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女陰白斑

外陰ジストロフィーという難しい病名の55歳、女性です。聞けば9年前に大腸癌切除、3年前に乳癌を切除、放射線治療、その後ホルモン剤を飲み始めてから排尿痛が起こり、今の病気を発見したそうで、局部が部分的に白斑化している。現症は排尿痛、頻尿、特に夜痒み、おりものは少ない、少し出血があった、舌の色はは淡い。
病院へ通院はしているが外陰症状に対してはいくら訴えても改善がなく、やむなく漢方にでもとなった次第。

複数の癌とその後の放射線治療などを経て身体にかかる負荷はいかばかりであったか、その大きさが稀に見る外陰ジストロフィーという病気を引き起こしたのでしょう。
漢方では病名にかかわらず、“陰痒”“陰腫”“陰瘡”“陰痛”“陰燥”などの症状から弁証することになります。幸い『中医症状鑑別診断学』には“女陰白斑”というのが出ています。それによれば肌膚から弾性と滋潤性が失われ、干燥しているのは「血虚」の結果である。また排尿痛と掻痒は「肝旺」のためである。対応としては養血活血・清肝去風の方法が求められる。

四物湯加味 (当帰・白芍・川弓・熟地・白疾藜・鶏血藤・川断・紫草・百部4)36

本人は本方を10日間服用したらもう効果が感じられたという。以来、一ヶ月分ずつの投薬を半年間受けた。今では殆ど不都合がないので間が遠くなり、忘れた頃に顏を出す。

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日本独自の漢方って何だ?

2005/01/23 読売新聞に一面全面のツ○○の漢方医学についての広告が載っています。
慶応大学医学部の先生いわく『鎖国後の江戸時代、中国との交流が制限され、漢方薬の入手も難しくなり、治療の考え方や漢方薬の処方の仕方も、次第に日本特有のものに変わっていきました。明治時代になって鎖国が解かれ、中国の伝統医学と比較すると、漢方医学は日本独自の医学になっていることがわかりました。世界では、漢方医学は「kampo」と表記され、「traditional japanese medicine」を表します。』

読みようによっては、日本特有の漢方kampoは独自の進歩を遂げたので、中国の伝統医学「中医学」よりもずっと勝れているんだ、という風にも受け取られます。

“井の中の蛙、大海を知らず”の喩えの如く、まったく、もっと広い視野で現在の中医学界を知って貰いたいものです。昨今の中国でのsars騒ぎや鳥インフルエンザが若し日本に入ってきたら、日本漢方はどれだけの対応が出来るだろうか?!

いや、そういう意味ではないのだと云うかもしれないが、中国の中医学の実力の程をよく知った上で云って貰いたいものだ。私などは従来の日本漢方のいい加減さに愛想が尽きて中医学へと宗旨替えをしたのです。

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胆嚢の手術後の不快感

男 40歳。
3年前に腹腔鏡下胆嚢摘出手術を受けました。以前胆嚢があったところが、痛くはないのですが、重たく、中の内臓がつりそうな感じになり、とても不快で夜もぐっすり寝れません。
お酒を飲んだ次の日がとても苦しく、暫く飲まないと治るという感じでした。
手術当時はよくお酒を飲んでいました。最近はあまりにも調子が悪いので、間が遠くなっています。以前は、飲まない日が1週間くらいあれば症状が軽くなっていったのですが、今は全然軽くなりません。ここ2,3ヶ月、胆嚢があったところが以前よりも調子がひどく悪く、更に手と首筋がしびれてきます。
病院にも通ったのですが、他の臓器には異常がなく、手術の後はどうしてもこのような症状が残る人もあるそうだといっていました。

2004/01
肝鬱化火 (気鬱により肝が疎泄を失すると肝は気実から火を生ずる/肝火証) の証として四逆散加味を投与。
 (柴胡・枳実・白芍・酸棗仁・知母・川弓・茯苓4 甘草2)30g

