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沢瀉湯

劉渡舟談 沢瀉湯証

沢瀉湯は《金匱--痰飲咳嗽篇》にあり、この方は心下に支飲ありて,頭目冒眩に苦しむのを治療する。
“支飲”とは四飲中の一種で,名前から推察するに,水のひとつで,木に枝があるように,心下に横たわるようにして,結ぼれて散じないもの故に支飲という。
支飲の治法は多いが,なかでも沢瀉湯の証は,支飲の邪が頭目を上犯するので,冒眩の症状を現すのが特徴である。この外に,支飲そのものに独立的証侯としてあるのは,《金匱》記載の:“咳逆倚息,気短不得臥,其形如”,が是である。
沢瀉湯の証を確認するに際しては両方面の証侯:一つは“飲”本身の証侯,二つは“冒眩に苦しむ”という証侯,を確認しなければならない。
沢瀉湯証の“苦冒眩”とは,言語に絶する程 苦しいものである。
普通の頭目眩暈症状とは異なって,この種の冒眩の脈象は弦か沈,或いは沈弦双方が現れる。
これは弦脈が飲を主り,沈脈が水を主るからである。
色診:或いは黎黒,或いは青黯,或いは色黄にして晦暗,人により異る。
舌診:一般に水飲病の舌色は必ず淡である,それは寒だからである;
苔は多くは水滑である,それは津液が凝聚しているからである;
もし水湿が合邪なら白膩苔で,厚くなければならない。
また沢瀉湯証の舌体は,特別に肥大である。
質は厚く寛く,口腔一杯を占めるから一目瞭然である。

1976年 湖北省潜江県に居た時,ある朱姓の患者,男,50歳を治した事がある。
患病は已に二年間,病気のため退職して百般の治療を受けていたが無効だった。
病いというのは,頭目冒眩して,終日昏昏沈沈と,雲霧の中に居るようだ。
且つ両目は開けられず,両手は顫え,筆で字が書けない。
脈を切すると弦軟,舌は異常なほど肥大し,苔は白滑,根部は膩である。

辨証:此の証は沢瀉湯の冒眩証である。
心下に支飲があるため,心陽が遮られて,頭まで上ることが出来ないので,頭冒目眩する;
正虚にして飲あり,陽が筋脈に行きわたらず,両手は発顫する,陽気が遮られて,飲邪が上冒するので,精神は振わず,眼が開けられない。
舌大脈弦は支飲の象に他ならない。

治法:滲利飲邪,兼崇脾気。

方薬:沢瀉24克、白朮12克。

後で患者が服薬した時の状況を聞いた話では、彼は第一煎を服してみて,何の反応も現れないので,家属にいった:此の方薬は僅か二味しかない,こんなものでは効くはずが無いじゃないか。
ところが第二煎を服した后,まだ飲み終えない内に,全身と前胸および后背から漐漐と汗が出始めた。
汗を拭くと粘ばねばした感じがしたが身体は爽やかで,頭目は清亮となり,目眩はとみに減った。
さらに両剤を服すと,続いて又少しく汗が出た,これでもうこの病は治ったようなものである。

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夏負けの漢方薬

“夏負け”のことを中医学では[病<主-丙]夏又は苦夏という。
夏負けの症状は「心臓がたいそう(胸悶)」「食欲が無い」「体がだるい」「下痢気味」「微熱があり嗜睡」「自汗が出る」等で、次第に消痩するが検査してもあまり病変は見つからない。
秋季が来て天気が凉爽ともなれば,これらの症状は自然に消失する。

その原因は,人体の気候変化、特に夏季の炎熱・潮湿に対する適応能力が低いことです。
そのために大脳と神経系統が抑制され,心肺機能が低下し,胃腸の消化液分泌が減少し,食物が消化吸収されにくくなり,営養が缺乏する。

治療法としては「芳香醒脾,辟穢化湿」になります。
「芳香醒脾」とは霍香、薄荷、佩蘭、竹葉などの気味が芳香な中薬材により、脾胃から湿熱を取り去る事です。

夏負けになりやすい人は,秋冬の季節に補肺健脾益気の処方を飲んでいると良い。
すでに夏負けになっているなら,霍香正気散が良い。
此の外にも,[霍香、佩蘭3,滑石、焦大麦10,甘草1],を水煎してお茶代わりに飲むと良い。

夏の熱気は心気を傷つけ易く、心率が速くなる。
そういう時には,緑豆湯を飲んで,心臓病の誘発を防がねばならない。(※王氏の清暑益気湯ならなお良い)

