最新の『中医臨床』v31-1 に《悪性腫瘍とその転移を「痰」の角度から論治する》という論文が載っていて、そこに「複法大方」という言葉が出てきます。もっと詳しく知りたく net から次の様に学びました。
複法大方
論文精選 論複法大方在治療悪性腫瘤中的運用
発表者:張成銘
周仲瑛教授の指導では中晩期の悪性腫瘤の治療に複法大方を用いると良いそうだ。
1 複法大方の歴史
複法大方とは疾病が複雑な病機の時に,数種の治法を組み合わせて運用するもので,処方の薬味数は非常に多くなる。
例えば治法は一般に3 ~ 4種以上で,処方の薬味数は15味以上から,多いときは20~30味に達する。
複法大方は七方の一つで,その学術思想は《内経》から始まっている。
《素問·至真要大論》に “……奇之不去則偶之,是謂重方”とあるのは、奇方(小方のこと)で治せなければ,偶方(複数の方)を用いる。これを重方(大方のこと)という、とある。
また複法大方を実践し始めたのは仲景であり、瘧母という癌に近いものを治す鼈甲煎丸《金匱要略》では薬味を23種 使っている。
(灸鼈甲、炒烏扇、黄岑、柴胡、鼠婦、干姜、大黄、芍薬、桂枝、亭歴子、石葦、厚朴、牡丹皮、瞿麦、 紫威、半夏、人参、炒蟅虫、阿膠珠、灸蜂房、赤硝、炒[虫羌]螂、桃仁)
全方は寒熱を并用し,攻補を兼施し,行気化淤,除痰消癥を可能にしている。
其の后たとえば防風通聖散(《宣明論方》),調営飲(《証治凖縄》),大活絡丹(《蘭台軌範》)等へと発展した。
古代においては複法大方は急、慢性の危重病人の救急治療に常用されたもので,丸薬や散剤として供された。
というのも古代の医家が出会う病種は多く,薬物はそれら全てに対応しておらなければならなかったからです。
だからよっぽど辯証論治の方法に熟練しておらなければ,良い療効を得ることは出来ません。
そのため歴史上多くの著名医家たちは大方の濫用に反対しました。
そして反対の方法として用薬は軽霊にして,小方で治病する事を提倡し,複法大方は次第に冷落していったのです。
(この警告からいって当今、防風通聖散を軽々に濫用しているのは要注意ですね。)
しかし近年,難病の治療研究の中で,常法ではどうにもならない情況に出会い,複法大方が重視され始めました。
たとえば当代の名老中医である嶽美中、裘沛然、喬保鈞らは類似の経験から,病情が非常に複雑な疾病に対して,多くの薬物組成をもった大方による治療で,良い効果を得ています。
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