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脚気とニンニク

7月7日の「チャングムの誓い」 38話(丸薬の秘密)
今日では滅多に見られなくなった脚気の重症、脚気衝心(ドラマでは脚気入心と呼んでいた)の危症を大蒜(にんにく)と米糠と大棗で作った丸薬を食べさせて治癒機転とした症例が扱われました。
ここで用いられた大蒜は強壮剤でもなければビタミン剤でもない事を指摘したいと思います。
漢方では大蒜は特殊な位置にあり、『名医別録』では疥癬や膿癰などの皮膚病や骨折・脱臼・リウマチ・外傷への外用剤として初見し、内服するものではありませんでした。(和漢薬 1994.3.490号 御影 雅幸)

むしろ補薬を服用している者は「忌生葱、蘿卜(大根)、大蒜」といって、ニンニクを食べてはならない、養生する者は食べないものだ、長期に渡って食べていると肝臓、肺、消化器、眼などを悪くする、また精神を傷つける、生のニンニクを食べて房事を行うと肝臓に差し障りが生じ、顔色が無くなる等と忌避される危険物でした。

従って大蒜の効用は料理に使う薬味としてのみ認められるものでした。それが今日では過大評価されて健康サプリメントの代表のように喧伝されているのは大変危険です。

では脚気衝心の治療に三味の丸薬が有効だったのは何故でしょうか? それを考えるに当たって先ず脚気というものを昔の人はどのように認識していたかを考えなければなりません。

『備急肘后方』 脚気:湿邪風毒を外感し、或いは飲食厚味の傷る所となり、積湿は熱を生み、脚に流注して成る。(チャングムでは足の湧泉穴から水湿の邪が入ると表現していました)

だから治療法は去風除湿(消腫)・清熱解毒となります。有名な九味檳榔湯という処方も同じ意図です。大衆の間には消腫の効用があるものとして赤小豆・鯉魚・鰍魚(鰌ドジョウ)などの食品はよく知られています。ドジョウと大蒜の炒めもので脚腫を治した例もありますから、米糠や大蒜も恐らくはその並びの一つだったのではないでしょうか。

明治の頃の東西脚気相撲は漢方復興の歴史の中では有名な話です。まだ西洋医学が脚気の原因をビタミンB1欠乏症だと認めていなかった頃のことです。政府主催で東西両医学者のどちらが脚気患者を沢山治せるかを競争させました。また浅田宗伯の『橘窓書影』にも沢山の脚気治療実例が載っています。これらの歴史事実も何時とはなしに忘れ去られていくのだと思うと淋しい限りです。

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