もしそんな時間が無ければ,西洋参3、麦冬5を水に入れて飲むだけでも良い。

また別の方法としては,[甘草3,五味子3,知母6,元参6,党参9,麦冬9],を水煎温服すると良い。

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清暑益気湯

酷暑盛夏に対して中医ではどんな方法を用いるのか?
有名な処方に清暑益気湯というのがあります。
これには二種類があります。
ひとつは金元四大家の李東垣のもので、暑月の湿熱が気を傷つけたか、或いは脾気が元々虚していて,そこへ湿熱の病邪を感じた場合の常用方です。
(日本では専らこちらが有名です。)

これに対して清代の王孟英は《温熱経緯·湿熱篇》の中で,「此の方は“清暑”の名を付けているけれども,清暑の実効が無い。」といって、自分で創作したものがもうひとつのものです。
此の方は后世の医家には重視されています。
現代の臨床応用からいっても,王氏の清暑益気湯は応用機会が非常に多いものです。
(熱中病で救急車で運ばれるような人達にはこちらの方です。点滴や輸液も良いですが、これを使えば効果抜群だよ!)

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IgA腎症と中医学4

IgA腎症の治療法

1. 清熱凉血:
IgA腎炎で外感風熱の者は,悪寒が軽く発熱が重い,咽干咽痛し,或いは咳嗽あり,或いは鼻塞口渇喜飲あり,肉眼は潜血し,舌紅苔薄,脈象浮数を現わす。
宜しく疏風宣散・清熱凉血すべく,
方は銀蒲玄麦甘桔湯を用いる。

(銀花、蒲公英、玄参、麦冬、生甘草、桔梗);

心経の熱盛者は,心胸煩熱,口舌生瘡,口渇喜飲,肉眼潜血,排尿の時に少し灼熱感があり,舌紅苔薄,脈象細数を現わす。
宜しく清心養陰・清熱凉血すべく,
方は導赤散加味を用いる。

(生地、淡竹葉、滑石、甘草梢、通草、茜草、黄岑、益母草、白茅根);

肝経の火旺者は,頭痛し目赤く,脇が痛くて口が苦い,煩躁して怒り易く,肉眼潜血,尿赤く便秘,舌紅苔薄黄,脈象弦大を現わす。
宜しく清肝瀉火・清熱凉血すべく,
方は加減竜胆瀉肝湯を用いる。

(竜胆草、黄岑、梔子、生地、沢瀉、車前子、滑石、生甘草、茜草、益母草、白茅根)

 2. 滋腎清利:
陰虚内熱で,迫血妄行すれば,腰は酸痛し,手足の中心が熱く,咽干,渇して凉飲を喜び,便秘し尿赤く,舌紅で少苔,脈象細数を現わす。
治は滋腎清利に宜しく,
方は知柏地黄湯加味を用いる。

(知母、黄柏、生地、山萸肉、山薬、丹皮、茯苓、沢瀉、茜草、大小薊、石韋、益母草、白茅根)

3. 益気健脾:
脾虚気弱で,気が摂血する事が出来ない者は,宜しく健脾益気すべく,
方は補中益気湯加味を用いる。

(党参、生黄耆、白朮、当帰、甘草、陳皮、升麻、柴胡、劉寄奴)

4. 活血化淤:
一般に潜血があれば淤血ありと考える。
もし淤血の象がはっきりしない者には,一般に清熱凉血・滋陰清利の方中に凉血活血の薬物を加えれば,潜血は消失する。
淤血の象が明らかな者は,活血化淤の治法で,血府逐淤湯加減を用いる。

(柴胡、枳実、赤芍、甘草、当帰、川弓、生地、桃仁、紅花、牛膝、生側柏葉、馬鞭草、益母草、白茅根)

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IgA腎症と中医学3

IgA腎症の慢性期の証型:

 (1) 陰虚内熱型
多くは臨床症状がはっきりしない者で,腰部酸痛,咽干,渇して凉飲を喜び,手足の中心が熱く,尿赤く便が干き,舌紅少苔,脈が細数の症を現す。
治は滋腎清利に宜く,方は知柏地黄湯加味 或いは小薊飲子等の加減を用いる。

(知母、黄柏、生地、山萸肉、女貞子、旱蓮草、丹皮、白花蛇舌草、生側柏葉、大薊、小薊、益母草、白茅根、石葦)

