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統合失調症と心腎不交

金元四大家の一人である 朱震亨(または朱丹渓ともいう<1281~1358>) は養陰派と呼ばれている。
その説は『陽は常に余りがあり、陰は常に不足している』という言葉に代表される。
その理由を彼はこのように説明している。

たとえ腎水が盛んで補う必要がないように見える少年でも、みだりに心を燃え上がらせば、中年になって心が衰え始めても、腎の損害があまりにも大きいため、回復できなくなる。ましてや老人になり、天真(天与の真陰)がしだいに途絶えようとする時には、孤陽だけが残るということになりかねない。したがって、補陰薬は子供から老人まで欠かすことができないものである。

彼のいう"陽有余"とは現代にあってはストレスの渦中にある事を指すし、"陰不足"とはそれに耐え得る物質的なサポート(精血のこと)が不足する事を指す。

それを次の様に表現している。

人の体には常に陰が不足し、陽が余っている。そのうえ欲望を抑えられる者は少なく、欲望に溺れる者のほうがずっと多いのである。欲望に溺れた結果、精血が欠損すれば、必ず相火が強くなり、陰はますます弱くなる。‥‥‥したがって、常日頃より陰を補い、陰と陽の均衡を保たせておけば、水が火を抑制するので、水が上昇し火が降下してバランスを保ち、病気になることはない。

五臓のうち「心(火)」は精神活動をつかさどります。
それを物質的にサポートしたり制御したりするのが「腎(水)」です。
水火が程よく交わり、心腎が交流すれば意識や精神活動も正常に働きます。
しかしこの世は兎角住みにくく、あくせくする様に出来ています。
燃料が足りないのにエンジンばかりをふかし過ぎでオーバーヒートになっています。
ここから生じてくる心身の不一致が不眠症から始まり、鬱病や精神分裂病や離人症へと進んだりします。


心の陽気過剰を制御する役割の精血とは心陰や肝陰・腎陰・肺陰などの複数の陰からなります。
なかでも心陽と相対するのは心陰です。
その心陰を生ずるのが腎水です。
陰を補う事が精神疾患にとっていかに重要であるか、漢方をやっていると良く分かります。

鬱病・統合失調症(精神分裂病)・離人症など、病名をつけたらどれになるのか分かりにくい精神疾患があります。
その中で“陰虚”にからむものがあります。しかもそれが精神疾患の大部分を占めているようなのです。
陰虚を更に詳しく云うと「陰虚陽亢」「心陰虚」「心腎不交」などになります。

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例えば、統合失調症の診断名を下された方の訴えを聞いてみますと、

テレビ・ラジオなどが自分のことを言っているように思う。
他人が自分のことを悪く言っているとか、おとしいれようとしている。
対人関係でどのように対処してよいのかわからなくなる。
外出すると人ごみの中で、身の置き場が無い感じがする。(ジロジロみられている・にらまれた)
すれちがう車からも見られているような気がしてつらい。
集中力に欠け、考えがまとまらない。頭の中がぐるぐるして考えがまとまらない。
夜寝付けないことがある。(悪夢にうなされることがしばしばある)
自分が周りからどのように思われているのかとても気になる。
怒鳴ったりすることはないが、落ち込みがひどかったりする。
思い込みが強い。
音に過敏。

このような事柄が延々と続きます。
これらの訴えに捕らわれてしまうと解決の糸口は開かれて来ません。
中医学(漢方)は心の病と肉体の病を区別しません。
ひとつながりの全体として人間を考えますから、心の病でも身体のひずみから正そうとします。

そこで、心の悩みのほかに何か身体的特徴が現れていないかを聞いてみますと、
「寝汗をかく・口が渇く・小便の出が悪い・便秘する」などの症状があります。

で、これは何かというと、これが“陰虚”の症状なのです。
体内に何らかの熱源があり、精血という“陰”を消耗している結果なのです。

昔から「七情内傷」といって、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七情が精神的な病因になります。
これらの精神情緒は目で見えない心の働きですが、働きの元になる物質の基盤を五臓において、相互に影響し合うものと考えています。
それが肺で陰虚が起これば悲しみと哭(なげ)きとなり、肝で起これば幻視妄聴となり、心で起これば心煩失眠となり、腎で起これば遺精や出血や尿不利などになります。

現代生活では様々なストレスから五臓の陰虚が急速に進み、身体から精神へと影響を与えているものと考えられます。
その原因を精神面からのみとらえて向精神薬だけで解決しようとするのは片手落ちです。
もう一方には五臓の陰虚という物質的な側面もあるという事を忘れないでほしい。

‥‥‥
次にあるのは、ある統合失調症の方からの連絡です。
例1)
> 現在、大補陰丸合定志丸を処方して頂いております。
> おかげさまで寝汗がとてもよくなりました。

陰陽のバランスが乱れると「陰虚陽亢」といって、心身ともにある種の興奮状態が起こります。
陰液を補えば(補陰)、虚陽は自ずから鎮まり、寝汗が止まると同時に精神も安定します。

心経絡のみならず腎経絡でも陰虚生熱が起こると早期月経になったり、尿利に影響が出ます。
陰虚陽亢には「滋陰潜陽」の方法をとらなければなりません。


例2)
> やる気がわかず、全てに現実感がありません。全ての感覚が鈍いです。
> 文章を読んだり書いたりするのが難しく頭の中がすっきりせず、まとまりません。
> 微熱 午後から熱が高くなる 不眠
> 口が乾く フケ性

五臓のうち「心(火)」は精神をつかさどります。
それをコントロール(相克)するのが「腎(水)」です。
水火が程よく交わり、心腎が交流すれば意識や精神活動も正常に働きます。
残念ながら今の状態は腎水が不足して心火を制御できていません。
腎水はまた真水ともいい、生命の源でもあります。

心腎不交 (水火が交わらず上熱下寒の状態) の証に該当します。

おすすめの漢方処方‥‥‥天王補心丹加味(煎じ薬)

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