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花粉症と風火

漢方で云うところの外感六気(風寒暑湿燥火)のうちで、“風”ほど厄介なものはない。さきに、風は単独では存在せず常に寒熱と合わさって「風熱」「風寒」として存在すると書きましたが、それとてほんの一端に過ぎません。
花粉症の症状から、それが“風”であるとの認識は出来ても、風熱なのか風寒なのか風燥なのかと問えば、どちらとも云えないのが本当の印象です。だからここで追求の手を止める訳にはいきません。“風”にはもう一つ別の顔がありそうです。

それは“火”です。六気の中の“火”とは“熱”よりも高熱であったり、直接的な火炎を含むものですが、更には“毒”の意味もあり、「風火」「風毒」と云います。

風熱・風寒・風湿などを除去するには「去風」を冠して去風熱・去風寒・去風湿などと云いますが、風火・風毒を除去するには「駆風」を冠する場合が多いようです。駆風解毒湯、活絡駆風、平肝駆風などのように。そこには浅表面から去るという以上に、深い内部から駆り出すという意味合いがあります。だから通常(植物性)の発汗性去風薬では間に合わず、組織に走竄して捜し出すほどの駆風薬が必要になります。動物性や虫類の駆風薬がそれです。


火熱論を表した金元四家のひとり、寒凉派の劉河間は「風火同気学説」を発表しました。それは「風は能く火に化し,火は能く風に化す」「高熱が風を揺り動かす」「熱極まれば風を生ず」「風火互いに煽る」「熱去れば風やむ」「風やめば熱清す」「風木は熱より生じ,熱を本とし,風を標とする。およそ風とは熱をいう」「熱すればすなわち風動く」「同気相求めて、木は火を生じる。火は風とともに陽に属す。両者は陽を主り,陽は動を主る。2つの動が相うち,回転が生じる」などと多くの言葉を費やしています。
(『風火痰淤論』東洋学術出版社・翻訳 渡辺賢一 1999年 より)


花粉症が「風火」や「風毒」であると云えばどうでしょうか。クシャミ・鼻水だけならアレルギー性鼻炎という事で対応もありましょうが、涙目・目の痒みもあるとなれば、やはり花粉症とアレルギー性鼻炎は異なります。「風火同気学説」までを持ち出して、何だか苦し紛れのようですが、虫類駆風薬(蝉衣・地竜など)が有効である事を最近経験しています。

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花粉症の逆治療

金元四大家の一人で、攻邪論で有名な張子和(1156~1228)という老中医師がいます。彼によれば「病は邪より生ず、邪を攻むれば病已む。邪気去れば元気自ずと復するなり。」という論法で、“汗・吐・下”の三法を治療の最優先としました。

漢方最大の古典である『内経』には“その皮にある者は、汗してこれを発せしむ”、“その高き者はよりてこれを越えさせしめ、その下の者は引きてこれを竭くさしむ”という治療原則が書かれています。

これに習って、「“天の六気、風暑火湿燥寒と、地の六気、霧露雨雹氷泥、人の六味、酸苦甘辛鹹淡”は、いずれもが人体を損傷する恐れがある。“天の邪は体の上部に発病させることが多く、地の邪は下半身に発病させることが多く、人の邪は体の中央に発病させることが多い。これは発病の三法則である”。そこで、邪を追い払うためには、天の邪であれば発汗させて追い出し、人の邪であれば嘔吐させ、地の邪であれば下して除去する。」(『中医伝統流派の系譜』黄煌著 東洋学術出版社 2000/12/8より) という次第です。

さて、花粉症は天の六気から「暑火湿」を除いた「風燥寒」が直接の外邪となって上部体表を襲うものと思われます。そこで治療には発汗法や吐法が相応しくなります。

花粉症の三症状に“クシャミ・鼻水・涙目”がありますが、攻邪派の治療法に漉涎法・嚔気法・追涙法といって、わざと「よだれ・クシャミ・鼻水・涙」を出させるのがあり、これも発汗法と吐法に含まれるものとしています。

