足し算で語られるべきものではありません。それは極めて単純な科学主義的発想であり、およそ科学的とは言えません。ましてや漢方的ではありません。

 それほどご立派な研究なら、何故カネボウが自社の防風通聖散のインタビューフォームに載せられないのか。
 ちなみに最新版のインタビューフォームには「「臨床成績:1.臨床効果=該当資料なし、 2.臨床薬理試験:忍容性試験=該当資料なし、3.探索的試験:用量反応探索試験=該当資料なし、4.検証的試験=該当資料なし、5.治療的使用=該当資料なし」」となっています。

 では、載っていないから、肥満改善に関する研究が皆無なのかといえば、そうではありません。動物実験もないことはありません。例えば、鐘紡・漢方ヘルスケア研究所の森元らによる「フルクトース負荷ラットの体脂肪蓄積に対する防風通聖散の作用」(「日薬理誌」2001;117 (1):77-86)があります。

 しかし、なぜそれを自社の防風通聖散のインタビューフォームに載せられないのか。ラット4群を比較した研究らしいが、各何匹かすらアブストラクトに書かれておらず、怪しい。自社の研究所が発表した論文が、自社の漢方薬のインタビューフォームに載っていないのは、「載せられない」水準だからだろうと思われてもしかたないでしょう(笑)。

 それに、そもそも中医学では肥満に使うなど考えられない方剤ですよ。中医学では防風通聖散は「表寒・裏実熱」証に用いる「辛温解表・清熱解毒・瀉下利水」剤なのです。 「表寒・裏実熱」証ということは、1.悪寒・頭痛・無汗・咳嗽・呼吸困難などの表寒証に加えて、2.口が苦い・口渇・目の充血・のどの痛み・イライラ・腹部膨満感・便秘・尿色が濃いなどの裏実熱証を伴い、3.高熱が見られ、4.舌診は紅色で舌苔が黄厚〜垢濁、脈は滑数〜弦数でなければなりません。

 つまり、今この状態でない者には、全く効かないのが漢方薬である防風通聖散であるばかりか、証を合わさず用いているということは「漢方薬」として用いている訳ではないのだから、痩せるどころか副作用もありうるわけです(例えば、大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学の元山ほか「防風通聖散による薬物性肝障害の一例」(「日本消化器病学会雑誌」2008;105(8):1234-1239)などを参照)。

 日本漢方では表裏倶実を体力の充実ととらえ、「重役タイプの太鼓腹」を目標としており、一貫堂医学の「臓毒証体質」から来たものでしょうが、こんなものは本来の漢方とは無関係のインチキ診断であり、ここから本剤の瀉下利水効果を「肥満」の治療に使うという類推が起こっているのだと思われます。
 誤ったパラダイムの元に、如何に薬理的研究を積み重ねようが、科学理論の「理論負荷性」からは、少々は都合のいいデータも出てくるかもしれませんが根本的に間違っていることは明らかです。

 漢方的には誤っているパラダイムの元で、少々症例報告を集めようが、小規模試験をしようが、大体ほかに「やせ薬」が無いのだから、効力を二重盲検法(DBT)で比較できる薬がない訳だし、プラセボ対照DBTだったとしても漢方薬が薬物である以上は何らかの効果はあるに決まっています。

 そこで、例えば証が合わず効いていないが故の下痢などで体重が減った(そも防風通聖散には大黄が含まれている)のも「効果あり」にカウントされてしまえば、数値の適当な操作で何とでも言えることになります。

 ヒトでの研究も一例報告に毛の生えたもの(〜3例報告)くらいは散見される(例えば、伊藤「小児科臨床」58-7、など)。そうでないものでも、食事制限と併用していたりしていて、医療介入を受けているという意識変化がもたらしたプラセボ的効果を排除できず論文にはならないようなものがほとんどです。

 例えば、京都府立医大の小規模RCT「耐糖能異常を有する日本人肥満女性での防風通聖散の有効性と安全性」(「臨床漢方薬理研究会会誌」2004; 100 回記念号: 19-22)が85人を2群に分けた6ヶ月間のプラセボ対象RCTです。

 しかし、被暗示性の強い女性ならではだと思いますが、プラセボ群まで体重・体脂肪率・皮下脂肪量・収縮期血圧・拡張期血圧・中性脂肪・総コレステロールが半年後に改善が見られた本研究を、僅かの有意差をもって、防風通聖散が耐糖能異常のある肥満者の治療に有用であると結論付けられるかどうかはデータの詳細を見なければ何とも言えません(実際、有意差ありとは言うが、アブストラクトにP値すら載っていない、怪しい)。

 そもそもマイナーでインパクトファクターなどゼロとは言え、漢方専門誌に載ったこの研究が、漢方薬のインタビューフォームに載っていないのは、「載せられない」水準だからだとしか思えません(笑)。
 
「太鼓腹のものに防風通聖散が合う場合が多いという経験」など、所詮、表/裏・実/虚・熱/寒・燥/湿などの、漢方の基本的診断をネグっている日本漢方のレベルの経験です。誤った経験からは誤った結論しか導きだせません。

Posted by: Catsduke | 2008.08.20 at 01:02 AM

通りすがりの単なる1ユーザーですが
運動発汗時に限らず平素から腹の皮膚表面が冷たく感じており、「腹に効く」という謳い文句のこの手の商品、効果の程はいかが?と試してみましたが
見事に腹も全身も体温上がりました。
古い中国の書物?に載ってなくても、プラセボでも、自分の望む効果が得られたので満足です。

痩せる痩せないは自分で食事と運動でコントロールするので、腹が温まったということに100点満点です

全然科学的でも何でもない個人の感想ですが
科学者たるもの起きた事象には真摯に目を向けて研究してもらいたいものですね。
エフェドラで心拍体温上がっただけなら、それはそれでいいです。
別に漢方ルールで説明できなくても西洋医学で説明つくなら消費者にはどっちでもいいことなので。

