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アトピー性皮膚炎と妊娠性掻痒症

妊娠性掻痒症とか妊娠性痒疹と呼ばれる妊娠性の皮膚病があります。
原因は不明なるも一説によれば、妊娠によるホルモンの影響で皮膚が変化したり、子宮が胆嚢を圧迫する結果、胆汁が鬱滞して起るとも。

痒疹の特徴は「第2子目の妊娠初期~中期に発症、出産まで治らない」「丘疹と紅斑が四肢から始まり広がっていく」「多発性で強い掻痒を伴う」
「胎児には影響はなく、出産後すみやかに治癒する」などです。

日本ではこれを妊娠期肝内胆汁うっ滞症の一つとしてとらえています。
中国では妊娠胆汁蓄積症や妊娠期肝内胆汁淤積症といっています。

これは古くは “風掻痒”、“風痒”、“血風瘡”、“痒風” 等と云われていました。
なぜ私が今これを問題にするかといえば、これがアトピーと関係するのではないかと思ったからです。
アトピー性皮膚炎」で示唆したように「茵陳蒿」がキーではないかとずーっと思っています。

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怒りについて

以前、「怒りっぽいとは」の記事を書きましたが、この時の怒りとは「血虚」から誘発される怒りでした。
今度は「血実」から発せられる怒りについて考えて見ます。

怒りっぽいことを「多怒・善怒」などと表現します。
漢方には形神一元論というのがあって、臓腑(生命物質)と精神活動は一元であると見なします。

“肝は血を蔵し,血は魂を舎(やど)す,肝気が虚すれば恐れ,実すれば怒る。”

この臓腑機能から見てくると善怒には「瀉肝」から着手すべきです。
後世の医家が竜胆瀉肝丸・瀉青丸・丹梔逍遥散等を運用して肝火上炎の煩躁易怒を治療したのがよく分かります。

一方、善怒は陰陽の平衡から論ずる事も出来ます。

“陽多き者は,多く喜び;陰多き者は,多く怒る”

陰陽の盛衰と喜怒は相対します。
同じ怒りでも陰多き者は鬱怒する。
気機を疏理して,陰盛による抑鬱沈滞状態を解除すべきで,逍遥散・柴胡疏肝散等を選用する。
陽盛によれば憤怒となる。
上亢の陽を平抑すべきで,生鉄絡飲により“陽厥”を治療するような場合である。
後世、黄連解毒湯・鎮肝熄風湯・[石蒙]石滾痰丸等を運用して煩躁・怒狂等を治療するのは一歩の進展である。

このように視点によって怒りの治療法が異なる事から、人間の怒りの複雑さや多様性について思いが致されます。

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肩凝りと漢方

肩凝りとは何でしょうか?
私は筋肉疲労だと思います。
細い首や肩の筋肉が重い頭を長時間 支え続けると、やがて支え切れずに筋肉が悲鳴を上げるのが肩こりではないでしょうか。
このダメージは簡単に解消するような性質のものではありません。
マッサージしたり温めたり叩いたりしながら少しずつ疲労が消えていくのを待つしかありません。
これは生活習慣病というもので、外感によるものでもないし、内因によるものでもありません。
三因方』(三因極一病証方論) によれば、病因は内因・外因・不内外因に分けられます。
このうちの不内外因に当たるのが飲食の乱れや過労などで、ここへ肩凝りも含まれます。
外感などは外因によるので防御や駆逐で守れます。
内臓疾患や精神的な病気は内因によるものですが、病気の形成までには長い時間がかかりますから、どれだけでもリセットをする機会があります。
ところが飲食や過労などは外因でもなく内因でもなく、不内外因となると一旦犯してしまうと取り返しが効きません。
即つけが回って来ます。

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面部黄褐斑(シミ)

桃紅四物湯加味で面部黄褐斑96例を治療し,満足な療効を得た。

桃紅四物湯加味
 (当帰4 桃仁・白附子・丹皮・川弓・桔梗3 白芍・生地・鬱金5 香附7 紅花・甘草2)45

医案
 向某,女,32歳,2003年8月13日,
患者は2年前に顴部に色斑ができ,だんだん増えてきたし,色もだんだん濃くなった。
今では蝴蝶形の不規則な黄褐色斑の様相を呈してきた。
平素から頭暈、だるい、顔色が悪い,食欲不振,不眠,月経量少で色が紫暗,舌質は淡紅,苔白く,脈は細渋である。

