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漢方と胃癌

胃は肝脾と密切な関系があり、胃だけでなく脾や肝をも併せて観察しなければならない。
飲食・情緒・病毒感染などの長期に及ぶ原因が胃癌を形成すると、漢方病理では「痰火膠結,気滞血淤」という概念に落ち着く。
すなわち辨証分型すれば次の三型である。

痰気凝滞型
淤毒内阻型
脾胃虚寒型

治療の規律としては胃の生理・病理からいって、“通を以って補となす”  “降を以って和となす”の二点だけはぜひ守らなければなりません。
ただ補うだけで“通”がなければ気機は鬱滞して,反って邪気を留めます。
また抗癌薬で癌を攻め過ぎると正気を耗傷してしまいます。

(1) 疏肝理気‥‥‥陳皮、枳殻、木香、佛手、鬱金
(2) 攻積,化痰化淤‥‥‥(化痰) 海藻、昆布、茯苓、半夏
                 (化淤) 三稜、莪朮、乳香、没薬
(3) 補益正気 ,扶正固本,兼補脾・胃・腎‥‥‥黄耆、白朮、北沙参、西洋参 (紅参はダメ)

胃癌の病人には食欲を増やす事が生命を延長させる鍵です。
通も降もそこへつながります。

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漢方と前立腺癌

間 寛平さんの前立腺癌が報じられていましたが、中医では早期の前立腺癌は肝腎陰虚と気滞痰淤による経絡の阻滞が原因と考えています。
前立腺は少腹の肝経に位置しているので肝腎陰虚と関連するのです。
また腫塊は一般に痰と淤血から論じられることが多いのです。
この故に中医の治療は滋陰降火を主とし,行気化痰,或いは活血化淤,或いは軟堅散結が佐とされるのです。

知柏地黄湯加味:
 知母・黄柏・沢瀉・牡丹皮・夏枯草3 山薬・山萸肉4 熟地・土茯苓・白花蛇舌草7 仙鶴草・半枝蓮5 琥珀0.3

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宿酔いと漢方

我が国では何時の頃からか、誰云うとなく「宿酔いには五苓散と半夏瀉心湯や黄連解毒湯が効く」と云われています。
その根拠は何でしょうか?
したり顔で胃内停水とか水逆とかの説明をこじつけていますが、誰も反論する人がいません。

明治の漢方医、浅田宗伯の『勿語薬室方函口訣』には次の様にあります。

連葛解酲湯
酒客の久痢に効あり俗疝瀉などと唱るもの真武湯七成湯等を與て効なきとき腸胃の湿熱に着眼して此方を用ゆべし又酒毒を解すること葛花解酲湯より優なり

即ち連葛解酲湯と葛花解酲湯が、酩酊に良いとあります。
こういう過去の名医達が残した智慧の遺産を省みずに、浅はかな現代人の学識だけで満足するのは危険です。

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とびひ(伝染性膿痂疹)

「とびひ」は漢方では“黄水瘡”や“滴漏瘡”と呼び、病因は“暑熱”または“湿熱”と考えています。

2010/01/13 妻(65)が朝起きてみたら、みけんの辺りにつぶつぶと赤い疱疹が三つほど現れていた。
思い当たる原因も無いし、痛くも痒くもないので虫刺されか或いは何かにかぶれたのだろうと放置していた。
しかし二日たっても一向に引いていかない。
みっともないと気にするので取り合えず青黛散油膏を塗ってみた。

三日目には更に盛んになる気配となったので慌てて調べてみると、どうも「とびひ」のようだ。
65歳にもなって とびひ とは思わなかったが、成人にもあるようだ。

そこで膿疱に使う 五神湯+黄連解毒湯 を服用することにした。

(金銀花・紫花地丁・牛膝・車前子・黄岑・山梔子・茯苓4 黄連・黄柏2)32

苦いのを我慢をして四日間飲んだら、さすがに勢いづいていた疱疹も枯れ始めてきた。
妻はもうこれ以上は「苦くて胃がおかしくなる」と我慢できずに服薬を中止した。

今日は、発疹してから既に10日も経っている。
見ると、もうすっかり痂皮も取れている。

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総合的な観察

愚痴をひとつ

もう80歳を過ぎたご老人、永年沢山の種類の薬を医師の処方箋で飲んでおられます。
最近、体調が悪くなり新しい処方箋を貰ってきました。
見ると、今までの薬に大黄甘草湯エキスが増えています。
私は、どうされたのですかとお聞きしました。

