子宮筋腫
子宮肌瘤
徐××,女,37歳,售貨員。一九八四年十二月十日就診。
患者は少腹部 (左右いずれかの下腹部) が隠痛墜脹すること半年,もともと胸悶不舒,心煩易怒,腰膝酸困,疲乏无力,小便不暢,白帯多,質清稀,有臭味,月経先后不定,量多色淡等の症があった。
現在は少腹が冷え,按ずると稍痛む,下腹部は深く按ずると,包塊が触れ,推しても動かず,境界が比較的にはっきりしている。
形体は肥胖で,面色は良くない,舌質は暗紅,苔は薄白。脈は弦緩滑である。
婦科内診: 子宮に軽度の糜爛あり,宮体は8×7cm。子宮后壁の筋腫である。
本病は脈症から分析すると,脾腎気虚,寒凝鬱阻衝任の証である。
攻堅湯加味 :
王不留30、夏枯草・生牡蛎・蘇子・生山薬10、海票蛸7、車前子6、茜草・銀花3、絲瓜絡・柴胡2、官桂1g,水煎服,毎日一剤。
服薬10剤で,少腹部の包塊は軟かくなり,小便は通暢し,胸中は舒暢となり,元気が出た,しかしまだ腰はだるく,経量は多い。
上方から絲瓜絡、銀花を去り、生竜骨7,川断5gを加えて,水煎服,隔日一剤とした。
服薬20剤で経期は正常となり,腰困(腰のだるさ)は好転し,精神(元気さ)服食とも均しく良好になり,舌質は紅,脈は弦細となった。
これは気血が漸く充ち,脾運が好転し,痰湿寒凝が漸く消えていった兆候である。
上方から竜骨を去り熟地を加えて継服すること14剤で,上述の症状は全部消失した,
エコーで再検査: 子宮像は正常だった。
更に守方6剤で仕上げとした。
按: 抑鬱寡歓の人は,肝経が滞りやすく,滞ると気機が暢通し難くなる,
上では胸悶不舒となり,中では乗脾聚痰となり,下では痰気が交阻して,久積すれば筋腫となる,
この人は体胖で,舌質は暗紅,脈は弦滑,少腹に包塊圧痛があり,痰気鬱結の候と符合していた。
腰がだるく帯下が多く,月経が乱れて色は淡い,これは確かに脾腎気虚の証である。
少腹が冷えて隠痛するのは,寒凝衝任の兆候である。
経に云わく:
"任脈が病むと……女子は帯下[病<暇-日-丙]聚 (筋腫) となる"。
陳自明はまた指摘している: "婦人の症[病<暇-日-丙] (筋腫) は,内では飲食不節,外では寒温不調のため,気血が労傷し,臓腑は虚弱となり,風冷が腹に入って血と結んで生ずる。"
故に攻堅軟堅湯の散法で,去淤消腫し、
また清帯湯 (張錫純方) で補脾益腎,開鬱化滞をし,車前子、絲瓜絡、銀花を加えて小便を通利し,官桂を配して衝任脈を温調して,寒凝を解き,柴胡を佐として疏肝解鬱し,気機を利する。
上薬を合用すれば補しても滞らず,疏しても消耗せず,堅きを軟らげて正気を損わない功効がある。
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