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新型インフルエンザの予防薬

予防薬と治療薬とでは目的が違うので区別しなければなりません。
今は予防薬について述べます。

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最近 多くの市民が新型インフルエンザ(A型H1N1流感)の予防に自選の中薬を飲み始めているが、下手な中薬を選ぶことに対して、流感の中医専門家である上海市 竜華医院 呼吸科の呉銀根教授は“抗非(SARS)”が流行った時に用いた“六味湯”を服用すべきだと云っている。

“六味湯”は,黄耆、白朮15、防風10、貫衆、金銀花9,陳皮6g,からなる清熱、解毒、補気の呼吸道伝染病の予防薬方である。

(註) 黄耆、白朮、防風 の三味で玉屏風散という処方になるから 玉屏風散+貫衆(ゼンマイの根茎)、金銀花(忍冬の蕾),陳皮(ミカンの皮) の意である。

www.jfdaily.com 2009-05-04 「新聞晩報」より

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新型インフルエンザと漢方 2

連日のように 新型インフルエンザが猛威を振るうだろうとのニュースが大衆を震え上がらせています。
頼みのタミフルやリレンザはやや症状を緩和させるだけの効果だし、耐性ウィルスの出現や副作用も問題だし、ワクチンにも解決しなければならない問題が山積しています。
必ずや襲い来るだろうパンデミックに対して 我々は対策も無いままに手をこまねいているだけで良いのでしょうか。

現代の西洋医学だけが医学であると思うから対策が無いのです。
医学には漢方や中医学やインド医学や その他色々な伝統的な民族医学もあるでしょう。
そんなものは信じられない、と一方的に蔑視していいんですか?
私には中医学という強い味方が居るので全然怖くありません。
多角的な視野を持てば克服できる方法は必ずあるのです。


今では漢方といえば慢性病が専門のように思われていますが、急性伝染病は慢性病よりも余程必要に迫られるものです。
やはり漢方や中医学の始まりも急性の伝染病から身を守るために生まれたものです。
急性伝染病が得意なのです。
治療効果も急性病なら直ぐに分かりますから一番やりやすく、発達しないわけがありません。

もう一度「もし新型インフルエンザが来たら」を見てください。


伝染病の感染はどこから始まるかというと、粘膜からです。
咽・目・鼻などの粘膜からです。
感染の最初の症状は体表の寒気や発熱になって現れます。
漢方ではこれを「表証」といい、この時期(衛分期)にウィルス(外邪)を駆逐する事に必死になります。


外邪をいかにして追い出すか


追い出し方法を見つけるのが漢方の使命だったのです。
そのために2000年もの年月をかけてきたのです。
効果が無いわけがありません。


50証チャート」を見てください。


18風 25寒 28湿 34熱

主にこの四つの性質を持つ「外邪」が色々に組み合わさって罹患していくのです。

21風湿 22風湿熱 19風寒 20風熱

それぞれの体質によって、少なくとも上の四つの病態へと分かれていきます。
当然 病態別に対処しなければなりません。
一律にタミフルという訳にはいきませんし、一律にワクチンという訳にもいきません。
このように多様に対処すればこそ耐性という問題も生じないし、副作用という問題も生じないのです。


ただ残念ながら漢方や中医学をやっている人の学習の程度にも色々な段階がありますから、漢方なら誰でも同じという訳にはいかないのです。
習熟度に応じた結果しか出ませんから良い治療家に出会うことが条件です。

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湿瘡 (湿疹)

中医の古代文献には湿疹の名は無く,一般に其の発病する部位と、皮損の特徴によって違った名称がある。
例えば全身に浸淫ありて, 滋水の多い者は, 浸淫瘡と称する;
丘疹が主なら, 血風瘡とか粟瘡と称する;
耳部に発する者は, 旋耳瘡と称する;
乳頭に発する者は, 乳頭風と称する;
手部に発する者は, [痂/肉]瘡と称する;
臍部に発する者は, 臍瘡と称する;
陰嚢に発する者は, 腎嚢風とか綉球風と称する;
四肢の弯曲部に発する者は, 四弯風と称する;
嬰児が発する場合は, [女乃]癬とか胎症瘡と称する。

