透発による病気治し
透発の作用とは、病的な毒素(病邪)を体表から発散させることです。
中医学では発汗・嘔吐・下痢・利尿などの生理的な排泄ルートを使って病邪の排泄をします。治病とは「病邪をいかに排泄させるか」であると考え、薬物で無理やり症状を無くするような方法は取りません。その排泄路のうち最も軽くて浅いところにある発汗法の応用です。
寒気が体表を襲い「さむけ」がするだけで、インフルエンザや麻疹のように病邪がまだ体内に侵入していなければ発汗法の中でも発表法を使います。一般には辛温発表剤といって、麻黄・桂皮・荊芥・杏仁などのがそれです。
しかしインフルエンザや麻疹ともなれば明確な病邪が侵入しています。一旦これが体内に入ると一寸の事では除去することが出来ません。そこで使うのが透発法です。
一般に辛凉透発剤といって葛根・浮萍・蝉退・芦根・連翹・薄荷などがそれです。処方としては升麻葛根湯などが有名です。
何が透発されるかというと、斑・疹・痘などから出る斑疹毒、痘毒、その他の陳腐の気や毒です。これによって外感病や皮膚病・できもの・痔・胃腸病・ガンに至るまで邪毒で排泄できるものなら何でも排泄しようとかかります。
ふと気が付くと何とも温泉療法に非常に近いではありませんか。
どこそこの温泉が皮膚病に良く効くとか、痔に効くとか、胃腸病に効くとか、ガンに効くことで有名な秋田の玉川温泉などと、温泉は万病に向いています。
あれはみな温泉に含まれる微量成分が直接的に効くのではなく、温泉の透発作用を通して病邪が排泄されて有効になると考えれば納得できます。
東北のある温泉地では乾癬に効く硫酸浴の方法を発明しています。これなども邪毒を深い処から体表へ誘導して排泄するのではないでしょうか。
昔から酒の深酔いに葛根湯を使うのが日本古来の方法でした。これもカラクリは透発法にあります。
腎透析をしていると皮膚掻痒になります。それを「よもぎローション」を塗って軽くするという成果を発表していた看護士さん達がいました。
家庭風呂によもぎを入れて皮膚の痒みを止めるのも昔からの方法です。
いちぢくの葉を煎じた汁で痔を洗えば痛みが消え、桃の葉を煎じた汁で行水させれば赤ちゃんのあせもが引くというのもあります。
中医学では、アトピーや湿疹などの皮膚病なら白蘚皮や連翹などで疹毒を、痔なら柴胡や升麻などで熱毒を、胃腸病なら桂皮や陳皮などで陳腐の気を透発します。
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