考えようによっては、この花粉症の三症状こそが、生体が図らずも行っている防衛と治療の反応かもしれません。とすれば、やみくもに抗アレルギー剤でもってクシャミ・鼻水・涙を止めようとするのは、外邪の排出を妨害する「逆治」ではないだろうか。
反対に、クシャミ・鼻水・涙をどんどん出せば、それが一番の治療になるのかも知れませんね。それが厭なら、高くて苦い漢方薬を飲んで「順治」をする事です。

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虚実についての補足

ある中年の女性から緊張性頭痛と偏頭痛の混合型についてのメール相談を受けました。消化器の症状もあったので次の様に返答をしました。
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脾湿生痰 (脾の消化機能が衰えると湿滞となり痰を生ずる) の証に該当します。


メール相談例「頭痛/肥満」の例が出ていますので参考にして下さい。
あなたのケースとメカニズムが似ています。


おすすめの漢方処方
(1) 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)・・・・・・・・・(煎じ薬)
 (半夏・白朮・天麻・陳皮・茯苓・蔓荊子・甘草・生姜・大棗)
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すると折り返し、また質問がありました。

脾湿生痰というのは脾虚が源のようなので、実証でなく虚証の部類ではないのですか?  虚実の表では痰飲湿濁は実証に区分されていたので。

大変よい質問だったので次の様に回答をしました。皆さんにも理解してもらいたくて公開します。

脾湿生痰とは脾が気虚の証で、それが元で痰飲湿濁という邪が生じたという証です。
虚実の虚は、正気が虚していることの意味で、
虚実の実は、邪気が実していることの意味です。
痰飲湿濁は邪気の一つで、すなわち邪実の証です。
日本漢方では虚証と実証を体質の意味にしてハッキリと区別しますが、中医学では虚実は何が虚しており、何が実しているかと病理の説明にしています。

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花粉症

アレルギー性鼻炎とくに花粉症について、中医学ではこれをどのように捉えているか?
かかる人あり、かからぬ人あり、又かかる人は毎年繰り返すところから体質(先天禀賦不足)が関与するのは明らかである。
先天的体質とは、噴嚏・流涕・鼻塞の症状から見て、肺・脾・腎の三臟の虧損が挙げられ、その病理は「衛気虚弱,衛陰不固,痰濁内生」である。
また季節性があることから、外因と内因の合併したものと考えるのが妥当であろう。即ち“内外合邪”の分類に入る。
従ってその治療法は単に外因を取り去るだけでなく、内因も併せて治療しなければならない。

今受けている外邪とは具体的には“花粉”であるが、その性質は浮遊性アレルゲンだから「」である。風は単独では存在せず、常に寒熱と合わさって「風熱」「風寒」として存在する。
寒熱はどちらか一方だけに限定されるものではなく、風を挟んでどちらともくっつく。だから噴嚏・流涕・鼻塞の三症状は「風寒」だけの結果ではなく、「風熱」の結果でもある。
この厄介さの故に単一外因ではなく、アレルギー性と呼ばれる。
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外邪を防御する事は勿論だが、受けてしまった外邪は発散除去しなければならない。中医学では邪を除去するのに汗・吐・下の三つの方法がある。今は“花粉”という外来の邪だから発汗法がもっとも適切な除去法になる。すなわち邪を汗にして外に出す、去風寒・去風熱の作用を持った薬草を用いる。

ただ体表において発汗法を用いるだけではその効果は小さい。より効果的に外因を取り去るには、先天禀賦不足と指摘した内因も併せて治療しなければ最大効果は出ない。
肺・脾・腎の三臟の虧損を補うために、補肺・補脾・補腎の作用を持った薬草を用いる。

このように内外双方から病理を観察し、それに従って治療も双方向性でなければならない(内外兼顧・標本兼治)。中医学ではこのように理論的に分析をして、証を見極め(弁証)、方法を決め、薬草を決め、最後に処方を決めるのである。
だから「花粉症には○○湯がよい」と云うには、それなりの背景がなければならないのである。
花粉症に甜茶が良いとか、小青龍湯が良いとかの風説がありますが、果たしてどれ程の根拠から云い、実際にどれ程の効果を発揮しているのでしょうか?
もっと緻密な分析と論考を重ねて、優れた漢方処方を考案する人は居ないものか。

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