総じて禀賦(免疫力)が耐えず, 風、湿、熱が肌膚で阻まれた為である。


【病案挙例】
(1) 謝某, 女,39歳, 1997年8月10日初診。
患者は1週間前に双下肢に発疹が出て, ひどく癢い, 掻いたら疹塊になり, 滋水が流れた。
やがて皮疹は全身に及び, 掻癢耐え難く, 心煩し, 口苦く, 咽が干く。

診察: 四肢、躯幹に対称性の広汎な紅斑、丘疹、水疱があり局部では融合して疹塊になっている。
双小腿は腫脹し, 脛前は滲出して糜爛あり, 舌質は紅く, 苔は黄膩, 脈は弦滑である。

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乳腺増生病 乳腺腫

乳腺増生病は中医の“乳癖”に属する。
中医では肝腎両経が乳房に密切な関系があると考えている。
それに次ぐのは衝任両脈である。

肝鬱気滞、情志内傷は乳癖の発病に重要な影響を与える。
平素から情志抑鬱, 気滞不舒があれば, 気血の周流は失度し, 乳房の胃絡に蘊結するので, 乳絡経脈は阻塞して不通となる, 「不通なれば痛む」で 乳房に疼痛が起る;
肝気が横逆して胃を犯せば, 脾は健運を失い, 痰濁が内生し, 気滞血淤に痰を挾めば結聚して核となり, 循経して乳中に留まる故に乳中結塊となる。

肝腎不足, 衝任失調もまた乳癖を引起す重要な原因である。
腎は五臓の本であり, 腎気が天癸を生ずると, 天癸は衝任を激発する, 衝任は下の胞宮より起り, 上りて乳房に連なる, 衝任の気血は, 上行すれば乳となり, 下れば経となる。
若し腎気不足し, 衝任が失調すれば, 気血は滞り, 積淤は乳房と胞宮に聚り, 或いは乳房疼痛して結塊となり, 或いは月事は乱調になる。


【臨床応用】
滕正霞は丹梔逍遥散を用いて本病を治療した。

薬用: 丹皮・焦梔子・柴胡・白朮・茯苓・当帰・赤芍・王不留行・路路通・海藻・乳香・没薬3, 生牡蛎・丹参・夏枯草10, 薄荷2

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貝母瓜呂散  粘痰

貝母瓜呂散 《医学心悟》

□ 薬物組成: 貝母4.5 瓜呂3 花粉・茯苓・橘紅・桔梗2.5g

□ 功効: 潤肺清熱,理気化痰。

□ 主治: 燥痰咳嗽。咳嗽,咯痰不爽,渋而難出,咽喉干燥哽痛,苔白而干。

◇ 病症分析:
病人は陰虚で肺燥の状態である,虚火は津液を灼傷して痰を生ずる,肺が清粛作用を失っているので,咳嗽が出る。;
燥痰があると,肺の清粛作用は機能せず,肺気が上逆し,急に咳嗽が出る;
燥邪が津液を傷つけて,咯痰しようとしても、難渋して出ない、咽喉は干燥して痛み;
苔は白く干いているのも燥痰の佐証である。

[加減法]
1.若し風邪侵肺の時には +桑葉10 苦杏仁8 前胡8
2.肺絡が燥によって傷つけば,咳痰に血絲がつく,-橘紅,+北沙参20 麦冬12 仙鶴草12
3.咳がひどければ +苦杏仁8 桑白皮12 枇杷葉8

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医学心悟·卷三痰飲篇》:“おおよそは燥湿の二つに分けられ,は表裏の二つに別けられる。湿痰は滑らかで出し易く,多くは脾から生ずる。脾が実ならばこれを消すのに,二陳湯を用いる,重症なら滾痰丸を用いる。;脾が虚しておれば補うのに,六君子湯を用いる。燥痰が難渋して出にくければ,多くは肺より生ずるので,肺が燥いておれば潤おすのに,貝母瓜呂散を用いる。”
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私の経験: 咽に痰がからんで吐き出し難く、えーっえーっと声を出したり 咳払いをしたりする「痰持ち」の人がいます。
やっと出てきた痰は粘りが強くて濁っていたり、少し黄色味がかっています。
こういう人に応用すると痰の切れがよくなって、次第に痰の量も減って来るので喜ばれます。

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二陳湯には烏梅を入れよ!

