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肝臓癌と漢方

中医学の辨証論治

1. 虚実を辨ずる。

患者は本虚標実である。
本虚とは乏力倦怠,形体逐漸に消痩し,面色は萎黄となり,気短(息切れ)懶言(声に力がない)等を表わす。
右脇部に堅硬な腫塊があり按ずることを拒む,悪化すると黄疸を伴い、胃腹は脹満して悶え、腹脹(腹水)等を表わすのが標実の証である。

2. 危候を辨ずる。

晩期には昏迷、吐血、便血、胸腹水等の危候を見逃してはならない。

治療原則
肝癌患者は気血虧虚をとなし,気血湿熱淤毒の互結をとなし、虚実錯雑的病機を特徴とする。
だから扶正去邪,標本兼治で,肝の疏泄功能を恢復させれば,気血の運行は流暢となり,湿熱淤毒の邪は出路を見出し,減軽和緩となり病情を解することが出来る。
治標の法には疏肝理気、活血化淤、清熱利湿、瀉火解毒、消積散結等の法を常用し,なかでも最も疏肝理気を重視すべきである。
治本の法には健脾益気、養血柔肝、滋補陰液等の法を常用する。

病程により、患者の全身状況から“正”と“邪”を慮り,“攻”と“補”を結合し,実を治しつつ虚を忘れず,虚を補いつつも実を忘れてはならない。
また攻伐の薬は多過ぎてはならない。
多過ぎると たとえ一時の快を得るとも,必ず耗気傷正して,最終的には正虚邪盛となり,病情が加重する。
辨証論治の基礎の上で抗肝癌作用のある中草薬を選び,治療を的確にしなければならない。

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分証論治

1 肝気鬱結
症状:右脇部が脹痛し,右脇下に腫塊あり,胸悶不舒,善く太息し,納呆食少(食欲不振),時に腹瀉あり,月経不調,舌苔薄膩,脈弦。
治法:疏肝健脾,活血化淤
方薬:柴胡疏肝散
  柴胡、枳殻、香附、陳皮、川弓、白芍、甘草

疼痛者,可加鬱金、延胡索
脇下に腫塊ある者は,加莪朮、桃仁、半夏、浙貝母
納呆食少者,加党参、白朮、意苡仁、神曲

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肝鬱脾虚
主証:脇痛と腹脹あり,食少く大便は溏となり,形体は消痩し,下肢が浮腫み腹水あり,舌は淡胖で苔が白膩,脈は弦滑或いは滑。
治法:疏肝解鬱,益気健脾
方薬:逍遥散《和剤局方》合 参苓白朮散《和剤局方》加減
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2 気滞血淤
症状:右脇の疼痛が劇しく,錐で刺す如く,夜が更に甚しい,甚しければ痛みは肩背に引く,右脇下の結塊は大きくなり,質は硬く按ずるを拒む,或いは同時に左脇下にも腫塊あり,面色は萎黄で黯く,倦怠乏力,胃腹は脹満し,甚しければ腹脹大となり,その皮色は蒼黄を呈し,脈絡が暴露し,食欲は不振となり,大便は溏結不調となり,月経も不調となり,舌質は紫暗で淤点淤斑があり,脈は弦渋である。
治法:行気活血,化淤消積
方薬:復元活血湯
  桃仁、紅花、大黄、天花粉、当帰、柴胡、穿山甲、甘草

また 三稜、莪朮、延胡索、鬱金、水蛭、庶虫 等を酌加して活血定痛,化淤消積の力を増強する。
或いは鼈甲煎丸或いは大黄庶虫丸を配用して,消癥化積を図る。
若し転じて鼓脹して腹脹大,皮色蒼黄,脈絡暴露となれば,甘遂、大戟、蕪花を加えて水飲を攻逐するか,或いは調営飲に改めて活血化淤,行気利水する。

