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補陽還五湯

【出典】 王清任 『医林改錯』

脳梗塞に有効な薬方があるのを知らないで、リハビリだけを頼りにしている方々に知って貰いたくてこの処方を紹介します。

王清任の説明によれば、人身の陽気を十とすれば左右に各々五づつが分布している。
脳梗塞によってどちらかの半身でこの陽気から2分の1が欠けると半身不随が起こる。
この処方は補気薬と活血薬の配合により血行改善をはかり、欠けた2分の1の陽気を回復し、元の五に返すので還五、すなわち補陽還五湯と名づける。

本方は脳梗塞・中風の后遺症・脳外傷・坐骨神経痛などに広く用いられます。
その内で面白いのは脳血管病のもたらす“複視”にも効果があることです。

朱進忠先生医案

 刑XX,男,三ケ月前,右前額に外傷を受けた後,右眼の視力が明らかに下降して,視一為二(複視)となった。某医院の診察では動眼神経麻痺とのことである。
診れば右眼瞼は下垂し,外斜視と,瞳孔散大になり,対光反射と調節反射が消失し,眼球は上を向いている。
舌苔は白く,脈は右が虚大で弦,左が弦渋で不調である。
これまでに用いられた諸方の多くは活血の薬草だったのに効果が無かった。
跌打損傷は当に活血通絡すべきであるが,然し今は其の右脈が虚大で弦,大なるは虚である。

東垣は次のように説明している。
「気口の脈が大で虚なる者は,気の内傷である。当に益気培本,活血通絡を以って標を治すべし。」
そこで処方は補陽還五湯を用いた。

黄耆30,当帰12,赤芍12,川弓,地竜,桃仁,紅花各10

薬を進めること三剤にして,視力は驟かに増し,運動も好転してきた。
再に進めること10剤にして,眼珠運動は基本的に正常となり,視力も正常となった。
瞳孔も以前に等しい大きさになっている。
なお継進すること10剤をもって再発しないようにした。

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