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『通俗傷寒論』6

[2] 傷寒兼証

兼証とは寒邪が他邪を兼ねたり、他邪に寒邪を兼ねたり、二邪が兼発したりする場合で21証ある。

(1) 傷寒兼風(俗称冷傷風,仲景《傷寒論》名日中風)

【因】風と寒を同時に感受した場合。
 寒>風  正傷寒
 風>寒  冷傷風
四時感冒で重いものは俗称重傷風という。

【証】頭痛身熱,悪風怕冷,鼻塞声重,咳嗽清涕,痰多白滑而稀,或自汗而咳甚,或無汗而喘息,舌苔白薄而滑,甚或白滑而膩。

【脉】傷寒なら左手脉は浮緊である筈なのに、今は反って浮緩で、右手は浮滑ならば、此れは傷寒に風脉が現れている。《内経》でいう、傷風は先ず上より受ける。風寒が客すれば、病は肺より入る。乃ち営衛并傷の候である。《難経》でいう五種傷寒の一つである。正傷寒の多くは先ず足太陽経より入り、冷傷風の多くは先ず手太陰経より入る。

【治】自汗ありて咳すれば,先ず営衛を調えるところから。桂枝橘皮湯加杏仁(去皮勿研,三銭)、前胡(二銭)。無汗にして喘すれば先ず肺气を疏通するところから。新加三拗湯加減。此の后で痰稀咳甚なら、小青竜湯去麻黄,加杏仁、橘紅にて消痰止咳する。痰多咳甚なら、越婢加半夏湯にて宣肺定喘する。病人は切に酸冷油膩等の物を禁ずる。

【秀按】冷傷風の証について、《内経》では、風が外より入り振寒せしめ、汗出頭痛,身重悪寒があれば、治は風府に在り。其の次に張氏は《傷寒論》で、太陽病で発熱汗出,悪風して脉緩なら中風と云う。太陽中風は脉が陽浮・陰弱となる。陽浮とは熱が自発することで、陰弱とは自汗が出ることである。嗇嗇悪寒,浙浙悪風,翕翕発熱,鼻鳴干嘔者,桂枝湯主之。此れは皆な后世で云う所の風寒病である。風は傷衛し、寒は傷営する。若し悪風自汗と悪寒無汗の両証があれば、一方は頭痛鼻涕があっても周身は痛まないし、一方は頭身倶に痛み、腰と骨節もまた疼む。一方は脉浮緩で、一方は脉浮緊である。証と脉はハッキリと区別される。汗の有無について云えば、正傷寒証はもとより無汗だが、重傷風証では汗が有る者と無い者がある。桂枝湯は本来風寒を発汗する剤であり、麻黄湯に比べて緩和なだけである。それを無汗なら発するし、有汗なら止めると言うのは誤りである。

【廉勘】重傷風の証は難治である。医家はたかが傷風と侮ってはならない。前哲、徐霊胎は《傷風難治論》でいっている。傷風は皮毛より肺に入る。肺は嬌臓である。太寒すれば風气は凝って出ていかない。太熱すれば肺を火爍し動血する。太潤すれば痰飲を生ずる。太燥すれば津液を消耗する。太泄すれば汗出て陽も虚す。太渋すれば气閉して邪は結ぼれる。病を軽く見て風寒を避けず、飲食を慎まなければ、年月がたつと病機は深くなり、或いは血証となり、或いは肺痿となり、或いは哮喘となり、或いは怯弱となる。余は此の証を治するに、自制の疏風止嗽湯(荊芥穂銭半,蘇薄荷一銭,光杏仁二銭,広皮紅八分,百部銭半,清炙草六分,紫苑二銭,白前銭半)を投じてしばしば効験がある。太熱太燥大泄,太寒太潤太渋とならず、病人も安心できる。処方は平淡でも収效は多い。

【栄斎按】重傷風が三四日后に悪風怕冷の症状が除かれ、発熱・頭痛・全身疼痛・鼻塞声重・咳嗽痰が多くなれば、聶云台先生の重傷風標准湯が採用できる。処方:黄苓二銭,白芍二銭,連翹三銭,象貝三銭,蝉退一銭,竹茹三銭,桑白皮三銭,桑叶銭半,枳売一銭,杏仁三銭,枇杷叶三銭包煎,薄荷八分泡勿煎。重慶市の第七人民医院の沈仲圭先生は此
の方は発汗解熱,鎮咳去痰に効果があり、流行性感冒(即重傷風)に用いられると云っている。

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以下、傷寒兼湿……風温傷寒……など全21証あるが略す。

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