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くしゃみ 肺腎陰虚

陽虚噴嚏案
杜某,女,38歳,木芝村の人なり,1994年4月13日初診。
毎日早晨6時15分頃になると,噴嚏が狂ったように出て,涕泪滂沱のごとし,鼻塞がりて不通となる,8時の朝餐后になると自ら止まる。
已に三年を歴る。
自分では感冒だと云い,多種の感冒薬を服するも不効。

噴嚏は,鼻内の異物を排除する本能反射であり,肺気を開啓して,外気と正常に戻す現象である。
たまたま発声すれば,周身は清爽舒泰となる。
だけど此のような噴嚏は,大病に非ずといえども,亦甚だ苦悩に感ずるもので,当に怪病の列に属します。

これを診察するに,腰脊に酸痛あり,口干や咽干ありて,冷たいものを飲みたがり,月経は早まわり,量少く質が黏る,舌紅く苔がない,脈象は細数である等の一連の腎陰虚損症状が見られる。
おそらく腎陰虚だから,肺陰も亦虚しているだろう,子が母の気を盗むゆえ。
肺陰が虚すれば肺気は腎根に帰納できず,肺気上逆となり噴嚏が止まらない訳だ。

もとより感冒に非ず,故に感冒薬で治せるものではない。
滋陰補腎,潤肺斂金を以って治すに宜し。

六味地黄湯加減:
生地24g 山薬12g 山萸12g 丹皮10g 沙参15g 百合30g 白芍15g 当帰10g 石膏30g 三剤

二診:噴嚏は明らかに減少し,鼻塞、多涕も亦次第に減軽した。
已に証に適中したるを知るも,原方を続進すること三剤。
噴嚏は遂に止った。

臨証実験録

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疏泄太過による小便失禁

姫某,女,50歳。
曽つて陰虚血崩(月経過多)を病み,余が治愈させた事がある。
今は尿頻となり、ひと月余り尿急に見舞われている。
稍 尿意があると急いで厠へ行くのだが,少し遅れると失禁してしまう。
尿時は痛みなく,また灼熱感もなく、腰も痛くない。
食欲が殆ど無く,大便は一日一行ある。
舌は淡紅,苔は白く微膩,脈は弦細弱。

腹診:腹皮が薄弱で,圧痛は無いが,腹筋の緊張がある。

脈と症を観るに,此れは陰血不足,肝木失養,疏泄太過の証である。

治は当に柔肝緩急すべし,《傷寒論》芍薬甘草湯を,まず選方する。

 白芍15g 甘草15g 三剤

二診:尿頻、尿急は明らかに減軽したが,食欲はまだ少ないので,原方に鶏内金10gを加えて,更に三剤。

三診:小便失禁の状は,無くなった。
患者が病の復発を惧れ,もう三剤を求めた。
余もまた欣然として之を与えた。

臨証実験録

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妊娠中に漢方薬を飲んでも良いか?

「アトピーで今まで漢方薬を飲んでいたのですが、このたび妊娠している事が分かりました。このまま飲み続けても胎児に影響しませんか?」

このお尋ねに対して次のように答えています。(前提:その漢方薬が適当なものとして)
漢方には『有故無損 亦無損』という言葉があります。

これは「により用いるべき理由があればその薬物は母体を損じないし、亦胎児も損ずることはない。」という意味です。

私はむしろ、もっと積極的に飲んでほしいと思います。
悪い母体環境のままでは胎児も丈夫に育たないでしょうから、積極的に母体環境を改善してください。

『有故無損 亦無損』のHPには、妊婦に“大きな積聚(腹中の腫瘍)”が出来た場合の対処法が書かれています。
この時の積聚を小さくする薬は、抗がん剤のように峻利な薬剤です。
それでも恐れずに使えと指示しています。
ただし峻利薬ゆえ「大部分をやっつければ其処で止めておく方が良い。過ぎると母子の安全は保証できない。」と徹底治療ではなく、8,9分の所で止めておけと注意しています。
峻利薬ではなく、一般的な漢方薬ならば徹底的に治療しても構わないのです。

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兒童清感2号方

中国には人口が13億人もいるので抗ウイルス剤は高価だし、とても全部を用意する事が出来ない。
そこで北京市は 2009/11/04 新型インフルエンザ対策として、漢方薬「児童清感2号」が治療に効果があると公表した。