気虚血淤と辨証され,治療法は補気養血・化淤消斑法が宜しい。

薬用
 (党参・麦芽・香附7 当帰4 白朮・白芍・熟地・鬱金5 山査・桃仁・川弓・白附子・丹皮・桔梗3 紅花・炙甘草2)67

2日に1剤を水煎して服したら,8剤で痊愈した。

 漢方では本病の多くを次の様に考えている。
平素から憂鬱で,肝気が鬱滞すると,肝は条達を失う。
鬱が久しくなって熱化すれば,陰血を灼傷する。
気滞により血淤すれば,血は面に上乗出来ない。
或いは肝腎が不足して,経血が虧虚すれば,腎水は上栄できない。
或いは腎陰虧虚によって,水が火を制せず,虚火が上浮すれば,顔面を鬱阻して黄褐斑となる。

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糖尿病と消化管合併症

亡くなった母は長い間、かなり重い糖尿病を患っていました。
糖尿病といっても殆ど無症状に近いのですが、一番困ったのは食欲が無いことでした。
それに時々起こす頭痛と嘔気。
この消化器症状と糖尿病との合併が必然なものなのかどうかは分かりません。
何故なら糖尿病の人でも消化器症状を伴わない人が大勢居ますから。

調べてみますと「糖尿病と消化管合併症」というのがあって、消化管の動きを調整する自律神経障害が起こると、胃排出遅延、すなわち胃無力症になるそうです。
胃排泄遅延が生ずると食欲不振、嘔気、げっぷ、腹部膨満等を来すことがあります。

母の症状はどうもこの状態に一致します。
もう20年以上前のことで、母70歳の頃です。
その頃の私には、母が頭痛と嘔気を起こしても何もしてやれませんでした。
漢方診断において、まだ弁証するという事を知りませんでした。
症状だけから呉茱萸湯かな?などと自信無げに考えたりしていました。
母は胃がむかつくからと食事をしない事もしばしばでした。
母の体格が痩せていなかったので、それを左程重大な事とは思わっていませんでした。

また頻尿もあったけれど冷え性ではなく、赤ら顔の暑がりでした。
本人が一番つらかったのは頑固な不眠症だったでしょう。
寝付けないところへ来て頻尿ときたら、夜間に何度もトイレ通いです。
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飽食と腹脹(腹満)

食べ過ぎた後、腹が張って苦しんだ事がありませんか?
漢方では胃悶とか胃緩といいます。
2010/02/07 夕飯を無理して食べたのが祟って、翌日から全く食欲がなくなってしまった。
それからは食事をうんと減らして節食しているのだけれども、五日経っても良くならない。
軽くゲップが出たり、悪心があったり、腹満感があったりで何とも不快である。
節食だけでは埒が開かないので、ネットを調べてみました。

胃緩のところに胃下垂・胃無力症とあります。
まったくその通りです、胃が動いてくれません。

胃の働きは常に脾胃セットで語られます。
胃は受納・消化を司り、脾は精微の吸収・輸布を司ります。
故に胃気は下降し(濁気降下)、脾気は上昇する(清気上昇)と考えます。

一般的には胃弱による食欲不振には補中益気湯や六君子湯などですが、どうもそれらの処方を飲む気にはならない。
何故なら脾胃気虚の他に腹満という自覚症状があるからです。
気虚だけではなく、いかにも胃緩という表現の如く、胃の緩みそのものがこれで改善するとは思われないからです。
もっとスキッと胃を引き締めてくれるものは無いものか?

気を補うだけなら補中益気湯や六君子湯でも良いですが、どんよりと曇った濁気を吹き払ってくれるには力不足です。
曇天にカラッとした陽気を照らしてくれるような、活気のある一爽の風を吹かせたい。
そこで見つけたのが升陽益胃湯でした。

升陽益胃湯は李東垣の《脾胃論》の肺之脾胃虚論篇中に出て来ます。


本方の適用は「脾胃虚弱而湿邪不化,陽気不升之証」で次の如し。

倦怠嗜臥,四肢無力,秋燥の頃になって湿熱が少し退いても体は重く関節は痛む、口苦舌燥,心不思食,食不知味,大便不調,小便頻数,食不消,兼見肺病,洒淅悪寒,惨惨不楽,面色不和,舌苔厚膩,脈象濡軟。

(黄耆10 半夏・人参・炙甘草5 独活・防風・白芍・羌活3 橘皮2 茯苓・柴胡・沢瀉・白朮1.5 黄連0.5)45.5

補中益気湯との相違は独活・羌活・防風・柴胡と並んだ去風湿剤の多さと黄連の存在です。
四つの去風湿剤は曇天の雨雲を吹き払うに十分でしょう。
そして黄連は湿地に溜まった陰火を消してくれましょう。

果たしてこれを一剤飲んだだけで、翌日はその効果をハッキリと確認する事が出来ました。
我が身に起こった体験は本当に勉強になります。

陽気が昇る時間//陽気を上げる食物」では風邪に応用しました。

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頭頂痛

  