二陳湯はもと烏梅l個を用いている。
半夏は烏梅を得れば燥湿化痰しても気陰を傷つける憂いが無い。
烏梅は半夏を得れば肺気を収斂しても去邪の邪魔をする慮れは無い。
后世には烏梅の酸渋収斂性が 湿痰を去る半夏と抵触するから 良くないのではないかと疑う人がある。
或いは烏梅は"薬引子(引経薬)"としての用法だからといって略してしまっている。
例えば≪医方集解≫、≪成方切用≫、≪医宗金鑑≫ 等には烏梅を載せていないし, 現今の臨床でも用いない場合が多い。
≪方剤学≫の教材2版でも"近代用法では,生姜、烏梅は用いない"と謂っている;
≪簡明中医詞典≫も亦 現代では用いない場合が多いと謂っている。

張紅麗は処方の要は配伍にあると強調している。
二陳湯の主治は湿痰証で,病は肺脾二臓に在る。
方中の半夏は燥湿化痰し, 陳皮は理気去痰し,気を順にして痰を消させる,茯苓は健脾滲湿し, 生痰の源を絶ち,甘草は諸薬を調和する。
肺は"華盖(天蓋)" の臓で, 宣発と粛降を主る。
故に治肺の諸方は,常に肺の宣発粛降に逆らわないように注意して配薬する。

例えば小青竜湯、苓甘五味姜辛湯等はそうしている。
本方には少し許りの烏梅が佐薬として入っており,味は酸で性は渋で, ≪本草綱目求真≫卷2 には"肺に入れば収となる"と云っている。

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眼瞼部の帯状疱疹

眼部の帯状疱疹は病毒が三叉神経を侵犯している, 中医学では“火丹”と称し, 多くは肝経の火毒の患に属し, 清肝瀉火、解毒止痛法を採用し, 方には竜胆瀉肝湯加減を用いると治療効果が佳い。

【臨床応用】
常氏は竜胆瀉肝湯を基本方とした。

若し痛劇あれば 加延胡索、鬱金;
血疱あれば 加牡丹皮、赤芍、紫草;
口苦咽干 加石膏、麦門冬;
大便秘結 加生大黄

別に五倍子6、青黛l0、冰片3、滑石粉・石膏粉20g を用い,研細して, 麻油にて調均し,患処に塗敷する。(加味青黛散油膏)


【病案挙例】
趙某某, 女,39歳, 右額部及び右上眼瞼に小疱を生じ黄水を流し,灼熱疼痛する。
角膜下方に少し許り点状の混濁あり。
頭痛、咽痛と口苦, 小便は短黄,舌は紅く苔は黄膩,脈は滑数。

証は肝経湿熱に挾風邪を兼ねる。

竜胆瀉肝湯加減: 竜胆草・梔子・黄岑・車前子・生地3, 白鮮皮・蒲公英4, 柴胡・荊芥・甘草2

服薬すること7日で, 右眼瞼及び額部の疱疹の大部分は結痂し,結膜充血(+),角膜の点状混濁は浅くなった。

上方から黄岑・白鮮皮・荊芥を去り,蝉蛻2、草決明4gを加えて,続用すること7剤の后,疱疹の結痂は脱落し, 角膜の混濁は消除した。


按: 本病例は眼瞼及び額部の皮膚に始まったが,その区域は肝経の循行する処である。
≪霊枢.経脈≫に謂わく 足の厥陰肝経は上行して目に至り額に出る。
局部及び全身に火毒及び湿熱挾風の象がある, 故に竜胆瀉肝湯で清熱瀉火し湿熱を利す。