最近は腹が張って食が進まない、とのことです。
便通は、飲んでいる酸化マグネシウムのせいか下痢気味である。

かかりつけの医師は腹が張るのは便秘のせいと考えて、酸化マグネシウムよりも更に強い大黄甘草湯エキスを処方したのです。

下痢・腹張と食欲の無さを「虚」と見なさずに、目先の症状だけを変えようとしたのです。
全体観を重んずる漢方的な考え方が出来れば、容易に見抜けることなのに誠に残念なことです。

大黄甘草湯エキスを飲んで、もし腹痛がしたり下痢がひどくなったら直ぐに中止して下さいよ、と念を押してお帰ししました。

このような事がしばしば起こっています。
病院でも漢方エキスが使われているのなら、せめて陰陽虚実だけでも判断できるように基礎を学んで欲しいものです。

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漢方と大腸癌

大腸は五臓六腑の六腑に当たります。
六腑は中空で通じていなければ用をなしません。
また上から下へと降るのが順です。
このように“通降”が六腑の共通した特性です。
便秘は大腸の伝導(通降)が失われたためです。

大腸が糟粕を伝導する機能と体内の津液とは密切な関系があります。
腎虚になると津液が不足するし、腸胃の積熱があれば津液を灼傷するしで,大便は伝導不利となり,大便は干渋して,便秘になります。
便秘になると、湿・毒・淤血などの実邪が腸道に結阻しやすくなり、腫瘤を形成します。

腎虚以外にも、大腸は肺・脾・肝・胃の臓腑とも密切に相関しています。
肺と大腸は相表裏をなしており,肺気が宣発粛降すれば大いに大腸の伝導を助けます。
脾は上昇を主り,胃は下降を主り,脾胃の功能が正常なれば大いに大腸の伝導を助けます。
肝は疏泄を主り,条達するのを喜ぶので,気機の昇降とも常に関係します。
疏泄が滞り、食べ物の糟粕が久しく腸腑に滞れば便秘になります。

これは《四聖心源》に曰う:“腎は二便を司り,伝逓の職は庚金(肺)にあり,疏泄の権は乙木(肝)にある。”という言葉で要約されています。

従って便秘を治す方法も肺・脾胃・肝・腎からと原因によって区別しなければなりません。

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漢方と肺癌

肺は嬌臓(か弱い臓器)とも五臓の華盖(天蓋)ともいい,陽気が常に不足しやすい臓器である。
それで“気虚”“陽虚”になることが多い 。
肺癌の患者には舌質偏胖,苔薄白,面色蒼白、乏力、倦怠等の陽気虚証を表している者が見られるので、漢方では殊のほかここに留意する。

故に終始一貫して温陽益気法を基本とする事が多い。

肺癌主方
 人参(or西洋参)10g,黄耆30,麦門冬・菟絲子・女貞子・仙霊脾・沙参15,桂枝20,炮附子30-60(先煎),五味子9,鹿茸3g

その他 証に応じて薬味を加減するのは云うまでもない。

1.脾虚痰湿型
2.気陰両虚型
3.気滞血淤型
4.熱毒熾盛型
5.気血両虧型

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漢方と食道癌

小澤征爾氏(74)が食道癌とのことでニュースになっています。
日常何の前触れも無かったのに検診で発見されたそうです。

漢方では食道癌は“噎膈”に相当すると考えています。
とは噎塞、哽噎のことで,食物が咽を下る事が困難であること;
とは格拒のことで,飲食不下を指すか,或いは咽を下っても又吐出すること。
臨床では常に噎膈と并称する。

噎膈の病機は複雑で,主に情志抑鬱、平素嗜酒、久病年老等と関係する。
情志が内傷すれば,肝気は疏泄を失常し,気滞血淤か気鬱化火から傷陰となる;
酒食が不節ならば,脾運は失常し,水湿は聚って痰を生ずる;
年老久病なれば腎虚となり,腎陰虚すれば上行して咽部を濡養できない。

噎膈の病位は食道にあり,胃に属する。
病変の機理は肝、脾、腎の三臓と関連し,三臓の経絡はみな食道に連なる,故に三臓の功能が失常すれば,が食道を阻塞し,胃気は通降せず,津液が干涸して失潤すれば噎膈となる。
《医学心悟》に説く:“凡そ噎膈は,胃[月完]干槁の四字を出でず。”

“噎膈”を治療するために設けられたのが 清代の医家、程鍾齢(国彭)の創生した啓膈散《医学心悟・卷三》です。

構成: 沙参・丹参9 茯苓3 川貝母4.5 玉鬱金1.5 砂仁1.2 荷葉蒂2個 杵頭糠1.5g

功用: 潤燥解鬱,化痰降逆

主治: 噎膈
   咽下梗塞,食入即吐,或朝食暮吐,胃[月完]脹痛,舌絳少津,大便干結者。

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