頑固性巓頂痛  青海省中医院主任医師 伏新順

 50歳の農村婦女,36年来の巓頂痛の病歴がある。
私が看た時,病人はオンドルの上で臥していた。
彼女が述べるには、14歳の月経初潮から始まりずーっと現在まで頭頂疼痛が続いている。
痛むときはややのぼせる感じがするが,頭頂を押えると冷たい。
ただ月経が来潮した時や、妊娠期と哺乳期には痛まなかった。
患者の舌は暗淡,舌体は胖,辺に歯痕があり、淤点淤斑もある,苔は白膩,脈は沈遅渋。

疼痛部から考えると,巓頂痛は足厥陰肝経に属するから,治は足厥陰肝経より入るべきである。

(肝脈は上行して喉を循り,目に連り,額に出て巓頂に至ります)

押さえると頭頂が冷えていて,舌質が淡、舌体が胖、辺に歯痕あり、苔が白膩,脈が沈遅から,肝に虚寒がある象と分かる。

治は温陽散寒とすべし。

病歴が36年と久しく治らず,わずかに月経が来潮した時と、妊娠期と哺乳期に痛まず,舌質が暗で淤点淤斑があり,脈が渋である事から,これは久病入絡,淤血内阻の象であるから,治は活血通絡とすべし。

呉茱萸湯合桃紅四物湯:
 (呉茱萸・川弓・紅花2 党参・当帰・白芍・熟地・大棗5 桃仁3 生姜1)35

 5日后,患者は5公里の路を歩いて自ら医院へ受診しにきた。

上方に桂枝3,益母草、鶏血藤、生黄耆5g,を加えて温経通陽、活血通絡の力を強めて,再服5剤。

 半月后に三度目の来診。
服薬后に諸症は消失したというが,舌はまだ暗紅,舌体は胖、辺に歯痕あり、淤点は消失しており,苔は薄白で膩,脈は沈細。
そこで上方を5剤,研末にして,毎服10グラム,毎日三回として,様子を見る事にした。

病人が月経来潮、妊娠期と哺乳期に巓頂が痛まなかったのは,この時期だけは血脈が辛うじて通っていたからだろう。

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漢方と子宮癌

子宮頚癌は総括すれば「正虚・衝任脉の失調,湿熱凝聚」に他なりません。
症状から遡って弁証すると次の様になります。

1. 肝鬱気滞は、七情が虧損し,五臓の気血が乖逆すると起きる。
 怒りは肝を傷つけ,憂思は脾を傷つけ,疏泄が正しく行われなくなり,気血鬱滞の結果 子宮癌となる。

2. 肝腎陰虚は、早婚にして多産だったり、房事過多だったりして腎を傷つけると起きる。
 腎陰が虧損すると,精血は不足して,衝任脉が失養する。
 或いは肝腎陰虚から,陰虚による内熱を生じ,虚火が妄動すれば,崩漏を生ずる。

3. 湿熱淤毒は,下血が止らないうちに,性交したり,感染症が長引いて、温鬱化熱して起きる。
 湿毒が下注すると,遂には帯下になる。

4. 脾腎陽虚は,先天の腎気が不足しているか,或いは早産・多産・房事不節により,腎気を損傷すると起きる。
 衝任脉が緩むと,帯下・崩漏を生じずる。
 或いは憂愁思慮が脾を傷つけて,運化が失職すれば,水湿は下焦に注ぎ帯下となり、痰湿が胞中に凝聚すれば,子宮癌となる。

漢方の治療は子宮癌という病名に拘泥せず、出血・帯下や その他の全身症状を総合して、1~4 のどの証に当たるかを判断して決めます。
従って子宮癌に特有の処方がある訳ではありません。
これは何の病名にも云えることです。
漢方は病名治療ではなく証候に基ずく治療を行うので、現代医学とはまた違った効果を実現できるのです。

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漢方と乳癌

乳癌は古くは“乳岩”とか“番花石榴発”と呼ばれていました。
漢方では乳頭は厥陰肝経に属し,乳房は足陽明胃経に属し,乳の外側は足少陽胆経に属するものと考えています。

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だから乳癌は肝・胃・胆などの臓腑から離れて考える事は出来ません。
すなわち肝・胃・胆の病因病機と関係があります。

七情所傷,血気枯槁(気虚血弱),憂鬱傷肝,思鬱傷脾,経絡枯渋,痰気鬱結,陰極陽衰,患難驚恐など


(1)早期の乳癌は肝気鬱結型が多く見られます。

(2)女性の月経不調と関係すれば衝脈・任脈の失調と関係があります。

基本方薬(香附・鬱金・川楝子・橘葉・川弓・当帰・女貞子3 白芍・生熟地・枸杞子・生山薬・野菊花5 瓜呂10)61

(3)進行してくると熱を帯び,陰毒旺盛となり危険です。

(4)更に進んだり手術を経ると気血虚衰を考えなければなりません。

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