疏泄太過による小便失禁
姫某,女,50歳。
曽つて陰虚血崩(月経過多)を病み,余が治愈させた事がある。
今は尿頻となり、ひと月余り尿急に見舞われている。
稍 尿意があると急いで厠へ行くのだが,少し遅れると失禁してしまう。
尿時は痛みなく,また灼熱感もなく、腰も痛くない。
食欲が殆ど無く,大便は一日一行ある。
舌は淡紅,苔は白く微膩,脈は弦細弱。
腹診:腹皮が薄弱で,圧痛は無いが,腹筋の緊張がある。
脈と症を観るに,此れは陰血不足,肝木失養,疏泄太過の証である。
治は当に柔肝緩急すべし,《傷寒論》芍薬甘草湯を,まず選方する。
白芍15g 甘草15g 三剤
二診:尿頻、尿急は明らかに減軽したが,食欲はまだ少ないので,原方に鶏内金10gを加えて,更に三剤。
三診:小便失禁の状は,無くなった。
患者が病の復発を惧れ,もう三剤を求めた。
余もまた欣然として之を与えた。
《臨証実験録》
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