漢方と食道癌
小澤征爾氏(74)が食道癌とのことでニュースになっています。
日常何の前触れも無かったのに検診で発見されたそうです。
漢方では食道癌は“噎膈”に相当すると考えています。
噎とは噎塞、哽噎のことで,食物が咽を下る事が困難であること;
膈とは格拒のことで,飲食不下を指すか,或いは咽を下っても又吐出すること。
臨床では常に噎膈と并称する。
噎膈の病機は複雑で,主に情志抑鬱、平素嗜酒、久病年老等と関係する。
情志が内傷すれば,肝気は疏泄を失常し,気滞血淤か気鬱化火から傷陰となる;
酒食が不節ならば,脾運は失常し,水湿は聚って痰を生ずる;
年老久病なれば腎虚となり,腎陰虚すれば上行して咽部を濡養できない。
噎膈の病位は食道にあり,胃に属する。
病変の機理は肝、脾、腎の三臓と関連し,三臓の経絡はみな食道に連なる,故に三臓の功能が失常すれば,痰、気、淤が食道を阻塞し,胃気は通降せず,津液が干涸して失潤すれば噎膈となる。
《医学心悟》に説く:“凡そ噎膈は,胃[月完]干槁の四字を出でず。”
“噎膈”を治療するために設けられたのが 清代の医家、程鍾齢(国彭)の創生した啓膈散《医学心悟・卷三》です。
構成: 沙参・丹参9 茯苓3 川貝母4.5 玉鬱金1.5 砂仁1.2 荷葉蒂2個 杵頭糠1.5g
功用: 潤燥解鬱,化痰降逆
主治: 噎膈
咽下梗塞,食入即吐,或朝食暮吐,胃[月完]脹痛,舌絳少津,大便干結者。
男。53歳。漢族。已婚。
病人は多年 進食につけ不適感があったが,近来は哽塞状態が出現した。
検査: 胃鏡報告では“食道に 約0.8*0.6cmの腫塊が発見された。
症状:面色は悪く、黒黄色を帯びている。
神志は清晰で言語もはっきりとしており、飲食は常と変わらない,睡眠も正常。
進食には僅かに哽塞感がある。
舌質は紫。苔は白厚で[米造]。
口は渇かず,大小便も正常。脈微渋。
疹断:上隔。(衝任の二脈が津枯している)
処方:沙参・尖川貝・丹参・玉鬱金・茯苓・菖蒲10 白花蛇舌草・半枝蓮30 木香6 砂仁4 甘草3g 荷葉蒂 五個 杵頭糠 一撮(布包煎)
※ 杵頭糠とは糟糠(米糠)のこと
《本経逢原》:“春杵頭糠,能治噎膈,消磨胃之陳積也。然惟暴噎為宜。”
効能は 消食化積、清熱利湿にある。
食道癌、胃癌、大腸癌などに有効とされる。
よくいにん(*意苡仁)が抗癌に用いられるのと一脈通じる。
(日本では利膈湯なる処方が用いられるらしいが意味がよく分からない)
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