2004/02 (約50日間飲んで)
以前より調子は良くなりましたが完全ではありません。以前が100悪いとしたら、今は30くらいです。なので、かなり良くなったと思います。が、必ず、お酒を飲んだ次の日は、80くらい悪く戻ります。2,3日たつと良くなり、又お酒を飲むと必ず悪くなります。

2005/01 (約一年間飲んで)
おかげさまで体の調子もこちらの漢方を服用してからかなり改善してきました。まだ、お酒を飲んだ次の日や疲労で疲れた日などちょっと調子が悪くなるときはあります。それでも以前よりは全然調子はいいです。
ところで、かなり調子が良くなってきたので、一日2回飲んでるところを一回に減らしても大丈夫でしょうか?
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悪い病患部を切除してしまったのに不快な症状がいつまでも無くならない、という事は患部以外にもまだ悪いところが残っていたのでしょう。
漢方では“経絡”という気の通路があって、肝経・胆経・三焦経などと他の経絡とも連なりながら縦横に全身に行き渡っています。だから胆嚢を取り去っても経絡は残っており、それと連なる臓器の影響も経絡を伝って現れてきます。
漢方治療は経絡治療でもあります。すなわち局部的な治療に止まらず、全身的な視野での治療になります。これを完成した全体という意味の「整体治療」という言葉でいう場合もあります。
「肝鬱」とは肝経の気の流れが停滞している状態です。肝経の気滞が長引くと、肝の疎泄(*)作用が不十分なため、熱化してきて肝熱または肝火に変化します。胸脇部位に不快な症状を感じたのはこのせいではなかったかと思われます。
そこで選ばれるのが疎肝解鬱剤です。もっとも代表的なのが「柴胡疎肝散」です。
 (柴胡・陳皮・枳穀・川弓・白芍・香附子・甘草)
『傷寒論』の処方では「四逆散」です。これに酸棗仁湯を合わせて「四逆散加味」としたのです。酸棗仁湯は不眠に用いられるので有名ですが、なぜ不眠に効くのかという事を説明した書物は余りありません。肝熱が続くと肝陰を消耗します。陰が虚すると陽が亢じてきます。虚した肝陰を補うのが酸棗仁湯です。それで陰陽のバランスが回復し、肝陽が鎮まり眠れるようになるのです。

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(*)漢方では「肝は疏泄を主どる」といいます。“疎泄”の疎とは疎通・通じること、泄とは発散・昇発のことで、併せてのびのびと広がる意味です。だから「肝は条達を喜び、抑鬱を嫌う」ものとして春の生長の気にたとえられます。肝の疎泄作用が順調だと消化酵素や胆汁の分泌、胃腸の蠕動運動などの代謝・輸送がスムーズにいきます。
“疎泄”とは溜め込まないことなので、この肝が疎泄もせずに鬱結すると、怒り易くなったり鬱になったり、情緒が不安定になります。また鬱病のほかにも便秘・肥満・ニキビ・肝臓病・月経不順・乳腺腫・・・など、溜め込んで流れが止まったために出る病気がいろいろ発生します。その多くのものに疎肝解鬱剤は応用することが出来るのです。

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ノロウィルスと漢方

年初から各地でノロウィルスによる感染性胃腸炎の報告がなされています。
感染すると、吐き気や腹痛、下痢などの症状が出て、ほとんどは自然に回復しますが、高齢者や乳児などでは重症化し、死亡することもあります。
現代医学ではウィルス自体に効く薬は無いので、水分を補給して脱水症状を防ぐなどの対処療法で状態が改善するのを待つしかないそうです。
では漢方ではどのように考えているのでしょうか?