     『難病奇方系列从書 第三輯 竜胆瀉肝湯 (2009年)』 より

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痰湿による多汗症

≪丹渓心法・自汗・ 四十九≫ の中に: “自汗は気虚、 血虚、湿、陽虚、痰に属する。” と指摘されています。
この内で痰に属するものとは どんなものだろうか?
肥満者に汗かきが多いのはよく知られていますが、それの事です。

中医学では、多汗症の病因病機は痰湿内蘊のために臓腑経絡の気機が阻滞し、そう理(汗腺)の開閉が不利となり汗液が異常に外泄すると考えています。

【病案挙例】
続某, 男, 78歳, 毎日汗が出る, 動くと甚しく, 胸背の発汗が主で, もう数年になる。
2006年4月3日初診, 患者は肥胖型で, 舌体は大きく、辺に歯痕がある, 苔は白膩, 脈は沈滑。
これは痰湿の自汗と辨証される。

二陳湯加味: 清半夏3, 陳皮・白朮4, 茯苓5, 甘草2

連服すること5剤の后、自汗は明らかに減少した, 上方を連服すること半月で, 患者の自汗症状は消失した。

     『難病奇方系列从書 第三輯 二陳湯 (2009年)』 より
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尋常性乾癬 銀屑病(松皮癬)

本病はすべて営血虧損により, 生風生燥の結果, 肌膚が失養したものである。
初起には風寒或いは風熱邪の肌膚への侵襲を挾み, 営衛失和から, 気血不暢となり, 肌表が阻害されたか;
或いは湿熱蘊積を兼ね, 外へ宣泄出来ず, 内でも利導出来ず, 肌表が阻害されて発したものである;

慢性化すると風寒、風熱、湿熱の邪は無くなり, 気血耗傷から, 血虚風燥、肌膚失養は更に顕著になる;
或いは営血不足によって, 気血の循行は阻まれ, 肌表が淤阻される;
或いは因肝腎不足によって, 冲任失調となり, 更に営血は虧損される。
病因病機を根拠として, 清熱解毒を一貫して治療すべきである。


【臨床応用】
張氏の観察病例:

加味黄連解毒湯: 黄岑・黄連・黄柏・梔子・枸杞子・生槐花・猪苓3, 丹参・莪朮・白茅根5, 熟地・生地・茯苓・甘草7, 大黄2

按: 本病は陰血虧損を本とし, 血熱、血燥、血淤、湿阻を標とする, 本虚標実が特徴であり, 滋陰養血、凉血活血、解毒除湿を採用し、標本を兼治する。


陳氏の観察病例:

黄連解毒湯加味: 梔子・赤芍3, 黄岑・黄柏・白鮮皮・地膚子7, 黄連・生地・丹皮5

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慢性前立腺炎

慢性前立腺炎の症状は少腹、会陰、睾丸の痛み, 尿頻、尿痛 或いは尿道の灼熱感, 尿道から白色分泌物が溢出するなどです。
中医では"精濁"、"労淋"、"白淫" などの範畴に属します。
病因は錯綜して復雑だが,通常は"忍精" と"感染"のふたつにまとめられる。
前者の多くは青壮年の相火が動き易いのに,所願かなわず,精が外出しないため;
或いは忍精不泄のあまり, 敗精が流注して,精関から漏れ出て,精濁となる。
后者の多くは脾肺の虚から,容易に感冒して, 下焦の湿熱を引動するため;
或いは包皮が長過ぎて,汚垢が溜まったり,或いは性交不潔で, 湿熱が内侵し, それが精室に留り, 精と濁が混淆し,精が位置を離れて本病となる。

辨証は臨床上 虚実両証に分れる。
実証は湿熱型、淤血型。
虚証は中虚型、腎虚型。

【臨床応用】
王利明は丹梔逍遥散を基礎方として治療した。

薬用: 白花蛇舌草10, 棗仁8, 茯苓・土茯苓5, 丹皮・梔子・杭芍・白朮・王不留行4, 炒柴胡3, 甘草2


按: 慢性前列腺炎は一種の身心疾病であり, 心理的な素因も病因の一つに上げられる,この心理的素因は中枢神経系統を通して、内分泌系統 及び免疫系統に影響する。
丹梔逍遥散には疏肝解鬱、清肝瀉火の作用がある, 即ち逍遥散の疏肝調脾と,丹皮、梔子の清肝瀉火である。
これに加えて白花蛇舌草、土茯苓の清熱解毒、殺菌, 王不留行の活血化淤が、前列腺への供血を改善する。
全方で抗焦慮、抗抑鬱、消炎殺菌の功があり,前列腺炎の治療に対して良好な効果がある。