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気滞血淤
主証:脇下に痞塊が堅満で,推しても動かず,按ずるを拒む。
脇脹が加重すると,夜に悪化し,腹部には青筋が暴露し,背へと放射する。
倦怠無力となり,納呆少食(食欲不振),噫気やシャックリをし,便結或いは便溏となる。
舌質は正常か或いは黯く,辺に淤斑があり,苔は薄或いは薄黄で,脈は沈或いは弦細或いは渋である。
治法:理気舒肝,散血消癥
方薬:柴胡疏肝散《景嶽全書》合 金鈴子散《素問病機気宜保命集》加減
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3 湿熱聚毒
症状:右脇が疼痛し,甚しければ肩背に引いて痛み,右脇部に結塊あり,身体と目が黄色く,口は干き苦い,心煩して怒り易く,食少く油を厭う,腹は脹満して,便干き溲が赤い,舌質は紅く,苔は黄膩で,脈は弦滑或いは滑数である。
治法:清熱利胆,瀉火解毒
方薬:茵陳蒿湯
  茵陳、梔子、大黄

白花蛇舌草、黄岑、蒲公英を常に加え清熱瀉火解毒を図る。
疼痛が明らかなら,柴胡、香附、延胡索を加え疏肝理気,活血止痛を図る。

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肝胆湿熱
主証:右脇が疼痛し,心煩して怒り易く,食少く悪心あり,身目ともに黄色く,時に発熱あり,口干と口苦があり,腹部は脹満し,便干き溲は赤く,舌質は紅く,苔は黄膩で,脈は弦滑数である。
治法:清肝利湿,消腫解結
方薬:茵陳蒿湯《傷寒論》或いは茵陳四逆湯《張氏医通》加減
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4 肝陰虧虚
症状:脇肋が疼痛し,脇下に結塊あり,質は硬く按ずるを拒む,五心は煩熱し,潮熱盗汗,頭昏目眩,納差食少(食欲不振),腹は脹大し,甚しければ嘔血、便血、皮下出血がある,舌は紅く苔なく,脈は細数である。
治法:養血柔肝,凉血解毒
方薬:一貫煎
  生地、当帰、枸杞、沙参、麦冬、川棟子

出血すれば,仙鶴草、白茅根、牡丹皮を加え清熱凉血止血する。
黄疸が現われれば,茵陳蒿湯を合せて清熱利胆退黄を図る。
肝陰虚が久しく,腎陰に累及し,陰虚症状が突出すれば,生鼈甲、生亀板、女貞子、旱蓮草を加えて滋腎陰,清虚熱を図る。
腎陰虚が久しくなると陰損が陽に及び腎の陰陽両虚を現す。
臨床では形寒怯冷、腹脹大、水腫、腰酸膝軟等の症となる。
金匱腎気丸を主方として腎陽を温補しなければならない。

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肝腎陰虚
主証:面色は晦黯く,腹大にして脹満し,形体は羸痩し,腰膝は酸軟し,耳鳴と目眩,盗汗と微熱,口干き舌燥,皮下に紫癜あり,甚しければ便血、嘔血し、小便は短赤となり、舌紅く苔なし,脈は小弦細数である。
治法:滋陰柔肝,軟堅消結
方薬:一貫煎《柳州医話》、加減復脈湯《温病条辨》加減
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辨証論治の基礎に立って、一定の抗肝癌作用のある中草薬,如えば清熱解毒類の白花蛇舌草、半枝蓮、半辺蓮、拳参、蛇莓、馬鞭草、鳳尾草、紫草、苦参、蒲公英、重楼、野菊花、腫節風、夏枯草等や
活血化淤類の大薊、拔契、鬼箭羽、地鼈虫(庶虫)、虎杖、丹参、三稜、水紅花子、水蛭等や
軟堅散結類の海藻、夏枯草、牡蛎等を選用してもよい。

中医辨証論治 対付肝癌     (発布時間:2010-7-17  )

中医辨証施治治療肝癌   (発布時間:2010-7-20 )

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