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粉瘤(ふんりゅう・アテローム)

皮膚腫瘍とか脂肪瘤(脂瘤)や皮脂腺嚢腫ともいう。
中央に黒頭があり,擠圧すると内から白色粉状物を排出する。
一部には“粉瘤は治療する必要が無い”などと誤解されているが放っておくと感染して化膿し、赤く腫れ上がることもあります。
好発部位は頭皮・顔面・陰嚢・肩胛及び背部などです。

未感染のうちに手術によって切除するのが最も簡便な方法ですが、多発性だったり部位によっては漢方的な治療が必要になります。

漢方ではこれを「痰核流注」と呼んでいます。
痰核とは湿痰が皮下に流聚して固まったものです。
なぜ固まるのかといえば気滞血淤が関与するからでしょう。
将来 細菌感染を受けるような場合はこれが「湿熱鬱結」による痰核だったと分ります。
湿熱性の特徴としては小便短赤や舌苔黄膩などがあります。

『中医臨床』vol.24-no.3(2003/9)p30 に治験例が載っていました。

患者:千〇〇,女性,50歳,幹部。
初診:1993年11月6日
現病歴:3年前両手に豆状で黄色の大小結節の発生を見た。
軟らかな結節で皮膚の色は正常であった。
本人は気にしなかったが結節は徐々に大きくなり数も増加してきた。
さらに体幹および下肢にも広がり,豆粒大・卵大のものも見られるようになり,局部的な弱い痛みも感じられた。
1993年3月に某医院で結節の病理検査を受け脂肪瘤と診断された。
多発性のため外科的な切除は不適と判断され中医による治療を求めてきた。

舌苔は白膩,滑脈。
弁証:気滞血淤・痰湿蘊結
論治:理気活血・化痰軟堅

処方:生意苡仁120,当帰尾・生牡蛎(先煎)30,赤芍・青皮・陳皮・茯苓・元参・浙貝母15,制半夏10

経過:上記加減方を4カ月あまり服用したところ結節はすべて消失し皮膚の色は正常となった。

『中医症状鑑別診断学』によれば次の様な処方も挙げられています。

加味小胃丹 (天南星・半夏・桃仁・杏仁・紅花・陳皮・白朮・白芥子・枳実・蒼朮)

竹瀝達痰丸 (竹瀝・大黄・黄岑・沈香・人参・白朮・茯苓・陳皮・甘草・半夏・青蒙石・生姜汁)

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慢性下痢(泄瀉)

60代 男 中肉 顏色普通。
かなり長く下痢を病んでいる。
形のない水様の下痢が一日3回ほどある。
よく潤った舌で格別のことはない。

水様下痢だというので安易に胃苓湯エキスを五日分出してしまった。
五日後にまた来て、一日3回あった下痢が2回に減ったというのでもう一度 胃苓湯エキスを五日分出した。
更に五日後にまた来たので聞いてみると、やはり一日2回で便の頭は普通便だが終わりの方は水様便だとのこと。

「おかしいなあ、今まで聞かなかったけど腹痛はありますか?」
「下痢の前に決まって右側が痛かったり胃の辺りが痛かったりする。」

胃苓湯の証でも冷えによって腹痛はあるものだが、十日も飲んで効かないとなれば証を間違えている事は疑いない。
脾湿が原因ではなくて肝鬱脾虚かも知れない。
そこで今回から逍遥散痛瀉要方を加味した処方に変更した。

 (柴胡・当帰・白芍・白朮・茯苓・防風5 甘草3 生姜1)34

五日後に来て云うには、便が形になってきて腹痛も軽くなったと。
そこでもう一度 同じ処方を五日分出した。

ここで猛反省!
水様便という表現に騙されてすぐに脾湿と決めてかかったのが間違いの元だった。
下痢に逍遥散を用いることはあまり無いのでつい不覚を取った。

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焦樹徳 方剤心得十講逍遥散のところにもっと良い処方例がありました。

肝脾失和による慢性泄瀉の治療

症見脇部脹痛,腹部重墜,食欲不振,口干不欲多飲,舌質較紅,大便溏泄,毎日3~4次,四肢倦怠,飯后遅消或倒飽、面色萎黄欠沢,脈象弦細,重按乏力。

適用于慢性腸炎、腸結核等病。

逍遥散加減
(土炒当帰,柴胡,蓮子肉2 土炒白芍・土炒白朮・炒扁豆3 茯苓7 車前子・炒山薬・欠実米4 炙甘草1)35

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下肢リンパ浮腫

乳癌や子宮癌の術後に起きるリンパ浮腫というのがあります。
これは癌の転移を防ぐために手術でリンパ節を除去(リンパ節郭清)したために起こります。
通常は片方の足が異常にむくみ、歩くのも困難になります。
足の指も足首も動かず、ふくらはぎはパンパンになります。
対策は脚を高くして寝たり、弾性ストッキングを着用したり、エアマッサージ器を使ったり、マッサージや理学療法を受けたりする事です。
しかし何をやっても全然良くならないという人が多いものです。

私も相談を受けて色々な処方を試してみましたがうまくいきませんでした。
この度ネット上で足[月行]消腫湯という処方にぶつかりました。

 (焦檳榔・牛膝4 茯苓7 生意苡仁10 木瓜・黄柏・防已・紫蘇梗・葉3 蒼朮・呉茱萸2 桔梗1.5)45.5

リンパ浮腫に影響を与えるには余程の事をしなければなりません。
この処方の特徴は檳榔子や牛膝・意苡仁という重質のもの、紫蘇葉という軽質のものを混ぜている事のほかに、寒性の黄柏と熱性の呉茱萸を併用している事です。
いわばハチャメチャなところがあります。

加減運用としては湿熱にも淤血にも対応があります。
だからリンパ浮腫のほかに下肢静脈瘤や血栓性静脈炎による浮腫にも応用できるのではないかと思います。
どなたか追試されたらどうかと思い紹介しました。

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