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嗜眠、嗜睡、傾眠

いくら寝ても眠い、と訴える人がいます。
そういう人は睡眠相が遅延していて、寝る時間帯が大変遅いものです。
睡眠相が遅れているのは即ち不眠だからです。
不眠と嗜眠は同一のものです。

最近よく相談される症状として、
「眠れない・いくら寝ても眠い・のぼせる・汗っかき・寝汗をかく・痒い・尿が濃い・不安感・疲れやすい」
というのがあります。
これは陽気が亢進(陽亢)している状態です。
急性症状ではなく慢性症状であることから、この陽亢は虚陽の亢進(虚火=炎症)です。

虚火の生成は陰虚(肝腎陰虚//心陰虚)が原因です。
よく云うところの“陰陽のバランス”が崩れて「陰<陽」に傾いているからです。

陰が不足して「陰虚」になると、その分だけ陽気を制御する事が出来なくなります。
制御されなければ陽気が勝手に動き回ります。
それが心経で起これば心神不安となり、前述の不眠・のぼせる・汗っかき・・・などの症状になります。
これを防ぐには不足している陰分(津液や血液)を補ってやらなければなりません。
今の世には「陰虚」が非常に多く見られます。
いくら精神安定剤を用いても的外れですからちっとも効きません。

陰虚だと陽気の発生が少ないので寒がりで冷え性です。
そのくせ、のぼせたり汗かきだったり足の裏がほてったりします。
熱しやすくて冷えやすい」というのが陰虚の特徴です。
津液の不足や血虚があれば当然、スタミナと潤いも追いつきません。


肝腎陰虚 (気鬱が続くと火を動かし陰液を消耗する)

心陰虚  (心労と津液の消耗が過ぎると心神は不安定になる)

心肝陰虚 (陰液や血液が不足すると相対的に陽気が盛んになる)


代表的なおすすめ漢方処方は、黄連阿膠湯天王補心丹です。
市販品には無くて煎じ薬になります。

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急激な悪化は何故起こるのか?(1)

新型インフルエンザで小兒や少年ひいては大人に至るまでが急死するケースが報道されている。
ある時はウィルス性肺炎だったり、心筋症だったり、ウィルス性脳症だったりする。
そのメカニズムは免疫の過剰反応である「サイトカインストーム」ではないかとのことである。
新型インフルエンザの毒性は弱いとされつつも、人によっては急激に悪化する場合があると云われては、我先にとワクチンやリレンザ等の確保に殺到する事にならざるを得ない。

しかし、ちょっと待ってくださいよ。
文明の発達したこの21世紀にあって、パニクるのはみっともなくはないですか?
一体どうしてそのような「急激な悪化」が起こるのか、それが分かれば慌てる事もないでしょう。

私は漢方の立場から考えて、急激な悪化が起こるのは「小兒の上呼吸道感染」で述べた"稚陰稚陽"が原因ではないかと思います。
現代にあっては"稚陰稚陽"は小兒に限らず、少年や大人にも存在する状態ではないだろうか?

いまの新型インフルエンザに対してでも、現代医学は病源であるウィルスにばかり注目して、病人である個人の側の内因については問題にしていません。
理屈では確かに、外因を無くすればそれで感染は食い止められるかもしれません。
しかし実際には、空気伝染のように広範囲な相手を止められる筈がありません。
治療には外因ばかりでなく内因にも着目して、内外両方から詰めていかなければなりません。
外因には現代医学を主にして、内因には漢方や中医学を動員して総合的に考えるのです。

これまで余りにも現代医学に頼りすぎて、外感に対しては病原菌の方ばかりをやっつけて来ました。
その結果、自力で闘病するという事が疎かになっていたのではないでしょうか?
病気が治るという機舒には、自力の生理的な闘病反応があってこそ完成されなければなりません。
その一例は「かぜの体験 止嗽散」で書いたように、治癒機転は大小便の排泄によって行われました。(発汗による場合もありますが)

病原菌をやっつけようとするのではなく、体内で起こっている闘病反応を完結させることに全力を尽くして自然治癒へと向かわせる事が免疫力を培う事であり、"稚陰稚陽"からの卒業だと思うのです。
こういう闘病の繰り返しでこそ大人としての抵抗力が生れるのではないかと思います。
現在 どの病院でもこのような自力更生的な治療法を行っていません。
そういう経過が今の「サイトカインストーム」を生む土壌になっているのではありませんか?
"稚陰稚陽"のまま大きくなった少年や大人が今 ツケを払わされているのです。

