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パーキンソン病と漢方

『中医臨床』vol.23-no2(2002/6)89で、江蘇省准安市中医院主任医師の顧維超氏が、中国の名医・張錫純がパーキンソン病(巴金森氏病)に類する症状を加味補血湯(1)や補脳振痿湯(2)で治療したという記事を紹介しています。
(1)(黄耆・当帰・竜眼肉・鹿角膠・丹参・乳香・没薬・甘松)
 <若し効果がなかったら煎湯と一緒に麝香2厘かまたは氷片0.5分を送服する。若しそれでもまだ効果がなかったら更に制馬銭子2分を送服する>
(2)(黄耆・当帰・竜眼肉・山萸肉・胡桃肉・地鼈虫・地竜・乳香・没薬・製馬銭子・鹿角膠)

現在ではパーキンソン病は脳の病気として認識されていますが、症状には中風と似ている所があります。原因別に病気を認識する現代医学と違って、症状別に病気を認識する中医学(漢方)ではこの両者を同じグループとして認識しています。

すなわち偏枯(半身不随)や全身痿廃を「内中風」と総括的に呼び、ひとつは脳充血が原因の中風、もうひとつは脳貧血が原因の「虚寒に偏する者」とし ています。(肝過盛生風,肝虚極亦可生風
この後者がパーキンソン病の治療に当たる のではないかと中国では着目しているのです。脳充血は脳中の血過多が原因で脳髄神経を傷つけるし、脳貧血は脳中の血過少が原因で脳髄神経を養えない訳で、 どちらも結局は神経失司の病気です。

では脳充血と脳貧血をどのように弁証するか?
《内経》には“上気が不足すれば,脳は満たされ ず,耳は鳴り,頭は傾き,目は眩む。”とあり、胸中の大気(宗気)不足が大元の原因だとみなしています。「宗気」を補う等と いう事はそう簡単ではありません。通常の補ではなく峻補という概念でなければなりません。

パーキンソン病では筋肉が拘攣して伸びなくなります。筋肉の大元を「宗筋(注)といい、これを栄養するのは「陽明」と呼ばれる臓器 経絡です。陽明の主なるものは脾胃です。脾胃の運化(化穀生液)により宗筋が潤うと、伸縮は自由となり拘攣しなくなります。

 (注)狭義では前陰(男性器)は衆筋の集まるところ、故に宗筋と云う。広義では宗筋は筋ではなく、全身の筋膜を指す。

まとめると、はからずも宗気と宗筋の病であることが明白となります。加味補血湯や補脳振痿湯に果たして期待できるような効能があるだろうか?

古方に補血湯というのがあり、黄耆と当帰の二つから成り立っています。其の処方中の黄 耆は当帰の分量の4倍です。気血は陰陽で、陰陽互根ですから気が壮旺なれば血も充長されます。脳髄を満すには血が十分でなければならなく、その為には先ず 気の峻補が第一です。だからこの処方は当帰が主葯ではなく、黄耆が主葯なのです。竜眼肉は其の味が甘く赤色で津液を多く含み、当帰を助けて血を生ずる。鹿 角膠は頭頂督脉の上の鹿角より作ります。脳髄の源は督脉なので鹿角膠は脳髄を補います。だいたい脳中血虚の者は脳髄も亦必ず虚しています。丹参、乳香、没 葯を何故用いるかと言えば、気血の虚者は其の経絡はたいてい淤滞しているからです。これが偏枯痿廃と関系があるのです。甘松は心房運動を助け脳へと輸血す るので神経調養の要品であり、また諸葯を脳へと引導します。麝香、梅片は其の香が通竅開閉に働きます。制馬銭子は脳髄神経を潤動霊活にします。

 高という老人、年は60代、だんだんと兩腿乏力を感じてきた。たびたび眩仆しそうになり、ぼんやりと健忘症もある。もしかすると痿廃になるのでは ないかと心配になった。脉は微弱無力だった。それで此の処方を連進すること十剤で兩腿は前よりもしっかりしてきた。健忘症も良くなったがまだ時々眩暈する ことがある。再診すると脉は強くなったが重按すると消えていく。さらに野台参、天門冬を各五銭,威霊仙一銭を加えて連服二十余剤にして始めて治った。威霊 仙は人参・黄耆の補力を更に霊活にするものである。

 門人の張××、かって30歳ばかりの人を治した。季節は冬なのに商売で重荷を負って日に百余里も歩く。休憩はしばしば寒地に坐すことになる。それ でついに腿疼となり歩行出来なくなった。寝返りも出来ず、全身の筋骨は弱って痿廃のようになった。
張××が加味補血湯を用いて治した。すなわち処 方の乳香・没葯は六銭に改め、また浄萸肉一両を加えた。数剤后には疼かなくなり、更に十余剤を服して遂に全愈した。
 按ずるに加味補血湯は本来は 内中風の気血兩虧者を治す処方だが、変じて腿疼を治すことも出来るのである。
                張錫純 『医学衷中参西録』より

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Comments

初めてご相談します。私は2年前よりパーキンソン症候群という病気にかかり治療中です。病院の先生に漢方薬の相談しても話しにならず西洋医学の薬ばかりです。それで治ればいいのですが反対に悪くなっているように思えます。整体も通って、いるためお金の予算もありませんが良い漢方薬はありませんか?薬がきれたら歩くことが出来ない症状です。よろしくお願いします。突然ですみません。

Posted by: 松尾彰子 | 2009.03.14 11:05 AM

松尾さん、漢方メール相談は「漢方相談表」に従ってください。http://homepage3.nifty.com/youjyodo/2sodan.html
あなたのメールアドレスへ回答を送ります。

Posted by: youjyodo | 2009.03.15 02:34 PM

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パーキンソン病パーキンソン病(Parkinson's disease)は、特定疾患。1817年にイギリスのジェームズ・パーキンソンにより初めて報告された。本疾患と二次性にパーキンソン病と似た症状を来たすものを総称してパーキンソン症候群という。Wikipediaより引用...... [Read More]

Tracked on 2005.07.06 02:06 PM

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