前額痛
案七:脾虚肝旺証 臨証実験録
董某,男,28歳,泡池村人。
ここ連続三年、毎年春になると未明に前額が痛み始め、午前9~10時ごろには疼痛がもっとも重くなり、午后に漸く緩む。
毎日決まったように始まり、夏になってやっと痛まなくなる。
今年は春風が未だ吹かないのに、もう疼痛が始まり、十余日になる。
痛む時は両目が赤くなり、前額は熱くなる。すぐに鎮痛剤を飲まないことには我慢できない程である。
針も数回刺してもらったが効果はなかった。
舌は淡紅色、舌苔は薄白。
脈は沈細の中に弦象がある。
食欲と二便は正常で他に異常はない。
脈症を参考にして、中気虚弱・肝火上炎の証である。
頭は精明の府であり、諸陽の会うところである。
中気が虚弱なら気血が脳を養わないので頭痛となる。
陽明と太陰は表裏で互いに連なっている。
前額は陽明経の循るところだから痛みは外に属す。
午前は陽に属し、気が盛んになる筈なのに陽気が不足するので午前中から痛くなる。
また午前は太陰病が劇しくなる時でもある。
目赤口干、脈象帯弦、春季の寅卯(3時~7時)に痛むのは「春升木旺、横逆乗上」の象だからである。
治法は補中益気・平肝緩急に宜しく、木気が条達すれば,土気は自ら舒びる。
補中益気湯加味:
党参・白朮・黄耆・夏枯草5 当帰・陳皮・白止3 白芍8 升麻・柴胡・甘草2 三剤
二診: 疼痛は止まった。原方を続服すること三剤。
明年は3月の啓蟄の后から服薬するように申し渡して再発を未然に防ぐことにした。
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