アトピー性皮膚炎 (中医学では異位性皮炎)
茵陳蒿が湿疹に極めて有力な薬草であるという印象から幾つかの知見を集めてみました。(1),(2)
張×,男,7歳。1999年6月20日初診。
主訴: 1月前に両下肢の小腿内側の皮膚に紅疹と水疱が現れた。
病院の診断では湿疹とのことで色々手当てしたが良くならないので中医に転じた。
その部位の皮膚は紅疹湿爛して汁が出ており、周辺は黄痂になっている。
皮膚は掻痒のため抓痕があり、大便干、小便色黄、口渇あり、舌質紅、苔黄厚膩、脉数である。
アトピー性皮炎の急性期と診断される。
湿熱浸淫の証で清熱利湿法が必要である。
処方: 竜胆草10g,黄岑10g,黄柏10g,茵陳10g,沢瀉10g,車前子10g(包煎),大青葉10g,金銀花10g,白蘚皮15g,地膚子10g,六一散<滑石6:甘草1>15g(包煎),7剤。
二診: 皮膚が湿爛して汁が出ていた処はすべて結痂しており、時々痒い。
大便は時に干時に稀、小便は正常、舌質淡紅、苔黄だが厚くはない、脉数。
診断は前と同じくアトピー性皮炎の急性期。
脾虚湿困の証で、健脾利湿法が必要である。
処方: 生黄耆10g,蒼朮10g,茵陳10g,沢瀉10g,車前子10g(包煎),大青葉10g,金銀花10g,白蘚皮15g,生意苡仁15g,地膚子15g,六一散<滑石6:甘草1>15g(包煎),7剤。
三診: 皮損箇所の結痂は全部脱落して、皮膚には色素が沈着している。
もう痒くはなく、二便は正常、舌質は淡紅、苔薄黄、脉数。
診断はアトピー性皮炎の恢復期。
脾胃虚弱の証で、健脾益気法が必要である。
処方: 六君子湯加味:蒼朮10g,党参10g,茯苓10g,陳皮10g,山薬10g,甘草6g。
7剤で治癒とみなした。
按: 患児は先天禀賦が不足しており、素体虚弱で湿熱の邪に感染しやすく、湿熱浸淫の状態になっていた。
急性期には清熱瀉火薬を大量に用いて顕著な療效があった。
処方中の竜胆草は清肝瀉火、黄岑は清肺火、黄柏は清下焦之火、山梔子は清三焦之火。
茵陳、沢瀉・車前子・六一散は清熱利水し、湿熱を下より出す。
白蘚皮・地膚子は清熱除湿止痒。
大青葉・金銀花は清熱解毒して感染の併発を予防する。
諸薬を共用することにより三焦之火を瀉すことが出来、体内の蘊湿は消え、皮膚の紅疹と水疱は自然に消退した。
恢復期には健脾益気して体質を増強し、病因を除去すると同時に過敏物質との接触を避け、皮膚を保護しなければならない。
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