« October 2008 | Main | December 2008 »

嗜眠または嗜睡

中肉の青年からのメール相談。
仕事中に著しく眠くなり集中ができない、実際に眠ってしまう。
眠くなるときには異様に暑さを感じ、ひどい時にはYシャツの襟元がぐっしょりと濡れます。
普段でも汗かきです。暑さを感じて汗が出始めると、身体が冷え切っているのに汗は出続け、次第に頭痛や風邪のような症状へと発展します。

その他、舌苔が厚い、胃から水が上がる、下痢。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

返事: 舌苔が厚い事から予想される一つに湿の存在があります。
自然界の風・火・暑・湿・燥・寒の「六気」の過多あるいは不足は人体の健康と密接な関係があります。
中医学ではこの異常な六気を「六淫」といって発病の原因と考えています。

不快な湿は長夏梅雨の季節に最もよく現れます。
人間も長い間、湿気の多い環境にさらされるとすっきりせず疲労や倦怠を感じるようになります。

脾胃とまとめて云いますが「胃は水穀の海」といい、水分や穀物を受納するところです。
一方、(すい臓)は水穀の運化を主るところです。
この脾の陽気が虚して健運が出来なくなると湿は生理的な“津液”に変化せず、病理的な“痰飲(水毒)”となります。(脾虚湿困証)

生冷の物を過食したり、湿寒の外気が侵入して脾胃を冷やせば消化機能が失調し、清濁は分れず、飲食は消化せず、大便は清稀になり水様便となり、腹痛腸鳴します。(寒湿内生)

このように湿の停滞が長く続くと、昇るはずの“清陽(清明の気)”が頭へ上がらないのでボーッとして「頭重つつむが如く」なります。(陽虚陰盛)

中医学では“身体沈重,倦怠嗜臥者,乃脾経有湿”と説明されています。(体が重くだるくて眠ってばかりいるのは脾経に湿があるのである)


汗っかきは体表の肌目(キメ)があらく汗腺がゆるいのです。
体表の汗腺の働きは肺の支配下にあり、肺気が弱いと汗が漏れやすくなります。
また肺気はその母である脾によって育てられます。
従って脾気が弱いと肺気も弱くなります。
脾肺はともに「気」に関する臓器で、これが弱いと全身的な「気虚」を呈します。
それでだるく、疲労感があるのです。

脾虚湿勝 (脾の消化機能が衰えると津液が停滞する/脾湿証) の証に該当します。

おすすめの漢方処方

(1) 太無神朮散(たいむしんじゅつさん)・・・・・・・・・・(煎じ薬)
 (陳皮・蒼朮・厚朴・甘草・霍香・石菖蒲・生姜・大棗)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

頭皮痛

メール相談で変わった例がありました。

「半年前から頭部(つむじ周辺とてっぺん)が徐々に痛み始めました。化膿部を押されているような皮膚下の浅い部分の痛みです。」

頭皮痛 (頭皮神経痛) は頭痛とも違い、頭皮表面の痛みです。
ネットで検索してもなかなか納得の説明にぶつかりません。中医でも大変少ないようで、僅かに次の様な解説がありました。

人体の気機は悩怒・緊張・失眠 等を誘因として肝気上逆になりやすい。
気が有余になれば火となる。(肝火)
経気逆乱による火は上へ昇り血に迫る。
毛髪は血余なり”といわれており、血に迫った火は疼痛となって毛髪に及ぶ。(肝火上亢)

上部の火は風を伴い「風火」となることが多い。(風火上犯)
それを追い払うのが (軽揚散火),黄岑・黄連・山梔子・天花粉・玄参・連翹 等である。(《医林縄墨・頭痛》)


また頭頂部は厥陰肝経の領域でもありますから、頭皮痛は「肝火上亢・風火上犯」の証と弁証されます。

加味逍遥散・竜胆瀉肝湯などを基本として、これに黄岑・黄連・山梔子・天花粉・玄参・連翹 等を加味すればいかがかと考える。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

歯茎の腫れ---陰火

私は歯がダメで、よく歯茎が腫れます。(牙齦腫痛)
赤くきんきんに腫れるのではなく、ぶよぶよと頼り無げに腫れ、内部熱というより浮熱とでも云うべき表層の熱で、歯痛を伴います。
一般には風邪の熱が歯に来て 歯茎が腫れる等と云われますが確かな事ではありません。
この症状に対して『中医症状鑑別診断学』に出てくる処方は、銀翹散・清胃散・知柏地黄丸・涼膈散・大黄黄連瀉心湯などとみな実火に対するものばかりです。
私のような症状の者にはちょっと手が出ません。

一体全体、歯茎が腫れたり また引いたり を繰り返すのはどういう原因からだろうか?
軽い感染症だというのは分ります。
しかしこれを抗生物質という寒薬で圧さえ込むのは正解だろうか?
そこで、これは陰火ではないだろうかと考えたのです。

用いたのは 補脾胃瀉陰火升陽湯《脾胃論》加減 という長たらしい名前の処方です。

構成: (意苡仁6 党参・黄耆4 蒼朮・石膏3 升麻・柴胡・羌活・黄岑2 黄連・甘草1)30

幸いすぐに効果があり、翌日からどんどん腫れが引いていくのが分りました。

Continue reading "歯茎の腫れ---陰火"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

おなら再考 (腸鳴)

何故おならが出るのか?
という問いかけに対して「おならは何故出るのか?」の記事で、「肺の気滞は咳嗽で、大腸の気滞はおなら」と答えたけれども、間違いだったようです。
なぜなら気滞ならば気がこもって出ないで腹が張る筈だからです。
気がおならになって出過ぎるのは気滞ではなく、「気の下行」「下気」です。

次はある若い方からのメールです。

私はお腹がすくと異常なくらいの音量でお腹が鳴ります。1回ならまだしも、20分くらいずっと鳴り続けています。
誰でもお腹が減るとお腹が鳴りますが、音量とその音がすごいんです。
「ぐー」ではなく「ぐぅわぁぁぁぁぁぁ」など気持ち悪い音なんです。
自分でも恥ずかしくて死にそうになります。

『中医症状鑑別診断学』には“腸鳴”の項目がありますが、ここで扱われているのはみな下痢などを伴う病的な場合だけです。
上の相談例のように健康な人の“腸鳴”については述べられていません。
ネットで検索していたところ《類証治裁》卷之七 および《雑病源流犀燭・腸鳴源流》に同じ内容の記載がありました。

いくつかの病的な腸鳴のあとに病的でないのが記載されています。
下気が暫らく止んで復(また)鳴るのには,益中湯。

益中湯 (人参・白朮・黄岑・黄連・干姜・枳殻・甘草)

益中湯の構成薬を見ると寒薬熱薬が入り混じっています。
これはもともと腸が冷えていて、そこへ熱性の食べ物を摂取した状態だと考えられます。
寒熱が入り混じって軽く調和を乱し、下気を起こしています。(腸不和)
メールを下さった若い方も 益中湯 を試してはどうかと思います。

もしこれがひどくなって胸の方へ上衝して痞を起こせば「上熱下寒」の半夏瀉心湯の証になります。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« October 2008 | Main | December 2008 »