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歯茎の腫れ---陰火

私は歯がダメで、よく歯茎が腫れます。(牙齦腫痛)
赤くきんきんに腫れるのではなく、ぶよぶよと頼り無げに腫れ、内部熱というより浮熱とでも云うべき表層の熱で、歯痛を伴います。
一般には風邪の熱が歯に来て 歯茎が腫れる等と云われますが確かな事ではありません。
この症状に対して『中医症状鑑別診断学』に出てくる処方は、銀翹散・清胃散・知柏地黄丸・涼膈散・大黄黄連瀉心湯などとみな実火に対するものばかりです。
私のような症状の者にはちょっと手が出ません。

一体全体、歯茎が腫れたり また引いたり を繰り返すのはどういう原因からだろうか?
軽い感染症だというのは分ります。
しかしこれを抗生物質という寒薬で圧さえ込むのは正解だろうか?
そこで、これは陰火ではないだろうかと考えたのです。

用いたのは 補脾胃瀉陰火升陽湯《脾胃論》加減 という長たらしい名前の処方です。

構成: (意苡仁6 党参・黄耆4 蒼朮・石膏3 升麻・柴胡・羌活・黄岑2 黄連・甘草1)30

幸いすぐに効果があり、翌日からどんどん腫れが引いていくのが分りました。

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陰火とは李東恒が唱え始めた説で、その生成を次の様に述べています。

若し飲食・労倦により脾胃を内傷(脾胃損傷,元気虚弱)すると食べ物の消化吸収がうまくいかず(穀気が運化されず、水穀の精微は輸布されない)、栄養分は溢れて下焦(腎・膀胱・生殖器・小腸)へ流れて湿熱となり、少陰(心腎経)の“陰火”となる。(心火は陰火なり,下焦より起る)

 つまり陰火は湿熱・心火・腎火の概念に含まれる。
 かつ陰火とは標が熱で、本が寒のもの。

陰火は脾胃経が現われる部位(上乗土位)に上って、食欲不振・胸満・微熱・二便不調・多唾口燥・歯衄・アフター性口内炎・寒がり・風邪を引きやすい 等となる。(飲良労倦所傷始為熱中論)

陰火に相対するのは陽火で、これは通常の火熱のこと。
陽火は草や木を近づけると燃え上がり、湿り気を与えればくすぶり、水をかければ消える。
これに対して陰火は草木に触れても燃えず、それでいて熱いので金石をも溶かす。湿を得ても変わらず、水をかければ益ます熾んになる。
それで通常の陽火と区別して“竜火” “竜雷の火”とも呼び電気的な火花を連想させます。

そして陰火を消すには温薬を用いなければならないとする。(補土伏火法)
いわゆる“甘温除大熱”の法です。瀉火ではなくて升陽によって陰火を降す斬新な方法です。

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私が陰火体質である事が分ったので陰火症状というものを自分の過去に起こった症状から集めてみますと次の様になります。これらの多くが陰火の症状だと思えば納得できます。

★標熱
湿熱: ふけ・にきび・脂性・目やに・湿疹・陰嚢が湿る・水虫・足に汗をかく・頭皮にイボ・舌にイボ・頚部に粉瘤
心火: 汗かき・熱しやすい・猫舌・舌が痛い・高血圧
腎火: 耳垢が湿る・眼がまぶしい
脾胃経の火: 痩せ・歯茎が腫れる

★本寒
冷めやすい・湯冷めしやすい・風邪を引きやすい・鼻涕・おならが出る・寒さで涙目になる・首筋が凝る

補脾胃瀉陰火升陽湯の名前には馴染みが無いかもしれませんが、補中益気湯も李東恒が作った類似処方です。
陰火という視点から補中益気湯を見直すならば 補中益気湯は単に「脾虚下陥の証」というだけでなく、もっともっと沢山の応用が出来るでしょう。

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