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帯状疱疹と肝鬱

免疫療法なる言葉があります。
「免疫力が無くなると癌になる」とか「免疫力が無くなると帯状疱疹になる」と云って免疫力を高めるための方策をとります。
いかにも尤らしい説ではありますが、免疫力を高めるとは何をどうするのだろうか?

例えば「がんと免疫療法」というHPでは、免疫系を活性化するためにワクチンやインターフェロンや健康食品を摂取する方法、リンパ球を一度体外へ取り出して活性化してから体内へ戻すという方法などが上げられています。

ひとくちに「免疫力を高める」といってもこれは大変な事です。
無くなったものを補うといえば、いかにも補法のように思われますが単純な補法ではありませんね。
大改造になります。
この「免疫力を高める」ことを中医学ではどのように行っているか、について考えてみたい。


帯状疱疹のことを中医学では“蛇丹”“蛇竄瘡”“蜘蛛瘡”“纒腰火丹”等と云う。
免疫力が無くなったのは老化や過労などの体力的なものではなく、風火或いは湿毒の邪を感受した事と、情志・飲食・起居失調などのためと見ます。

そんなに強い風火や湿毒の邪が何処にあったのか?
そんなものがあれば誰も彼もが感染してしまう。
自分だけが選ばれて帯状疱疹になったとすれば、外に原因を求めるよりも自分の内部にこそ本当の原因があるのではないか。
では情志・飲食・起居失調などがそんなにも常態からはずれていたのだろうか?
そうなのです、非常に正常状態からはずれていたのです。
小さな外因と大きな内因があったのです。

「情志不遂なれば肝気は鬱結し、やがて化熱する」
「飲食不節なれば脾は健運を失し、湿濁が内停する」
「起居を慎まなければ衛外は失調し、風火・湿毒の邪を肝胆に内鬱させる」

肝火脾湿が内鬱すれば、毒邪は虚に乗じて外より侵し、腰腹の間で経絡淤阻となり、肌膚の表では気血凝滞し、帯状疱疹を発するのである。
本病は肝・心・脾臓と関連しているが、なかでも肝との関系が尤も強いと考えている。

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【臨床応用】

[1]康氏は柴胡疏肝散加味を用いて帯状疱疹50例を治療し, 満足な臨床効果を上げている。

治療方法: 柴胡疏肝散(柴胡・陳皮・枳穀・川弓・白芍・香附子・甘草)

熱毒熾盛者 合五味消毒飲加玄参、丹皮、梔子、水牛角;
疼痛重者 加延胡索、鬱金、重楼;
病在上 加菊花、荷葉,
病在下 加牛膝;
湿毒重者 合二妙散加卑解、生苡仁、赤小豆、竜胆草、生地、車前子;
皮損糜爛潮湿者, 加霍香、透骨草、苦参、茵陳、露蜂房、黄柏水煎 加陳醋外敷;
脾虚気滞者, 加金鈴子、鬱金、延胡索、生黄耆、白朮;
陰虚者 合一貫煎。


[2]喬氏等は柴胡疏肝散合失笑散を応用して老年帯状疱疹103例を治療し, 満足な臨床効果を上げている。

柴胡疏肝散合失笑散
柴胡・赤芍・白芍・川弓・蒲黄10, 枳売・香附9, 五霊脂・馬歯見15, 陳皮・甘草6, 淡竹葉3

疼痛甚者 加醋延胡索15g、 醋鬱金15g、 細辛3g;
熱象重者 加黄岑10g、大青叶30g、板藍根20g、梔子10g;
痰湿盛者 加竹[艸/姑]6g、沢瀉15g、大黄10g;
倦怠乏力者 加黄耆15g、白朮10g;
肝胆熱盛者 加竜胆草10g;
血淤明顕者 加重蒲黄、五霊脂。


[3]凌氏等は柴胡疏肝散を内服しながら紫金錠研粉を外用する方法を採用し帯状疱疹30例を治療し, 一定の療効を取得した。

柴胡疏肝散加味
柴胡6, 白芍15, 枳売12, 香附・川弓・陳皮・板蘭根・蝉蛻10, 竜胆草・野菊花12, 七葉蓮30, 甘草3

便秘者 加大黄5g,
疼痛甚者 加延胡索10g,
発熱者加 黄岑15g、連翹15g。

外用薬: 紫金錠を研粉し, 等量の青黛を加え, 冷水にて溶き, 毎日数回 患処に塗敷する。


[4]蔡氏は柴胡疏肝散加減にて帯状疱疹后遺神経痛32例を治療し, 良効を取得した。

方薬組成: 柴胡・枳殻12, 制乳香・制没薬6, 白芍20, 延胡索・川弓・香附15, 細辛3, 甘草9g

胸部疼痛 加桔梗10g;
腰以下部位疼痛 加牛膝10g;
失眠者 加柏子仁10g;
気虚者 加党参10g、黄耆30g;
便秘者 加火麻仁10g。


[5]張氏等は復元活血湯合柴胡疏肝散加減にて帯状疱疹后遺神経痛48例を治療して西医治療組40例の対照よりも満足な療効を上げた。

復元活血湯合柴胡疏肝散加減
柴胡・赤芍・枳殻・香附・川弓・桃仁・紅花10, 当帰12, 乳香・没薬9, 忍冬藤・絲瓜絡15, 加黄酒一小杯, 水煎。

年老体虚者 加黄耆、党参;
体実者 加酒制大黄;
湿熱内蘊、口苦、溲赤 加茵陳;
余毒未清 加穿山甲;
脾虚湿盛者 加白朮、茯苓、意苡仁;
痛在上肢 加桑枝或いは桂枝;
痛在下肢 加牛膝;
痛在頭面 加白止、桔梗


     『難病奇方系列从書 第三輯 柴胡疏肝散 (2009年)』 より

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