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尿道綜合症と加味温胆湯

以前、「無菌性の頻尿」の題名で非感染性尿道綜合症について書きました。
その時に取り上げたのは(三)気陰不足型 のケースでした。
老齢者には確かにこの型が多いのですが、若い人には(一)肝気鬱結型 が多いようです。
そこで今回は 肝気鬱結型 について取り上げます。
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この病因は外感湿熱・飲食不節・情志失調・禀賦不足 或いは労傷久病 等だとされています。
それらの原因から詰まるところ 下焦に湿熱が蘊結して, 腎と膀胱の気化不利が起こったものです。
すなわち「腎虚, 膀胱湿熱, 気化失司」という病機です。

肝は疏泄を主り, 性は条達を喜び, 抑鬱を悪む。
肝気が疏暢なれば, 三焦の気機を調暢させ, 肺、脾、 腎 三臓の機能を促進し,水液代謝を調節する。

この気機の昇降出入を重視すれば, 肝臓の疏泄功能を調節することが最重要であり、必ずしも苦寒清利の薬ばかりが必要ではない。

“尿道綜合症”の患者の症状には、尿頻・尿渋 (或いは尿痛) 等の腎虚 膀胱気化不利の症状の外に, 心煩易怒・失眠多夢・小腹脹痛 等の肝気鬱結・気痰互滞・痰熱内擾などの症状が多い。


【臨床応用】
治療方法: 加味温胆湯
(茯神・炒棗仁・丹参5, 制半夏・竹茹・枳実・橘皮・茯苓3, 炙甘草・緑梅花2, 生姜1, 大棗4)39

随症加減:
湿熱下注, 尿急尿痛者加木通1, 滑石・冬葵子5;
肝気鬱滞, 疏泄失常, 両側小腹脹痛者加柴胡2, 白芍・佛手3;
腎気虚, 固摂无権, 小便余瀝不尽, 甚至咳嗽或大声説話則尿液淋漓者加益智仁・山薬3, 枳実加量至10;
中気下陥, 下腹墜脹且小便淋漓, 臥床休息則減軽者加党参3, 升麻・柴胡1, 黄耆5

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【病案挙例】
王某, 女, 28歳。 1998年4月2日初診。
患者にはもともと “尿路感染”の病歴が1年余りあり, 反復発作していた。
それらの病案を見ると, 前医のいずれもが清利湿熱, 益気健脾, 養陰益腎等の法を取っている。

診: 尿頻、尿急、尿少, 両側の小腹疼痛, 腰脇に酸脹刺疼が隠隠とあり, 口苦咽干, 飲水は少なく, 心煩のため, 夜の睡眠が足りず, 常にトイレに起きるが, 尿量は少い, 性情は鬱悶して舒びず, 舌質は淡紅、苔は薄黄膩, 脈は弦である。
尿の細菌検査は陰性のため, 尿道綜合症 と診断された。

中医診断: 淋証。
すなわち肝気鬱結, 痰熱内擾, 疏泄失常, 水道不利の証であり, 疏肝解鬱, 化痰清熱, によって水行を助ける。

処方: (茯神・炒棗仁・丹参5, 制半夏・竹茹・枳実・橘皮・茯苓・白芍・佛手3, 炙甘草・柴胡・緑梅花2, 生姜1)43

4剤で諸症は悉く減ったが, まだ尿頻と排尿不適感がある。
上方から生姜を去り, 柴胡を減らせ, 7剤で症状は基本的に消えたが, 念のため上方加減を継続して1ケ月后には, 症状が完全に消失した。


按: 温胆湯は, 方名は温胆だが, 実は清胆和胃, 除痰止嘔の剤であり, 虚煩不寐、口苦、胸悶嘔涎 等の症を呈するものを主る。
いま臨床応用として尿道綜合征を治療して, 良効を収めた。
中医学では, この病機は膀胱湿熱, 気化不利とするが、膀胱湿熱は辛熱肥甘の品を多食したか,
或いは嗜酒過度により, 湿熱を醸成して, 膀胱に下注したか,
或いは下陰が不潔になって, 湿熱穢濁毒邪が膀胱に侵入して, 湿熱を醸成したか,
或いは肝胆の湿熱が下注したかで、
どれも皆「湿熱蘊結下焦, 膀胱気化不利」を起こして熱淋となり得る;

さらに若し脈絡を灼傷して, 迫血妄行すれば, 血は尿に随って出て, 血淋となる;
若し湿熱が久蘊すれば, 尿液を煎熬して, 日積月累するうちに, 砂石を結成して, 石淋となる;
若し湿熱が蘊結して, 膀胱の気化が不利となり, 清濁を分別出来なくなれば, 脂液は小便に随って出て, 膏淋となる。

肝鬱気滞・悩怒傷肝すれば, 肝は疏泄を失する。
気滞不暢は, やがて下焦の鬱, 肝気鬱結, 膀胱気化不利から, 気淋となる。

このように病理は湿熱の邪でも, 湿熱は外感からも, 不当な飲食からも, 気鬱不解からも内生する。
≪医宗必読.淋証≫ に曰く: “婦女は鬱が多く, 常に気淋や石淋となる。”

清代の≪馮氏錦嚢秘録.雑証大小合参≫ に曰く: “≪内経≫ の淋とは, 湿と熱だけによるのではない; 忿怒や, 気動生火に因る者もある。”

“気が行れば 水もまた行る”と ≪血証論≫ にある理論によって, 理気を以って治水の目的を果たす事が出来る。

     『難病奇方系列从書 第三輯 温胆湯 (2009年)』 より

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