防風通聖散の応用(5) おでき・[病<節-丙]腫
【病案挙例】
1. 姚某, 女,28歳, 1998年8月5日初診, 患者は8年来 春季になると面部に必ず[病<節-丙]腫を発する,
中西薬で毎年数ヶ月間 治療するも, 根治出来なかった。
診見: 顔面及び頚前に大小不等の膿頭瘡疹があり, 紅腫して癢痛する,
口干咽燥, 時に畏寒を伴い, 心煩口苦, 大便秘結, 舌紅く, 苔黄は厚く, 脈は滑数である。
脈と症を合参すれば, [病<節-丙]腫である, これは即ち風邪鬱表, 実熱蘊結である,
治には疏風解表, 瀉熱通便とし, 方には防風通聖散加減を選ぶ,
薬用: 荊芥、 防風、 薄荷 (后下)、連翹、生山[木査]、川弓、赤芍、 白芍各10g、 生石膏、 滑石、玄参、生地各20g, 制大黄、 当帰、 蒲公英、 紫花地丁各15g, 芒硝 (冲服) 6g,
連服すること5剤にして, [病<節-丙]腫の癢痛は緩解し, 大便は常に戻った,
芒硝6gを去り, 制大黄を6gに改め, 15剤を継用したら, [病<節-丙]腫は消退し, 心煩, 口干, 悪寒は消失した,
后は成薬(防風通聖丸)を毎回6g, 毎日2回に改用し, 半年ほど服薬した。
按: 本案は春季の面部[病<節-丙]腫を主証とするが, 突き詰めれば其の病因機制は「風熱壅盛, 内結于裏,蘊鬱皮毛肌そう」である。
治療にあたり防風通聖散加減を用いたのは, 実に解表、清熱、攻下の三者并用の挙であった。
この患者は春季に発病することが多く, 春季は風を主る, 故に方中に荊芥、防風、薄荷を用いて外風を解表疏散し, 風邪を汗によって解する;
又肝は蔵血して風木の臓なるを根拠にして, 治風には先ず活血しなければならない, 血が行れば風は自ら滅する道理である,
当帰、赤白芍、川弓、生地を用いて養血柔肝, 凉血活血し, 以って内風の源を絶つ;
生石膏、滑石、連翹を配して肺胃の熱を清解する;
并せて“心は血を主り其の華は面に在る”ところから, “諸痛癢瘡は皆な心に属する”という原則に基づき, 生山梔、玄参を用いて以って心火を清し凉血する;
芒硝、大黄を加えて清熱通便するのは釜底抽薪(竈から薪を抜き火力を鎮める)の意味である;
蒲公英、紫花地丁で清熱解毒し, 全方で風は解し、便は通じ、毒は消えて、沈痾頑疾も自然と消退する効能となる。
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