教科書に載ってないからあり得ない・信じないと言うだけの人に科学的とか言って欲しくないですね。
他人の研究結果を「見て、例が無かった」と言ってるだけに思えます。
有職故実?(笑)

Posted by: 通りすがり | 2009.08.27 at 02:02 AM

中医学っていうのは経験則の積み重ねなんですよ。
その中で効果が出たものはマニュアルに反映されるんです。この薬に肥満解消の効果が本当にあれば、例として記載されるんですよね。

中に含まれる一つの成分で一つの現象が起こったからといって、それがその薬が目指す効果でなければ漢方薬としては意味がないんですよ。

そもそも「痩せられない」ということを説明しているものに「痩せる痩せないは自分でコントロールするからいい」っておかしいでしょ。そういうのただのいちゃもんって言うんですよ。

Posted by: モツ | 2010.10.28 at 03:17 PM

麻黄(エフェドリン)は薬理的にも脂肪燃焼効果が実証されているので
痩せる痩せないで言えば、防風通聖散が痩身に効果があると言うことは疑いのない事実ですよ。
尤も、それなら麻黄湯やエフェドリンカフェインスタックを飲んだ方が余程効果は高いですが。
ただしこのエフェドリンは乱用が問題になり規制を受けるほどの代物ですので
防風通聖散程度の配合分を飲み続けた方が長い目で見て体に良いのでしょう。

Posted by: a | 2011.05.16 at 06:33 AM

コメントを読んで、典型的な漢方に対するちょっとどうかと思う正反対のアプローチが見えて興味深いです。
ひとつは活性物質至上主義、もうひとつが古典至上主義です。
どちらも極端な考えだと感じますが、古典至上主義により大きな疑問を感じます。
いわゆる西洋薬は開発されてから100年少しで長足の進歩を遂げています。
この大きな要因はデータの積み重ねであると考えます。
確かに漢方には数千年の歴史があります。しかし、ここ100年間で進歩した様々な統計、分析手法を用いたデータ集積をおろそかにしてきた感が否めません。
極端な先生だとエビデンスを馬鹿にし、古典的解釈を絶対的なものととらえる方もいるようです。
混合物である漢方に対して分子生物学的なアプローチをするのは非常に困難であり非現実的かもしれませんが、統計学的手法を用いてのエビデンス確立は決して貶めるべきではないと思います。

追記としてCatsdukeさんに反論。
アブストラクトは本来詳しいデータを載せる項目ではありません。
「アブストのデータが薄いので怪しい」というのはあまりにも乱暴です。
私も全文を読んでいないので擁護もできませんが、全文を読まずに批判(「怪しい」は十分批判ですよね)するのは明らかに間違いであると思います。

Posted by: たっつ | 2011.06.01 at 12:29 AM

どうしても防風通聖散を痩せ薬にしたいのでしょうかねぇ
麻黄と連翹と甘草と荊芥に脂肪を燃焼させる効果があるなら それだけで痩せ薬作ったら良いんじゃないですか 後の14種類の生薬はなんのためにいるのですか?
昨今のTVCMやドラッグストアなどの漢方薬の売り方を見ていると
生薬って体に良さそうなイメージで 単にクスリを売りたいだけなんじゃないかと 意地悪な見方をしたくなる位
私はちょっと漢方薬の対処療法でない 根本から治そうというところが好きな素人ですが
漢方薬のえびでんすを取りたかったら まずなぜその方剤が生まれたかを理解してからの方が良いんじゃないかなと

西洋薬のバチっと決めるのもありがたい でも今は対処療法しかない状況の病に根本から変化させられる可能性のある漢方薬もありがたい
私は西洋薬の歩んだ100年 漢方薬がエビデンスをサボったと言うより 必要無かったんじゃとも思うんですけどね こういう事書くとエビデンスとは〜って叱られるか 見下されるんでしょうが

でもね、だってもう あの膨大な陰陽表裏実虚で 人の体を診断して薬のメドたてられるんだもの
積み重ねた経験が証拠なんじゃないですか?

漢方薬って 薬の内容の証拠・根拠より
見立てかたを 研究した方が早いような気もしますが どうですかね?
販売名を変えられて 痩せ薬だと思って防風通聖散を飲んで気分が悪くなり体調不良を経験した素人の意見でした。

Posted by: 月 | 2016.02.24 at 01:44 AM

こんな遠い昔の話題に今更乗っかりたい阿呆ですいません。

まぁ要は痩せられない。と断ずる事は乱暴だよって話ですね。太鼓腹で裏熱溜まりやすい(便秘しやすい)自分には必需品の薬です。現在進行形で痩身補助、或いは腹の張りによる不快感への対策で頓服的に用いています。

自分も西洋東洋混交で捉えるのが好きなのですが、基本的に漢方は『素材一種よりも組み合わせ』のお薬だと言う認識はあります。
何故ならFDAで認証された(らしい)大建中湯は組み合わせないと有意な効果が出なかったから。

痩身痩身は結構なのですが、例えば安易に女性が使って肌荒れを起こすとか、本末転倒になる可能性は否定出来ないのですよね。

ちなみに先はあゝ言いましたが、自分は鼻風邪で大量に鼻水が出てしまい、吐き切れずにかなりの量を飲んでしまい熱を出したので、防風通聖散飲んで尿と便と高熱で出し切って一晩で解熱させた前例がありまする。
多分本来はこれが正しい使い方なんだろうなぁと思ったり思わなかったり。

Posted by: ななしさん | 2016.05.24 at 12:55 PM

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