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貨幣状湿疹との戦い

今年の6/10のこと、急に右頬の直径1㎝程のシミが腫れて痒くなった。見ると少し盛り上がってブツブツしている。
暫くして更にあちこち幾つかの小さいシミも脹らみを見せてきた。
また頭にあった直径5mm程のシミはみるみる盛り上がるや黒い疣に変わり、痒みもある。
何が原因だか分からず、取り敢えず「風湿熱」と考えて消風散エキスで様子を見ることに。
翌日からは煎じ薬で張磊先生の消風散に変更する。

 (益母草8 荊芥・苦参・白鮮皮・地肌子・蛇床子・蒼朮・地黄・土茯苓3 蝉蛻1)36

痒みとブツブツが引いていくような手応えを感じたのと、ほかに思い当たる処方も無かったので結局2ヶ月間もこれを服用することになった。
しかし症状は一進一退で軽快しなかった上に、8/24には手の甲に水泡性の湿疹さへが現れてきた。
これは盛夏ゆえに「湿熱」が強くなったかと急遽、卑解滲湿湯に変方することにした。

 (黄柏・卑解・意苡仁・茯苓・牡丹皮・沢瀉・滑石・蒼朮3 木通・苦参・甘草2)33

これをまた延々1ヶ月半も続けなければならなかった。
水泡性の湿疹は処を変えて出ては消え、出ては消えを繰り返し、夏も終わり、10月になってしまった。
戦禍は体のあちこちに残り、もっとも大きいのは右足首の5cm程の痂皮で、これがなかなか治らない。後で分かるのだが、これが貨幣状湿疹という難治性のものだったのです。
元々の右頬のシミの盛り上がりと痒みは卑解滲湿湯のお陰か何とか小康を保っており、頭に出来た黒い疣は紫雲膏を着けていたら何時しかポロポロと欠けて、すっかり小さくなっている。

余りにもシミと痂皮の治りが遅いので10/10には肝胆湿熱を取るべく[竜胆瀉肝湯+二妙散(黄柏・蒼朮)]を一週間分試してみた。
しかし何の変化も起こらない。
ほとほと万策尽きて考えあぐねていたところ、ふと目に止まったのが房芝萱先生の「四肢作痒三年来、丘疹及水泡、双足内踝部最重」という治験例でした。

初診: (意苡仁4 黄耆・六一散<滑石・甘草>3 蒼朮・茯苓・黄柏・生地・苦参2.5 防已・地膚子2 黄岑・防風・猪苓・車前子・当帰・赤芍1.5 黄連1)36.5

結痂して
2診: (茵陳蒿5 意苡仁4 苦参3 生地・地膚子・茯苓2.5 木瓜・蒼朮・黄柏・防風2 牛膝・白止・猪苓・車前子・山梔子1.5)35

これだ! ピーンと閃くものがあって、2診の処方を使ってみました。
これが10/16の午後からでしたが、何とその晩から心なしか手応えを感じました。
やはり思った通り、翌日からめきめき改善に向かい、三日で痂皮は消え、跡には何の分泌液も出ていません。
頬のシミの盛り上がりと痒みも平たくなり始めています。
頭に出来ていた黒い疣の痕跡もすっかり無くなりました。
昨日10/19には少し沁みるけれども風呂の湯にも浸かることが出来ました。

しかし貨幣状湿疹というのは実にしつこいものです。そのまますんなりとは行かないもので、行きつ戻りつ、2診の処方を更に2週間続けてようやく全ての部位が枯れ果ててきました。

なおアトピー性皮膚炎などでもそうですが、慢性湿疹では特に気をつけなければならないのはスキンケアです。勢いのある発疹期では分泌液もあるので上から覆うのは感心しませんが、痂皮が形成されてからは分泌液は減り、今度は乾燥し始めます。この時期に服薬のみでスキンケアを怠ると治療がぐんと遅くなります。即ち保湿のことです。皮膚の乾燥を防ぐために上から覆いをかけなければなりません。
漢方では「青黛散油膏」という軟膏を塗ってから絆創膏などで覆います。

青黛散 (青黛・黄柏2 石膏・滑石4) を25%に白色ワセリン75%で製した軟膏

貨幣状湿疹の漢方治験例は文献でもほとんど見かけません。一例報告としても意味があるのではないかと思います。

(続報へつづく)

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さて、どうして2診の処方が“ドンピシャリ”と効いたのか?
今までの処方とどこが違うのか?
苦参・黄柏・竜胆などの強力な苦寒性の清熱利湿薬は双方共通です。
蒼朮・意苡仁に始まる利湿・燥湿薬も共通です。
とすれば大きく異なるのは「茵陳蒿」の存在です。

茵陳蒿は肝、胆、脾、胃の各経絡に入り清熱利湿するとともに、また膀胱経にも入り発汗作用があります。
それは軽くて精油成分に富む荊芥穂に発汗作用がある事と、茵陳蒿も花穂で精油に富む事の類似から頷けます。

卑解滲湿湯にしても竜胆瀉肝湯にしても重い性質の薬草ばかり使ってきましたが、軽質で発汗作用のある薬味一味を加えるだけでガラリと薬効が変わったのではないかと思われます。
湿熱は粘膩で取り去りにくいものと相場が決まっていますが、湿の中にも軽湿と重湿があって、重湿ばかりを下からの尿利で攻め立てていたので痂皮の治りが遅かったのではないかと反省させられます。
これに発汗という上への発散を取り入れる事で、さすがの難治性湿疹も動かざるを得なかったのではないかというのが今回の教訓でした。

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