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アトピー性皮膚炎・伏邪説

アトピー性皮膚炎」に於いて茵陳蒿の存在に着目しました。
そして 汪受傳氏の二診:健脾利湿法の処方を採用して幾人かに試して一過性に良効を得ましたが、何故か再び悪化する例が続きました。
アトピーの湿熱を去るには、茵陳蒿のように軽くて発散性のある薬味が必要ではないかとかねて考えていましたが、この体験で壁にぶつかりました。
茵陳蒿に代わるものは無いかと探している内に青蒿に思い至りました。
青蒿は茵陳蒿とよく似て、軽くて発散性があり、利胆作用もあり、しかも芳香性で透邪の力があります。
青蒿とアトピーで検索をかけて青蒿鼈甲湯という結果に到達しました。

青蒿鼈甲湯は瘧疾(マラリヤ)や骨蒸潮熱(結核)や黄疸などの“伏邪”に対するものです。
そこではたと閃いたのは「アトピーの原因は“伏邪”ではないか」という思いつきでした。

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1. 伏邪とは何か?
漢方では人体の(体表)と(体内の臓腑)の中間にある半表半裏の部位を重要な病理的位置と考えています。
その一部で、現代で云えば胸膜と横隔膜の間の部位を特に膜原(または募原)といいます。
病い膏肓(こうこう)に入る」といえば不治の病の事を云いますが、膏肓とはこの膜原の辺りを指します。
難治性の慢性病はここに病邪が潜伏(伏邪)している場合が多いと考えています。

アトピー性皮膚炎も現代の難病の一つです。
皮膚の乾燥と掻痒をもたらすアレルギーの原因がこの「伏邪」ではないかと想像をしてみました。

2. 伏邪は何故生まれるか?
潜伏期間を経てある時突然発病するマラリヤなどは「新感の伏邪」の発動です。
一方 アトピーのように、いつとは無しに発病してくるタイプの伏邪が通常の伏邪です。
昔の人は、伏邪とは「貧困による飢えや寒さが正気を損傷していると外邪を被っても、邪は直ぐに発病せず潜伏して遅れて発病する」と考えました。

 其辛苦之人,形労汗泄,鼎食之家,腎虚難免,形労傷腎,腎労傷精,雖不触冒厳寒殺[厂<萬]之気,正邪由是潜伏于中,為伏邪諸病。

今日ではそのような貧困はなく、代わりに栄養価の高いものを食べ過ぎて却って災いを招いています。
すなわち体内に「湿熱」が生じやすくなっています。
ここで問題にするのは「湿熱」が生活習慣と合わさって生み出す「陰虚 肝熱 脾湿」の体質です。

 嗜食膏粱厚味而易生湿熱,因而相当部分病人的体質都是陰虚肝熱脾湿之体,所生之病是陰虚肝熱脾湿之病。

3. 伏邪はどのように治すか?
感染症である“春温”の治療に用いる処方に青蒿鼈甲湯《温病条辨》というのがあります。

 青蒿・鼈甲・生地黄・知母・牡丹皮

外感病の大勢が衰えてきても余邪が陰分(膜原)に留まっていると、気血津液を損傷する事になり「陰虚邪伏の熱」となります。
この処方はこの隠れた余邪(伏邪)を一掃するための処方です。
この性質の悪い伏邪は、滋陰と透邪の方法(標本両治)を併用しなければ除く事が出来ません。
その妙法が青蒿と鼈甲の組み合わせです。
青蒿はマラリヤにも使われています。
二つ合わさると養陰透熱の効を発揮するのです。

4. 青蒿鼈甲湯の解説
温熱の邪が陰分に入り、熱が夜間になると出て、朝になると退熱するなどの無汗の証、あるいは温熱病の後、低熱不退などの証に使用される。
鼈甲は肝経至陰の分に入り、よく養陰するのみならず、邪を探す。青蒿は少陰より邪を率いて外へ出す、」
「青蒿は陰分に直入すること能はざれど、鼈甲はこれを(青蒿)を率いて入るるなり、、鼈甲は陽分に出づること能はざれど、青蒿ありこれ(鼈甲)をひきいて出だすなり、、」
鼈甲は血分に深く入り熱邪を探し、青蒿との共同作業で熱邪を衛分に駆逐するというもので、青蒿鼈甲湯は「先入後出」の代表方剤とされる。
もちろん「邪少虚多」とは気血津液不足のすべてを指すが、体中深く伏在する熱邪に対して青蒿鼈甲湯が基本方剤となる。

青蒿は芳香で、清熱透絡し、邪が外へ出るように導く。
生地黄は甘凉滋陰で、知母は苦寒滋潤で、鼈甲、青蒿と協力して養陰透熱の効を果たす。
牡丹皮と青蒿を配伍して内において血中伏熱を清し、外において伏陰の邪を追い出す。
全方の配伍を総合的に見ると、《温病条辨》の著者・呉[王唐]の言う通りこの方は「先に入る、後に出る」妙がある。
青蒿は直接陰分に入らないが、鼈甲が連れて入る。
鼈甲は独りでは陽分へ出られないが、青蒿が連れて出る。

5. アトピー性皮膚炎への応用
陰虚血燥型のアトピーに対して青蒿鼈甲湯+消風散加減を用いている例があります。

 (青蒿・鼈甲5 生地4 知母・牡丹皮・防風・当帰・蝉衣・苦参・牛蒡子・木通3 甘草2)40

加減変化:湿疹増厚者,加疾藜子、白鮮皮、土茯苓。
     掻癢甚者,加[火段]竜骨、鶏血藤、皀角刺。
     兼気虚者,加太子参、黄耆、茯苓。

※ 現在、幾人かにこの処方を試してもらっていて、かなり良い手応えを得ています。
なにしろ難病のことですから そう簡単には答えが出ないでしょうが一応、中間報告とします。

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