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痴呆症 脳萎縮

病位は脳に在れど, 心、肝、脾、腎の功能失調と密切に相関している。
病理の多くは本虚標実の候に属し,本虚とは陰精、気血の虧虚であり, 標実とは気、火、痰、淤が脳に内阻することである。
≪霊枢.海論≫: "髄海が不足すれば,脳転して耳鳴し, 脛は酸(だる)く眩冒(めまい)し, 目は暗く,懈怠のあまり臥せってばかりいる。"
≪辨証録≫: "肝気の鬱から始まり; 胃気の衰で終わる。肝鬱すれば木克土となり, 痰が生まれる, 胃が衰えれば土は水を制することが出来ず, 痰は胸中に積もり,心外に盤踞して,神明を曇らせ, 呆病となる"。
多くの患者は痰濁蒙竅 及び淤血内阻であるが, 腎との相関も密切なので,補腎をおろそかにする事は出来ない。

【臨床応用】

李氏の治験
菖蒲鬱金温胆湯: 菖蒲・半夏各5, 鬱金・枳実・竹茹・南星・陳皮3

気虚 加黄耆10;
腎虚 加補骨脂10, 益智仁3;
肝気不舒 加柴胡3;
血淤 加丹参10, 牛膝3;
煩躁 加蓮子10, 遠志3;
頭痛 加川弓10, 白止3

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神経症 (神経官能症)

神経症には神経性抑鬱症・恐怖症・強迫症・焦慮症・疑病症・臓躁・神経衰弱などを含みます。
症状は漠然としており、緊張感・厭世感・意志消沈・不安感などと色々です。

中医では病因は心・脾・肝・胆・腎の損及にあり,それら臓腑の陰陽失調から,気滞・痰結・鬱火・淤血等の産生へと進み,心竅を蒙蔽したり心神被擾・神明逆乱・神志異常をもたらすものと考えている。

病理としては気・痰・火・淤が主で, 相互に影響しあう。
≪霊枢.大惑論≫ に曰く: "痰が胆経にあると,神は宿舎に帰らず,人は不寐となる。"
≪古今医統大全.不寐候≫に謂わく: "痰火が擾乱すれば,心神は不寧となり,思慮は過度に傷つき,火熾と痰鬱で不眠になる。"
このように多くの患者は痰熱擾心・心神不寧の証に属する。
肝気が鬱結して, 日久しくして熱と化し,肝火上炎となれば, 上の清竅を乱して頭暈頭脹となる;
肝気が脾を犯し, 脾が健運を失せば,湿が聚って痰を生じ,その痰が鬱して化熱し,痰熱となって心神を内擾すると, 失眠となる。
心煩して怒り易く,胸が悶えて口苦く,舌紅く,苔が厚くて微黄, 脈が弦滑で有力なら, 肝胆の気鬱で, 痰熱が内結する象である。
これらは, みな理気解鬱・化痰安神が治則である。

【臨床応用】
劉氏は温胆湯加減を応用して神経症180例を治療した。

温胆湯加減: 茯苓5, 竹茹・半夏・枳実・陳皮・酸棗仁・遠志・合歓花3, 竜骨・牡蛎10, 甘草2g

加減: 大便秘結者 加瓜呂仁・草決明;
   口苦口干、急躁易怒者 竜胆草・梔子;
   頭暈耳鳴、五心煩熱、腰酸遺精者 加知母、黄柏;
   久病気虚者 加党参・黄耆;
   眩暈較重者 加白芍・代赭石;
   嘔吐頻繁者 加黄連・紫蘇葉;
   [ロ曹]雑して饑えに似る者 加姜汁炒黄連;
   精神恍惚,悲傷善哭者 加淮小麦似大棗;
   精神抑鬱して, 常に咽間に物ありて梗阻を感ずる者 加鬱金、厚朴。