 (2) 気陰両虚型:血尿・蛋白尿が久しく,乏力が明顕で,口干,舌淡,脈細弱の症を現す。
治は益気養陰・活血止血に宜く,方は参耆地黄湯 或いは大補元煎の加減を用いる。

(太子参、黄耆、熟地、山薬、杜仲、枸杞、山萸肉、当帰、丹皮、沢瀉、甘草)。

 (3) 気虚不摂型:多くは蛋白尿を主として久しく愈えざる者,
方は補中益気湯・五子衍宗丸の加減を用いる。

(党参、生黄耆、白朮、当帰、陳皮、升麻、柴胡、甘草、覆盆子、金桜子、枸杞、欠実)

 (4) 陰陽倶虚,水淤互結型:少尿で水腫を伴うのが特徴,
補陰助陽・利水化淤が基本治則である。

(制附片、肉桂、熟地、山萸肉、山薬、当帰、川弓、赤芍、地竜、丹参、川牛膝、茯苓、生側柏葉)

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IgA腎症と中医学2

IgA腎症の鑑別法

一:外感の有無は?
IgA腎炎は外感の誘発に因って,急性発作階段では,尿血・腰痛等の腎病の症状の外に,発熱・怕冷・咽喉の腫痛等の外感風熱的症状があります。
緩解期では外感表現は無く,僅かに陰虚火旺・気不摂血・淤血阻絡による尿血等の症があるだけです。

二:淤血の有無は?
IgA腎炎の病歴は長く,容易に反復発作があり,久病入絡する。
従って血熱搏結,淤阻下焦,血不帰経が本病に見られる。
伴見されるのは腰腹刺痛・舌質紫暗で淤斑や淤点、脈が細渋等の症です。

三:熱血の有無は?
証中で熱が有るか無いかを辨ずる事は重要な意義がある。
熱邪は容易に血絡を傷つけ,出血させる。
熱には内熱と外熱の別があり,虚熱と実熱の分がある。
外熱とは体温升高の外に,風熱客表という表現を伴う。
内熱とは体温升高が無いか,あっても僅かで,口干・煩躁・尿赤・舌紅苔黄等の症を伴う。
虚熱の主要な責は腎にあり,腎陰虧虚や,陰虚内熱である。
実熱の主要な責は心にあり,心火独亢や,熱を小腸に移す結果,心煩失眠・口舌生瘡等の症を伴見する。
無熱の主要な責は脾にあり,脾気虧虚,気虚で摂血が不能となり,血は経に帰らず,脈外に溢れるために,疲乏無力・少気懶言・面色萎黄等の症を伴見する。

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IgA腎症と中医学1

IgA腎症の説明

学校検尿および職域検尿で蛋白尿または血尿で発見され、初期は無症状です。進行すると腎機能が低下して、腎不全の症状が出ます。疲れやすい。食欲低下。息切れ。夜間に尿量が多い、などです。

中医の治療原則

中医では,IgA腎炎の主要な病因は素体の陰虚・気虚か或いは気陰両虚,又は外邪(風湿熱毒)の侵襲に逢ったか、労累過度だったか、飲食不節だったか及び治療が不当だったか等と考えています。

病気が長引いて久病入絡になると、淤・熱は交阻し,日久しくなれば傷陰するし,陰虚夾淤ともなる。
虚火上炎ともなれば,腎絡は受損し,腰酸(だるく)尿血は纒綿として愈え難い。
日久しくなれば気陰両虚に淤滞を挾み,虚労の症が次第に現れてくる。

特に強調しなければならないのは、整体調理・辯証論治の事である。
中医では,腎病の病変部位は腎ではあるが,他の五臓六腑とも密切に相関しているものと考えている。
だから腎のみに限らず,頭が痛ければ頭も治すし,脚が痛ければ脚も医すという標治療法も取る。
これは整体調理の立場から、扶正去邪・標本兼治・補瀉結合等の多様な治療原則である。

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悪性リンパ腫2

鄒雪君の悪性淋巴瘤 治案

 朱某,男,52歳。
1982年初めに両側頚項部に腫れが現れた。
市の腫瘤医院で検査し,病理報告では悪性淋巴瘤だった。
体力が無かったので化療を中断した。
前後五ヶ月間 数ヶ所の医院で治療を受けたが腫塊は変わらず、ついに我院へ治を求めに来た。

診:右側頚項部に4.5厘米×3厘米×2厘米の腫物が一塊あり,左側頚項部には2個の腫塊がある。
体積は約7厘米×4厘米×2.5厘米で、按ずると硬く,疼痛は無い。
躯体の他の部位にはまだ淋巴結腫大は及んでいない。
形体は虚胖、面色は萎黄、精神は疲憊しており、食欲不振、脈は細滑,苔は厚膩。

脾気虚弱・痰湿凝聚と辨証される。
治療は益気健脾・化痰消腫とし,方は補中益気湯合消瘰丸加減を用いる。

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漢方薬はいつ飲んだら良いか?

