夜尿症 遺尿
中国医学では「遺尿」を次の四つに分類している。
(1)下元虚寒,腎気不足,
膀胱を温養することが出来ないと,膀胱の気化功能が失調して,閉蔵失調を起こし,水道を制約する事が出来ずに,遺尿となる;
(2)脾肺が気虚すると,膀胱は失約となり,小便自遺 或いは睡中に小便自出となる;
(3)肝経湿熱で,火熱が内迫すれば,遺尿となる;
(4)もし痰湿内蘊があれば,入睡后に昏睡状態(沈迷不醒)になり, いくら呼んでも応えず,遺尿する。
日本では夜尿症を「寒」や「虚」と考えることが多いように思う。 それで小建中湯や八味丸などをあてがう事が多い。 しかし現実には体格が良くて元気で活発な子供が夜尿をする事が非常に多い。 そういうケースに(3)の肝経湿熱の証が多いのではないかと思っています。
【臨床応用】
浙江省寧波市の中医院の夏明医師は加味丹梔逍遥散を基礎にして肝経鬱熱型の小儿遺尿症を治療しています。
病例では小便黄にして量が少なく,尿が臭く,小兒の性情が怒りっぽい(急躁),顏色は赤く唇も紅い,口渇があり飲みたがる,舌質は紅く,苔は黄,脈は弦数である。
これらの肝経熱盛の象から,遺尿症でも実証に属する。
治療には疏肝清熱, 固渋小便の対策をとる。如し誤って補えば必ずや他変を生ずる。
薬用: 加味丹梔逍遥散
薬物組成: 牡丹皮・黒山梔子・柴胡・白芍・当帰・炒白朮・茯苓・石菖蒲・桑[虫票]蛸・益智仁6~9g, [火段]牡蛎12~18g (先煎), 甘草3g。
加味法: 舌苔黄膩, 加竜胆草1.5~3g, 黄柏3~6g;
胃納不佳, 加生谷芽6~9g, 神曲6~9g。
全方は疏の中に補を寓し,補の中に散が有る,[示去]邪しつつも正気を傷つけない。
一応の効果を得たら後はその効果を持続させるために 知柏地黄湯加減 を飲ませる。
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小兒にも結構, 心情抑鬱があるものです。
もし家庭において,心情がいじけると,やはり肝気鬱結を起こして,気機は暢びず,三焦水道の通利に影響を受けます。
それが長引くと鬱熱となり,疏泄太過を促し,膀胱に下迫すれば,膀胱は収蔵作用をせず,睡眠中に遺尿となる。
これは小兒に特有の“稚陰稚陽”、“肝常有余” 等の生理的特長が容易に肝鬱化熱的な病理を起こさせるのです。
また肝経鬱熱といっても必ずしも熱盛の象が備わっているとは限りません。寒や虚が見えなかったら一応こちらの熱の方も疑ってみるべきだという事です。
『難病奇方系列从書 第三輯 丹梔逍遥散 (2009年)』 より
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