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『漢方製剤の偽装』

 成川一郎【著】 光雲社版 2006年04月 発行

 著者の奥さんから郵便で上記書物の贈呈を受けました。
すでに佐賀の温心堂薬局さんがインターネットHPの【漢方雑感】で詳しく感想を述べておられます。
この書物を読めば成川さんが最も云いたい「製薬メーカーの偽装」告発がよく分かります。

それとは別に私が着目したのは次の2点でした。
1. 安中散、平胃散、桂枝茯苓丸などの精油成分を含んだ薬草からなる漢方処方をエキス化すると、精油は完全に揮散してしまう。
2. 中国の人が「日本人はなぜ安中散、五苓散、八味丸などの丸散薬までをエキス化するのか?」と問うた事。

精油揮散は有効成分の損失そのもので、漢方薬を無効にする致命傷です。
この事はエキス化に於いてのみならず、煎じ薬を作る場合でも気をつけなければならない事です。

日本全国で漢方薬を使う病院や医師は数え切れない程ありますが、その殆どは保険診療のためエキス剤を使用しており、煎じ薬を用いるのはごく小数に過ぎません。
この少数派を大事にしなければならないのは勿論ですが、貴重な少数派に於いても精油揮散については万全を期さなければなりません。
さもないと折角の煎じ薬も中身の無い只の出し殻になってしまいかねません。

医薬分業で、大学病院などの医療機関から漢方煎じ薬の処方箋が発行され、薬局がこれを受けて調剤する事があります。
多くの医師は処方を知っていても薬草までは知りません。
調剤する薬剤師も正規の講義を受けた事が無いので処方も薬草も余り詳しくありません。
余り詳しくない者同士が組むと、医師はただ処方を書き、薬剤師はただ計量・混合するだけになります。
いくら証がどうのこうのと云ったって、煎じる段階で精油揮散があっては処方が効能を発揮できません。

はっきり云いますと、煎じる時に揮発性の薬草は後で入れるようにしなければならないのです。
回ってくる処方箋のなかに「紫蘇葉」はまだしも、「薄荷」があれば絶対に“後下”といって煎じ上がるちょっと前に投下しなければなりません。
最初から入れておくと煎じ上がった時には精油は全部飛んでしまっています。
香蘇散、逍遙散、防風通聖散、消風散、参蘇飲などの場合です。
医師はこの事を知らないし、どの薬局でも薄荷を別包にせず他の薬草と一緒に包んでしまっています。

ついでに気を付けてほしいのは薬草の“修治(加工)”のことです。
黄ごん、何首烏、杜仲、遠志、続断、牛膝、菟絲子、亀板、白僵蚕、車前子、麻子仁、桃仁、杏仁、牛蒡子などなど、沢山の薬草は使用前の加工をしなくては充分な効能を引き出すことが出来ません。酒で蒸したり、火に焙ったりするのです。
煎じ薬でさえそうですからエキス剤などは云うまでもありません。何にもしてありません。

本当の漢方を実践したくて、自分が出来る事ならやらなければならないと私は実行していますが、全国の同業者にも是非これを知ってほしく思います。

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