兒童清感2号方:
 炙麻黄・生甘草3 杏仁・知母・牛蒡子・浙貝母6 金銀花・青蒿10 黄岑9 芦根・生石膏(先下)15g

功能主治:清熱解毒、宣肺止咳。
 A型H1N1流感 及び各種流行性感冒による発熱・咽痛 或いは咽喉不利・咳嗽で痰が少く,舌質は紅く,苔が薄い等のもの。

用法用量:水煎口服。毎剤水煎200ml,毎次口服100ml。
病情が重ければ毎日2服,毎6時間に一回。
学齢前の兒童は半量に減らす。

煎服法:まず薬材を水に30分間浸泡しておいてから,更に水を加えて薬面を3-4cm程かぶるようにする。
先に石膏を15分間煎じておき,後から十分に浸泡した薬材を入れ,一緒に20分間煎煮し,最後に青蒿を入れて10分間煎じる,濾過して汁を取り,冷めてから口服する。
3剤を以って一療程とし、現在の価格は3剤で20元(約260円)である。


北京中医薬大学附属中西医結合医院兒科 主任医師 張思莱さんは次の様に指摘している。
もし兒童に湯薬を与えるならば,その解表薬は軽煎に止めて,久く煮てはならない。
さもなければ薬性は耗散して,作用が減弱する。
この外に,小兒の服薬で最も好いのは食間の2回である。
何故なら食前に服薬すると胃粘膜を刺激するし,食后に服薬すると容易に嘔吐を引起すからである。
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兒童清感2号方 は麻黄甘石湯銀翹散を合わせたような構成です。
熱咳と発熱を考慮してあり、お馴染みの処方構成は決して斬新なものではない。
これは従来の温病の処方で充分に対応できると考えているからである。

 (エビデンスにばかりこだわっている日本が、傷寒病の麻黄湯を有効と見なしているのとは180度反対である)

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急激な悪化は何故起こるのか?(2)

(1)では免疫力が少ない"稚陰稚陽"、すなわち陰陽のキャパシティが小さい事が原因の一つではないかと提示した。
もう一つ大事な事に気が付きました。
それは“温邪内陥”という病理です。
中医学で熱性の感染症について、発病からどのように進行して重篤化するのかを次の様に認識しています。(温病学)

(1)衛分証
感染の初めは肺衛(口鼻~皮毛)に風熱邪(インフルエンザウィルス)が侵襲します。
衛気(免疫力)が足りないと感染して発熱・微悪寒・咳嗽などの症状を現します。

(2)気分証
もし普段から偏食や夜型生活になり既に熱傾向にあったら(裏熱伏藏)、衛分での闘病は短時間しか続かず次の気分へと進みます。
この段階では邪熱は肺に入り、汗が出て身熱・咳嗽・呼吸困難・心煩・口渇などの症状が現れます。(ウィルス性肺炎などを起こしているのがこの段階です)

(3)営分証
気分の段階では、その高熱のため組織の栄養障害が起こります。(灼傷営陰)
それで夜間になると熱が高くなったり(身熱夜甚)、熱にうなされ譫語を云ったり(心神被擾)、ひきつけを起こしたり(神昏驚厥)します。(脳性痙攣やインフルエンザ脳症)
これらは皆「邪熱が営分に内陥した」事による症状です。

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以上述べてきたように「インフルエンザの急激な悪化」は“温邪内陥”が大きな原因であると考えられます。
その引き金となるのは日常生活の偏向から来る「陰虚」です。
陰虚とは陽気(陽分)に相対する陰気(陰分)が不足している事です。
夜型生活やストレスによって交感神経興奮の状態が長く続いている時に起こります。(花粉症やアトピーや不眠症に多いかな?)

中医学では(1)(2)(3)それぞれの段階に応じて対応する処方が用意されています。
ただ残念ながら、ここまで深く中医学を理解している専門家が非常に少ないのです。

「急激な悪化」さえ防ぐ事が出来れば、あわててインフルエンザワクチンを求めて走らなくとも済みます。
(1)の段階でしっかりと闘病して、自力で無料の免疫力を獲得しましょう!

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