漢方では発病原因がノロウィルスであろうと何であろうと細かい分析はしません。
まず大雑把に外因・内因・不内外因と分けたり、内外併病と認識します。
次に外因ならば六気(風寒暑湿燥火)の中のどれか、内因ならば七情(喜怒憂思悲恐驚)の中のどれか、不内外因ならば飲食・外傷・中毒・社会環境などの中から見当をつけます。
いまは吐き気・下痢・食欲不振・舌のねばつき・倦怠感・さむけ……などの症状が現れているのが実情です。この実情に対しての分析と対策を立てるのが漢方のやり方です。

感染性胃腸炎の場合は、六気の内の“湿”が特に関係あります。
体内に“湿”がたまると気の流れが阻害され、悪心、嘔吐、下痢、腹部膨満感、食欲不振などの症状が出てきます。腹部膨満感は文字通り気の停滞ですし、口が渇いても水を飲みたがらないのは、内に水分があってもそれが有効利用されていない状態を意味しています。
胃や腸は「腑」と呼ばれる消化の場所にすぎず、消化(運化)機能は膵臓や肝臓などの「臓」がつかさどります。
胃腸にあるのは昇降をつかさどる「気」です。
この胃腸の気の働き(気機)が“湿”の停滞によって乱される(気機不和)と上記のような色々な症状となります。

“湿”はまた“熱”や“寒”と結びつきやすく、“湿熱”や“寒湿”となると、さむけ・発熱などの症状も併発します。冬季や梅雨時は“寒湿”となる場合が多いものです。
これを専門用語では「寒湿困脾」といいます。脾とは脾臓ではなくて前述のように膵臓や肝臓などの消化機能全般を指しています。

ゆえに胃腸に停滞する寒湿の邪を取り去れば胃腸の気は正常な昇降機能を回復するでしょう。寒湿困脾の証に使われる代表的な処方は*霍香正気散(かっこうしょうきさん)です。
 (*霍香・桔梗・白朮・厚朴・半夏・大腹皮・白*止・紫蘇・茯苓・大棗・甘草・生姜)

もしノロウィルスによる感染性胃腸炎にかかって、漢方で治したいと思ったら一度試されることをお勧めします。

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『中医方剤大辞典』から実例を引用紹介します。

急性腸炎 《広東中医》(1960;9:442):

*霍香正気散加減で非特異性急性腸炎30例を治した,
西医30例対比組(スルファニルアミド類、炭酸Ca等の腸道収斂剤及びベラドンナチンキ等の止疼剤)。
7例は軽微発熱,熱度は37~38℃之間に在る。
多数は軽度の腹疼,疼痛の多くは臍周囲に在り,腸鳴を伴う。
腹瀉すること昼夜4~8次。
糞量は比較的多く粥状或いは水様であり,淡黄色或いは泡沫有り。
(一部の病者の糞中に粘液が混有していた,但し無膿、無血だった)
裏急后重感は無し。
腹部がやや鼓脹し,軽度の圧疼有り,腸鳴音が亢進している。

症状消失平均日数  中葯組   西葯組
腹瀉             1.5日    2.7日
稀便             1.8日   3.1日
腹疼    1.3日    2.4日
腹脹          1  日     2.2日
食欲不振       2.1日    3.3日
発熱          2 日    3 日
平均治愈日数    1.4日    2.9日

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※袁世華(中国・長春中医学院教授)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1996/1/7より引用

時あたかも“七草粥”がつい先頃に終わったところです。ここで云う「春の七草」には、セリ、ナズナ、スズシロ(大根)のように、健胃・消化促進作用のあるものが多く含まれています。おせち料理や餅の食べ過ぎなどによって疲れた胃腸を整えるための、生活の知恵として日本に定着した習慣ようです。 日本の正月に欠かせない餅は栄養豊富なものですが、粘り気があるため腹持ちが良くて消化しにくい食べ物です。このため食べ過ぎると胃腸の働きが低下し、痰や湿(病理的な水分)を生みやすいのです。そして新年会などで酒やビールを多量に飲むと、この傾向をさらに助長することになります。

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     ノロウィルスによる感染性胃腸炎

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