高プロラクチン血症と漢方
プロラクチンというのは脳下垂体から放出される刺激ホルモンで、乳腺を刺激して乳汁を分泌させるように働きますが、このホルモンの分泌が異常に亢進して乳汁分泌、無排卵月経などを起こすようになったものを高プロラクチン血症といいます。 プロラクチンの血中濃度の正常値はおよそ15ng/ml以下ですが、高プロラクチン血症ではこれが異常高値を示すようになります。[(女性)25mg/ml, (男性)20mg/ml]
中医学では高泌乳素血症といい、臨床では「溢乳症」或いは「溢乳-閉経綜合征」に相当します。
【臨床応用】
奚氏は柴胡疏肝散加減を用いて高泌乳素血症を治療しています。
薬用: 柴胡12g, 炒白芍20g, 当帰・青皮・陳皮・香附各l0g, 炒麦芽40g, 茯苓15g, 川牛膝12g, 熟地15g。
(炒麦芽を重用するのは回乳のためである)
若し経閉か或いは月経稀発で気血淤滞を兼ねれば 加益母草15g,川弓10g,沢蘭15g;
肝血不足なら 加制首烏12g,鶏血藤15g,阿膠10g;
多嚢卵巣綜合征で腎虚挾痰湿を兼ねれば 加仙茅・淫羊霍各15g,石菖蒲12g,制半夏10g;
功能性の子宮出血量多で、色紅 或いは淋漓不尽なら 加炒黄岑10g、丹皮12g、墨早蓮15g。
按: 高泌乳素血症という病名は中医にはありませんが、≪竹林女科≫ の中に “乳衆血枯” の説というのがあります。
また ≪済陰綱目≫ の乳病門の中に “未産前乳汁出者, 謂之乳泣, 生子都不育” (出産前に早々と乳汁が出る症状を乳泣といい、未熟児出産になる) という論述とこれを調肝健脾法にて治療するという記載があります。
中医では本病は「情志不舒,恚怒傷肝,肝鬱気結,鬱而化熱,血随火升する故に経血不行,乳汁自溢する」ものと認識しています。
臨床時も此の類の患者の多くは肝鬱症状を具えています。
乳頭は厥陰肝経に所属し,乳汁や月経というのは衝任脉の気血の所産そのものです。
気血が調和し,経絡の通りが盛んなら,気血は時に応じて下り、それが月経となる。
若し情志不遂,肝鬱気滞のため,疏泄が失常すれば,気血は血海に帰らず、反って肝気上逆に随って乳汁に変わる,それ故に溢乳閉経等の症状が出現する。
以前、30 芍薬甘草湯と高プロラクチン血症 というのを書きました。
日本では柴胡疏肝散は周知されていないので代わりに芍薬甘草湯になったのでしょう。 単純な処方構成である芍薬甘草湯よりも柴胡疏肝散の方が遥かに優れているのは云うまでもありません。 こちらの説明の方が、私が勝手に想像した帯脈説よりもよほど合理的です。
『難病奇方系列从書 第三輯 柴胡疏肝散 (2009年)』 より
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