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卵巣嚢腫  温胆湯加減

卵巣嚢腫や卵巣チョコレート嚢腫(卵巣子宮内膜異位嚢腫)は中医の積聚・チョウカの範畴に属する。
その病因は主に個体の正気(免疫功能)不足にある。
風寒湿熱の邪が内侵したり, 或いは七情・房室・飲食による内傷や, 臓腑功能の失調や, 気機の阻滞があり, そのために淤血・痰飲・湿濁等の有形の邪が凝結して散らず, 停聚して, 日久しくして積となったものである。
従って健脾去痰・軟堅散結の方法が卵巣嚢腫を治療する重要手段となる。

【臨床応用】
黄氏は温胆湯加減を応用して卵巣嚢腫を治療して, 良好な療効を得ている。
 (日本ではもっぱら桂枝茯苓丸しか候補の処方に挙がっていない)

基本方: 茯苓・夏枯草・意苡仁10, 白芥子・陳皮・劉寄奴5, 竹茹・半夏・柴胡・甘草3, 穿山甲 3(冲服)

肝気鬱結が甚しければ, 逍遥丸を追加する。


按: 中医では“奇病に淤多し”, “百病は痰を兼ねる”, “怪病に痰多し”, “百病は皆痰よりなる” 等の説がある。


     『難病奇方系列从書 第三輯 温胆湯 (2009年)』 より

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定経湯  無排卵性月経

不定期月経で定経湯を取り上げました。

定経湯はまた無排卵性月経や高プロラクチン血症にも用いられます。
王輝萍主任医師の臨床治験はまだ続きます。

(2) 高泌乳素血症 (高プロラクチン血症)

王老は 乳頭は肝に属し,乳房は胃に属し,腎経は乳内に入ると考えている。
若し情志不遂で,肝が疏泄を失うか,或いは腎水不足で,肝が養われなければ,肝火は上炎し,気血は肝気に随って上逆し,乳汁が溢出する。
同時に気血は衝脈 血海に下注するを得ず,経は閉じて行らない。
清・王旭高 曰く:"乳房は胃に属し,乳汁は血の化する所である。子供が居ないのに乳房が膨脹し,乳汁を下すのは,血が余っているからではなく,月水が道を間違え、肝気に随って乳房に上入し,変じて乳汁となったのである……其の気を順にし,其の火を清せば,其の風は熄み,下行させる事が出来る。"

定経湯加減: 当帰、白芍、白朮、茯苓、柴胡、丹皮、熟地、菟絲子、山萸肉

若し肝鬱が甚しければ 加夏枯草、緑萼梅;
若し気滞痛経なら 加香附、充蔚子;
若し肝火上冲,心煩易怒,口苦,苔黄膩なら 加山梔、黄連、黄柏;
若し脾虚湿阻,肥胖痰多なら 加制胆星、姜半夏、白芥子

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経行先后無定期

明末 清初の著名な医家、傅山の著《傅青主女科》の中に“経行先后無定期”への対応が書かれています。

婦人の月経が断続したり,前後にずれて無定期だったりすると,誰もが気血の虚だと云い,肝気の鬱結だとは云わない。経水は腎より出で,肝は腎の子であるから,肝が鬱すれば腎も亦鬱となる; 腎鬱になれば腎の通閉が狂い、月経は前后したり断続したりして一定しない。

用いられる処方は定経湯で、逍遥散から白朮・薄荷・生姜・甘草を去り,菟絲子・熟地・山薬・荊芥穂を加えている。すなわち疏肝と同時に,補腎填精を重用している。

【処方】 菟絲子・白芍・当帰10 大熟地・山薬・柴胡5 白茯苓3 炒黒荊芥2

主治: 肝腎の気鬱は,経が断続して来り,或いは前に或いは后になり,行りても不暢で,塊有り,色は正常だが,少腹は脹痛し,或いは乳房も脹痛して両脇に連なる。

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