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桂枝新加湯証4

《臨証実験録》 腰背痛

張某,男,28歳,農民。
腰背が疼痛すること半年余り,時に軽く時に重い,軽い時には軽微な活動なら出来るが,重い時には俯仰転側すら制限され,咳嗽して吸気の時に痛む。
郷村の医院では腰は腎府で、労して虚したのだと,補腎壮腰を行った;
或いは変化が速いと、痛処が走竄するのは風だとし,独活寄生湯を与えたが,皆無効だった。
近ごろまた痛みが甚しくなり,遂に受診しにきた。
其の痛苦する形躯を望めば、活動は不自由で,舌質は淡紅,苔は白微膩。
訊ねると時々発熱し,自汗が出,腰背が悪風し,左腿は酸困で発冷するが,飲食、二便は正常である。
腰背の筋肉に触れると攣急しているが,腫れや発紅はしていない。
脈象は弦緩無力と診て取れる。

脈症を綜観すれば,太陽病の中風で,営衛不和,正気虚弱の証である。
咳嗽して引痛するのは,乃ち経脈筋肉が失養して攣急する症である。
《傷寒論》に云く:“太陽病で,発熱して汗が出,悪風して脈が緩なる者は,中風と名づける。”
又云く:“発汗后,身疼痛し,脈が沈遅の者は,桂枝加芍薬生姜各一両人参三両新加湯が主る。”
いわゆる“発汗后”とは,発汗過多を指し,気陰が損傷している。
“身疼痛して,脈が沈遅”とは,乃ち経脈の失充、筋肉の失養である。
本案の病は前もって発汗を経ておらず,脈も亦沈遅ではないが,然し無力で緩というのと近似しており,同じく正気不足に属する。
故に桂枝新加湯で治す:

 桂枝10  白芍・党参15 炙甘草6g 生姜10片 紅棗6枚 二剤

二診: 腰痛は止み,悪寒と,汗出も亦減ったが,腿は仍おだるく(酸困),脈と舌は前と同じい。
原方を再び二剤服する。

按: 桂枝新加湯と、独活寄生湯は皆 補気血、去風寒の方だし,且つ独活寄生湯の陣容は強大であるのに,何故一方は効き一方は効かないのか? と問うなら、
曰く:独活寄生湯は補気血、益肝腎で、風寒湿痺を治す方である。
臨床では,無熱、汗出、悪風、脈緩の表虚証である。
桂枝新加湯証は中風表虚に属し,病機は営衛不和,気陰損傷である。
営衛を調和し,気陰を補益するには,独活寄生湯ではまずい。
桂枝新加湯証は,中風表虚証に属するが,然し虚象は著しくなく,発熱、悪風、汗出も亦軽微にしか現れない。
病者の多くは主症を陳述しないから,只 詳細に詢問するか,或いは腹診時に腹壁が湿潤して手に粘るので知る事が出来る。
脈象に至っては,遅、緩、細、弱のどれも皆見て取れる。

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