化学薬品はその刺激性を緩和するために、一般には食物と混ざるように「食後30分」を指定しています。
しかし概して刺激性の少ない漢方薬は、原則として「食前または食間の胃が空の時」の服用です。

これは食後だと食べた物と薬が混ざって薬の吸収に時間がかかるからです。
空っぽの胃袋で早く吸収させたいという意味です。

しかし例外の特別な場合があります。
それは脾胃気虚の場合です。
消化力の乏しい人が空腹時に薬を飲むと、それだけで腹がふくれて食欲が無くなる事があります。
それでは何にもなりません。

脾胃気虚の人は反対に「食後または食間で、まだ食物が胃にある時」に服用した方が良いのです。
これを《穀気を借りる》といいます。

胃に食べ物や果物が入るとそれだけで気力が出てきます。
その気力を借りて脾気や胃気を上昇させたいのです。
処方には下陥した気を上げるために昇提作用のある薬を使います。
薬と穀気の両方でより多くの昇提効果を得ようとするのです。

その具体例が「升陽益胃湯」に出ています。

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悪性リンパ腫

淋巴癌は中医学では“悪核”“虚労”の範囲である。
病型は次のように分類される。

1. 痰熱蘊結
  主方:連翹消毒飲加減
    薬物:玄参、連翹、葛根、天花粉、夏枯草、猫爪草、蚤休、黄岑、赤芍、梔子、山豆根、甘草等。

2.気鬱痰結(含気滞痰結)
  主方:柴胡疏肝散合消瘰丸加減
    薬物:生牡蛎、玄参、夏枯草、猫爪草、柴胡、白芍、枳殻、香附、鬱金、浙貝母、炙甘草。

3.脾虚痰湿
  主方:六君子湯加減
    薬物:党参、白朮、茯苓、陳皮、半夏、甘草、猫爪草、露蜂房。

4.気血両虚
  主方:八珍湯加減
    薬物:党参、熟地、鶏血藤,猫爪草、夏枯草,白朮、茯苓、当帰、白芍、川弓、炙甘草。

5.肝腎陰虚(含陰虚火旺)
  主方:知柏地黄丸合二至丸加減
    薬物:生地、生牡蛎、山萸肉、淮山薬、女貞子、旱蓮草、昆布,茯苓、沢瀉、牡丹皮、知母、黄柏。

最も多いのは 5.肝腎陰虚 である。
この場合の病機は肝腎虧虚が「本」で,痰濁淤毒が「標」である。
故に治療は「調補肝腎」を本とし,「化痰解毒活血」を標とする。

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肺癌が脳へ転移した場合

肺癌が脳へ転移した場合、漢方(中医中薬)ではどんな治療をするのだろうか?

1. 脳への転移を防ぐために原発巣の弁証治療は以下の五型分類に従う。

(1)脾虚痰湿型
 肺癌主方+健脾化湿薬(白朮15g、茯苓15g、制半夏10g、陳皮10g、意苡仁15g、牡蛎30g、象貝母15g)

(2)気陰両虚型
 肺癌主方+益気養陰薬(沙参30g、麦冬15g、白花蛇舌草30g、桑白皮15g、生地15g、夏枯草30g等。
如し痰中帯血,加仙鶴草15g,小薊炭15g,阿膠10g)

(3)気滞血淤型
 肺癌主方+活血化淤薬(当帰15g、生地15g、桃仁10g、丹参15g、赤芍15g、枳殻10g、鬱金10g、川楝子10g)

(4)熱毒熾盛型
     方薬:白虎承気湯加減
   薬用:生石膏30g,知母10g,大黄10g,黄連10g,魚腥草30g,蒲公英15g,仙鶴草15g,生瓜呂10g,黄岑10g

(5)気血両虧型
 肺癌主方+益気養血薬(当帰9g、補骨脂15g、炒白術12g、鹿角片12g、大熟地20g、大砂仁30g、紫河車12g、枸杞子15g、鶏血藤20g、阿膠10g)

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