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アレルギー性鼻炎(花粉症)と漢方

ブログの全目次」を見ると これまでに花粉症について六回も書いています。
それは皆「花粉症は水洟が出るからといっても寒症ではない」という事を云いたかったからです。
世にはびこる「花粉症には小青龍湯を」という通説をひっくり返したかったからです。
この度は中国のネットから更に新しい知見を得ましたので紹介します。

過敏性鼻炎の清熱治療
発表時間:2010-01-09発表者:李凡成

《中西医結合耳鼻喉科学》(田道法主編,中国中医薬出版社,2001)には:
“鼻[鼻九]の発生は,内因の素体の虚寒,すなわち肺虚不固及び脾腎陽虚と,外因の風寒の異気(アレルゲン)入侵による。病機を表現すれば肺気虚弱、衛表不固,肺脾気虚、水湿汎鼻,腎気虧虚,肺失温煦等が特徴である。”
此の類の患者は往々にして突発性鼻癢、噴嚏陣作,清涕如注,鼻粘膜蒼白或いは紫暗をを表現し,形寒肢凉,手足不温,小便清長,夜尿多,容易感冒,舌淡,脈虚弱等を伴い,臨床上多くは温陽、益気、補脾から着手し,玉屏風散、桂枝湯、附桂八味湯等を用いて治療する。
中医高校第三版教材《五官科学》、第四、五、六版教材《中医耳鼻喉科学》,及び中西医結合耳鼻喉科学教材でも,皆このようになっている。

しかし過敏性鼻炎でも,同じ突発性鼻癢、噴嚏陣作,清涕注ぐが如きでも,却って口苦咽干があり,小便黄を伴い,舌質偏紅,舌苔或いは微黄となり,脈に数象を兼ねるものがある。
これらには温陽益気の剤を用いても往々無効である。

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先賢の所論を尋ねると,歴代の医家に鼻[鼻九]、清涕の症を熱因より立論する者がある。
たとえば《素問·痺論》に説く:“胞痺は,少腹膀胱を押さえると内痛し,排尿しようとすると湯のように熱く,渋って小便しにくくなるもので,これは上っては清涕となる。”
姚止庵の注では:“少腹膀胱これを按ずると内痛し,若し注げば湯のようなのは,火である,火盛んなる故に按ずることが出来ない。膀胱は津液の器であり,熱すれば 癃 となり,小便は渋る。小便が渋って火が下行できなければ,反って上って脳を灼き清涕となって,鼻竅より出る。”
張[王奇]の注では:“湿熱が鬱結して,水道が不利となれば,寒水の気は下行できずに,脳へ上り清涕となって出る。”
《素問玄機原病式·六気》では“[鼻九]”、“嚏”に対して均しく火熱の病機より認識して,次のように指摘している:“[鼻九]とは,鼻より清涕を出す也。……或いは[鼻九]は肺寒なりと言うのは,誤り也。”
又説く:“嚏とは,鼻中が癢くて気が噴作する声也。鼻は肺竅にして,癢とは火の化なり,心火の邪熱が陽明を犯すと,鼻癢と嚏を発する也。”

上述の医論を根拠として,筆者(李凡成)は“清熱止嚏湯”をこしらえて鼻[鼻九]を治療したら,臨床で頗る効果があった。

組成:葛根、赤芍、牡丹皮、生地黄、紫草各15g,黄岑、知母各10g,黄柏6g,沢瀉12g,紅花6g,肉桂1g(呑服),細辛3g。

此の方は胞痺と陽明鬱熱(火)より立論したものである。
胞痺とは,膀胱の気化不良で,小便不利,鬱して熱と化し(膀胱蓄熱),太陽の気が下で痺となり,循経して上升できないと,上では清涕となる也。
故に方中では滋腎通関丸の肉桂の温陽化気を取り,知母、黄柏、沢瀉の助けで膀胱を清利し,熱邪を下へと導く,いわゆる上病下治の法である;
鼻は肺と陽明に属する,故に葛根、黄岑で清肺して陽明の鬱熱を取る;
陽明は多気多血の経なので,陽明に鬱熱があると気血は鬱滞する,故に牡丹皮、赤芍薬、生地黄、紫草、紅花を取りて清熱凉血と化淤を図れば,抗アレルギー反応の効能にもなる;
細辛は辛散で,寒温を調節し,鬱熱を発散し,[示去]風止嚏の効果がある。
全方を合用すれば,清熱利水,凉血化淤,[示去]風止嚏の効を奏する。

例:
周某,男,36歳,6月28初診。
陣発性の鼻癢、噴嚏、清涕注ぐが如きこと両年余,主に早晩だが,日中でもなり,口苦咽干を伴い,小便黄を訴えた。
検査では鼻甲は紅腫し,鼻道は干浄である;咽部は暗紅で,小瘰の増生がある。
舌は偏紅にして少津,脈は洪緩である。
鼻[鼻九]、慢喉痺と診断され,鬱熱上干の証に属する。
清熱利竅を以て治療法とする,

薬用 葛根15g,升麻10g,甘草6g,赤芍15g,黄柏6g,知母10g,肉桂1g,紅花6g,紫草10g,生地15g,細辛3g,沢瀉10g。
7剤,毎天1剤,水煎,分二次服。

7月5日復診:薬后明らかに好転し,発作の次数が減り,症状は減軽し,口苦咽干は消失し,小便は清となった。
まだ時には鼻塞があり,風に当たると重くなる。
左鼻甲が略大きく,舌は淡紅で少津,脈は洪緩である。
陽明を清利し,益気固表を図る:

 葛根15g,升麻6g,甘草6g,赤芍15g ,黄岑12g,桑白皮12g,木通6g,黄耆20g,白朮10g,西洋参8g,白止10g,当帰10g。
続服すること7剤。

8月8日三診:薬后に症状が消失していたが,8月2日の早朝には軽微ながら,鼻[鼻九]の症が再発した。
二便は調い,舌は淡紅,脈は洪緩であるので,なお7月5日の方を,7剤出して収効とした。

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清熱止嚏湯についての専著《現代中西医結合実用眼耳鼻咽喉口腔科手冊》(李凡成、翦新春主編,湖南科学技術出版社,2001), 《中西医結合耳鼻咽喉科学》(李凡成、徐紹勤主編,人民衛生出版社,2001)、 《高等中医薬院成人教育教材中医耳鼻喉科学》(李凡成主編,湖南科学技術出版社,2003)、 《実用五官科手冊》(李凡成、李元聡、謝立科主編,人民軍医出版社)。

全文発表于《湖南中医薬大学学報》2006年第6期P48

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