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糖尿病と消化管合併症

亡くなった母は長い間、かなり重い糖尿病を患っていました。
糖尿病といっても殆ど無症状に近いのですが、一番困ったのは食欲が無いことでした。
それに時々起こす頭痛と嘔気。
この消化器症状と糖尿病との合併が必然なものなのかどうかは分かりません。
何故なら糖尿病の人でも消化器症状を伴わない人が大勢居ますから。

調べてみますと「糖尿病と消化管合併症」というのがあって、消化管の動きを調整する自律神経障害が起こると、胃排出遅延、すなわち胃無力症になるそうです。
胃排泄遅延が生ずると食欲不振、嘔気、げっぷ、腹部膨満等を来すことがあります。

母の症状はどうもこの状態に一致します。
もう20年以上前のことで、母70歳の頃です。
その頃の私には、母が頭痛と嘔気を起こしても何もしてやれませんでした。
漢方診断において、まだ弁証するという事を知りませんでした。
症状だけから呉茱萸湯かな?などと自信無げに考えたりしていました。
母は胃がむかつくからと食事をしない事もしばしばでした。
母の体格が痩せていなかったので、それを左程重大な事とは思わっていませんでした。

また頻尿もあったけれど冷え性ではなく、赤ら顔の暑がりでした。
本人が一番つらかったのは頑固な不眠症だったでしょう。
寝付けないところへ来て頻尿ときたら、夜間に何度もトイレ通いです。
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升陽益胃湯の事を調べていたら次の様な論文があることに気が付きました。

『升陽益胃湯治療糖尿病胃軽[病<難-丙]48例 』(<<四川中医>>2001年 第19卷 第07期)

タイトルだけで内容は読めませんが、かねてより母のことを気にしていた自分にはピンと来る所がありました。
余随李老師によれば升陽益胃湯の症状は次の様である。

:脾胃虚弱常見腹痛,腹瀉,納呆(食欲不振),倦怠乏力,腹脹,便秘等。

清陽が昇らなければ九竅 (眼耳鼻舌唇前陰後陰) は不利となる。
九竅とは五蔵が主るもので、五蔵は皆胃気を得てはじめて通利する。
故に清竅が失養すれば頭昏、頭痛、耳鳴、鼻塞等が起こる。

母の食欲不振、腹脹、頭痛、頻尿、不眠などは皆九竅の異変と考える事が出来る。
もし原因が清陽不昇であるならば、全ての疑問がスーッと解消するような気がする。

併せて李士懋教授の病例分析も付いている。

病例分析:

1.脾虚不升胃[月完]脹満案
劉成虎: 男      22歳
初診時間 2007年7月10日
納谷不馨 胃脹 便稀不爽 頭昏不清 上午重 脈弦濡寸沈 舌質淡紅歯痕苔白

 陳皮・黄連9 羌活・防風・柴胡7 白朮・半夏・白芍10  茯苓・沢瀉・生黄耆・党参12 甘松8  14剤愈。

[臨証体会]:
“脾胃者,倉廩之官,五味出焉”,脾胃虚則納谷不馨。
脾胃虚弱清陽不升而下利,濁陰不降則胃[月完]脹満。
《陰陽応象大論》曰:“清気在下,則生[夕食]泄;濁気在上,則生(月真)脹。”
上午乃陽気生発之時,今脾虚清陽不升故見頭昏不清,上午重,后又因頚項酸楚找我(因此人乃我同学)又予原方加葛根愈。

2.脾虚不升胸陽不振案
張貴軍:男     37歳
初診時間 2007年5月28日
胸悶 頭疼 大便不爽 小便不暢 肩臂痛 脈弦緩滑 舌偏紅苔膩灰

方予升陽益胃湯加減:
 陳皮・半夏・白朮・白芍10 防風・羌活・柴胡8 党参・生黄耆・茯苓・沢瀉12 黄連9 焦三仙・鶏内金15

[臨証体会]:
胸悶胸疼之病多从心治之。然脾胃有疾亦可引起。
《湿熱病篇》曰:“陽明之表肌肉也胸中也。”
胸中乃大気所在,大気者虚弱土不生金,肺衛失養則洒淅悪寒。
然此悪寒并非表症之悪寒,乃由脾胃内傷中気不足,衛陽不能顧護于外則洒淅悪寒。
経曰:“衛気者,所以温分肉,充皮膚,肥[月奏]理,司開闔者也。”《脾胃論》明確提出

3.脾虚不升痰阻失眠案
梁聯書:男   50歳
初診時間 2007年7月10日
寐差可睡四五个小時 梦多 胸[月完]満 不欲食 悪心便秘 脈弦濡 舌淡紅苔薄膩

脾虚肝鬱湿困升降失司,擬健脾化湿升清。
方宗升陽益胃湯:
 陳皮・黄連9 羌活・柴胡・防風7 白芍10 半夏18 茯苓・沢瀉15 白朮・生黄耆・党参12 干姜5 鬱李仁・夜交藤30  14剤

薬后悪心止,胸不悶食寐可,便已不干,尚[月完]痞,脈弦濡寸弱。

上方加生麦芽15克 鶏内金15克 升麻6克 14剤愈

[臨証体会]:
“胃不和則臥不安”,脾胃乃陰陽升降之枢紐,正常情況下心火下降,腎水上承,陰陽相交,則可成寐。
《営衛生会篇》曰:“陽入于陰則寐。”今脾虚湿困,陰陽交通之道路不暢,故而不寐。
故方中取重用半夏化其痰濁交通陰陽,重者半夏還可用至30—50克。
清陽不升濁気不降則胃[月完]脹満、悪心、便秘,故以升陽除湿,挙其陽則濁気自降矣。

4.脾虚不升清竅失養案
馬鳳秀:女  53歳
初診時間 2007年5月25日
頭痛三四年右著 醒后出汗 稍累則出
汗三四年 口干 食差 左下腹痛 便稀一日三四次 寐則腿煩无力 西診為結腸炎脈濡滑 舌質暗苔白

方宗升陽益胃湯加減:
 陳皮・黄連9 茯苓15 羌活・独活・防風・柴胡8 白朮・半夏・白芍10 沢瀉・生黄耆・党参12 干姜5 木香6   7剤

薬后頭痛飲食睡眠好転,累后汗出減少,又于上方加浮小麦30克 生竜牡20克 蒲黄10克 五霊脂12克  連服十四剤諸症減。

[臨証体会]:
頭乃清竅必頼于清陽充養,今脾虚夾湿清陽不能上達,清竅失養,故可見頭痛。
《通評虚実論》曰:“頭痛耳鳴,九竅不利,腸胃之所生也。”脾虚肝鬱不疏而左下腹痛,脾虚清陽不升則下利,
《陰陽応象大論》曰:“清気在下,則生[夕食]泄。”

評語:
田淑宵:文中用于脾虚不升痰阻失眠,及脾虚之頭痛,実為罕見。

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