尿路結石に壮水行舟法
宋代の理学思想家 朱熹の詩の一首に《泛舟》というのがある。
「昨夜江辺春水生、艨艟巨艦一毛軽、向来枉費推移力、此日中流自在行」
(昨夜川岸に春の水が流れ、巨艦も一毛のように軽く滑っていく。これまで船を押すのに苦労したのが無駄であったかのように、この日は流れに自在に進んでいくではないか)
これは一旦 豁然として貫通したときの喜悦の心情を表している。
ここに形容されるように壮水行舟之法を用いる事が腎結石の治療に最も相応しい。
腎結石( 石淋) はヤカンの底に溜まる湯垢のようで、腎水不足によって虚火が起こり廃渣を煉灼して結聚になったものである。
腎石が阻塞すると排尿は不暢となり尿液が瀦留しやすくなり、更に結石の増大につながる。
一般に腎結石の治療には車前子、木通、沢瀉等の利尿剤が多用されている。
しかしこれは尿管まで降りた結石には有利であるが、利尿し過ぎると必ずや腎水を耗傷し腎臓功能にも影響する。
筆者は本病を治療するに化石通淋の基礎に立ちつつも必ず腎水を補うようにしている。
「壮水行舟」とは水が漲れば船が行き易いように、腎や輸尿管中に嵌頓した結石も自然に下るという意味である。
熊某, 男,48 歳。
【病因】腎水が虧虚したので, 膀胱に熱が結ぼれ, 虚火が煉灼するや, 廃渣は結聚となった。
【証候】左腰腹に陣発性絞痛が2 年つづく, 尿意は頻頻としてあるが不暢であり, また耳鳴, 頭昏もある。
舌質は偏紅で, 裂紋あり, 脈は左尺部が弦細。
X 線で左腎腎盂に約1.1cm ×0.6cm の陰影がある。
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