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漢方家が「チャングムの誓い」を見ると

5月26日の「チャングムの誓い」32話(無罪放免)
今回は「瘧(マラリア)」の中でも食べ物が誘因となる「食瘧」の病に牛肉や牛骨の煮汁を飲ませて吐かせ、胃の洗浄を行うものでした。
漢方では催吐剤には食塩水が代表的だと思っていましたが韓国ではこんな方法もあったので驚きでした。
かねがね韓医方には中国伝統医学や日本漢方とはまた違った趣を感じていましたが、これもその一つです。
韓国では許浚<ホジュン>著の『東医宝鑑』が韓医方の原典となっていると聞いています。
『東医宝鑑』はその時代の中国医学を集大成した百科事典のようなもので、中医学がまだ日本へ入って来ていなかった1950年代では中国医学に触れる事のできる唯一の書物でした。
ところで韓国では今放送中のチャングムは女ホジュンとよばれているそうです。生きていた時代も1600年代と同時代のようです。

6月9日の「チャングムの誓い」34話(王の怒り)
医女候補生の試験で“鼓脹”と“気脹”の二人の患者さんを並べて鑑別させていました。鼓脹の患者さんは上腹部から膨らんでおり、気脹の患者さんは下腹部のみが膨らんでいるとはチャングムの診断です。前者は今日で云えば肝硬変の腹水状態で、後者はネフローゼに相当するかもしれません。出てきた処方は分心気飲と消鼓湯でしたから。

6月16日の「チャングムの誓い」35話(疑惑)
流産した皇后様に「かぼちゃのつる」と他数種を混ぜて煎じていました。これは初めてでビックリしました。早速、江蘇新医学院編の『中葯大辞典』で調べましたら、経絡を通す通経薬で月経不順に使うとあります。そういえばしきりに「淤血(おけつ)」が生じないようにと医官は気にしていました。

ああいうふうに現実の臨床面でテキパキと漢方医学が実用されているのを見ると懐かしく、それが失われゆく現代が淋しい限りです。昔に帰らずとも伝統遺産は継承していきたいと思います。

6月23日の「チャングムの誓い」36話(誤診)
皇后様が双子の一人を流産し、もう一人は体内に残留しているという危機の状態でした。
最初は双子ということが分からなかったので、後産の淤血が下りないと「チョウカ」になるかも知れないと「失笑散」(治ってみれば、あんなに痛がっていたのが滑稽だと思わず失笑する意味)という処方を出しました。
しかしどんどん症状が悪化するので誤診とわかり、次に「仏手散」を処方し、鍼灸も併用しました。

注)*弓帰湯<局方>: 又名 仏手散。当帰・川*弓 等分。
 治産後、傷胎、崩中、金瘡等失血過多而致的昏暈欲倒。;並治妊娠傷胎腹痛、難産、胞衣不下。

9月29日の「チャングムの誓い」50話(波紋)
王様の側室が難産で出血多量となり気を失い、脈が途絶えた時に鼻孔に粉を吹き込んでいました。あれは芳香開竅の蘇合香丸の類ではないかと思います。

蘇合香・沈香・麝香・白檀香・丁香・乳香・青木香・安息香・香附子・氷片・畢拔・犀角・訶子

出血多量にキョウガイトウと云っていたのは*弓帰膠艾湯のことでしょう。

上唇の上の人中穴・手の合谷などに刺鍼していたのは開竅法による蘇生術でしょう。

10月6日の「チャングムの誓い」51話(医術の心)
天然痘や麻疹などの発疹を伴う感染では、いかにして速やかに病毒(疹毒)を外へ出すかが問題です。
体質の丈夫な子供なら疹毒が内向しないうちに発汗法で外発したいところです。(順証)
しかし体質が弱い子供には発汗法では逆に体力を消耗し、疹毒内陷という悪い結果をもたらします。(逆証)

チャングムが治療しようとしていた子供は後者のほうで、発疹や水泡が空虚で、外発できない状態でした。
それで疹毒への攻撃剤ではなく、病人への補養剤を与えて内を固める事を優先させたのです。
これを一般に内托法といって、内を補托することによって疹毒を外達させるゲリラ戦です。
チャングムが使った処方は内托散でした。

もし正攻法がかなうものなら当然、即効性の発汗法や清熱解毒法を取るのが普通です。
天然痘が難治といわれたのには患者に子供が多かったこと、病毒が強すぎて逆証に転ずることが多かった事などがあるからではないでしょうか。

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