せっかく日本には東西の両医学があるのですから「もっと双方を利用するようにしたらいいのに」と心の中で地団駄を踏んでいます。

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小兒の上呼吸道感染

新型インフルエンザが子供たちを襲っているこの頃、少しでも何かの参考になればと思いまして拙文をアップします。

中医学では, 小兒の臓腑は嬌嫩なため“稚陰稚陽”の体といいます。
肌膚は柔弱で, 営衛の衛りは固くなく, 飲食も自分で節制できません。
寒温も感知できず自分で調節できません。
外界からは容易に風邪が襲いかかるし, 身体内では脾胃の機能が不十分なため,運化作用は心許ないものです。
若しも栄養が足りなかったり,冷たいものを飲んで冷邪を感じたり,食滞や生冷・積熱で傷つけられたりすれば,簡単に湿痰を生成します。
それが進んで気機が阻滞し,升降が常態を失えば,風寒を感じれば,たちまち消化道及び呼吸道の疾患を現わします。
その標的はにあっても,その本因はに在ります。
臨証では咳嗽の外に, 面色無華(蒼白)、納少(食欲不振) 汗多等の肺脾気虚の象を伴い,多くは虚実兼夾の症です。
これに因って, 二陳湯で理気健脾化痰を図る事が病因病機に合致します。


【臨床応用】
1.徐艶花は2003~2004年間に,中薬の加味二陳湯だけで小兒咳嗽146例を治療し,好い療効を得ました。
146例の病人は西医の小兒科で上呼吸道感染と診断が確定され, 抗生物質を服用しても治療が無効だった者である。

年齢の最小は1歳3个月, 最大は4.5歳, 平均3.4 歳だった;
病程の最短は12日, 最長は49日, 平均19日だった。
病人は中薬の加味二陳湯の治療だけで, その他の薬物は停止した。

 加味二陳湯処方:
陳皮5~10g, 半夏2~6g, 魚腥草6~12g, 桔梗・白前・茯苓・黄耆・炙瓜呂皮3~9g, 射干・炒莱服子l~6g, 荊芥・炙甘草3~6g, 姜3~9g, 紅棗4枚

加減: 年齢及び病情に基づいて, 薬剤量は酌情加減した。
毎日1剤を, 毎4hに1回か或いは時間かまわずに温服させた。
服薬后は注意して風を避け, 飲食は清淡にものとした。

治療結果:
治愈したもの130例で, 89.04%を占めた;
好転したもの16例で, 10.96%を占めた;
総有効率は100%。
2剤しか服薬しなかった者から, 9剤を服薬した者まで, 色々だが平均の服薬は5~6剤だった。

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脱毛 脱髪

(1) 脂溢性脱髪

李某,男,21歳,于2005年5月16日初診。
1年来 頭髪があちこち脱落し,洗髪時にはひどい,時々 頭皮も痒い。
口干、口苦、失眠をも伴う。
頭頂の髪が少なく,髪は細く軟かくて油っぽい。
舌は紅く,苔は黄膩,脈は滑数である。

西医診断: 脂溢性脱髪,
中医診断: 発[虫主]脱髪

証は湿熱型で,清熱除湿法を用いる,処方は竜胆瀉肝湯加減とする。

 黄岑・車前子・沢瀉・茵陳・白朮・茯苓・苦参10 白鮮皮15 竜胆草・生山梔・甘草5g


二診: 14剤を服薬し終わると,頭髪の脱落は明らかに減少し,頭油も減軽し,頭皮の掻痒も消失したが,まだ夜寝ると夢見が多い。

原方から 白鮮皮、苦参を去り,生竜骨30gを加える。


三診: 継服すること14剤の后, 頭髪の脱落は大変少なくなり,頭油は明らかに減った,夜も自然に入睡できるようになった。

原方に制首烏30gを加えて,再服すること84剤にして,頭頂には既に多くの発毛がある。
油膩肥甘の食品を少なくして,再び上述の方剤を丸剤にして服用するようにと伝えた。

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