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蘇羌達表湯

香白止と都梁丸」の記事にも書きましたが、日頃から白芷(びゃくし)が鼻や頭の症状によく効くので風邪薬に利用されています。

そのひとつに蘇羌達表湯があります。
これは兪根初の原著,徐栄斎重訂《重訂通俗傷寒論》に出ている処方です。

【処方】(紫蘇葉4.5 防風・羌活・白止3 光杏仁・浙茯苓皮6 広橘紅・鮮生姜2.5)30.5

【功能主治】
疏風散寒,去湿解表。
治傷寒挾湿,頭身重痛,悪寒発熱,脈緊無汗,鼻塞咳嗽者。

【用法用量】
如し風が寒より重く,咳嗽して痰が多ければ,羌活、生姜を去り,半夏9g,前胡6g,苦桔梗4.5gを加える。

【釈名】本方の治は,紫蘇葉、羌活を以って君とし,寒邪を駆って裏より表へと出す,故に蘇羌達表湯と名づける。

【方証】外感風寒挾湿,悪寒発熱,骨節酸痛,頭痛身重,舌淡苔白膩,脈浮。

【主治】
(1)冬季の感冒で体に湿のある者。
(2)潮湿の地で風寒感冒に患った者。
(3)風湿性の関節炎の初起。

【歴代医家方論】
《重訂通俗傷寒淪》説:“浙紹(浙江省・绍兴省)の地は卑湿のため,凡そ傷寒にかかれば恒に湿を挾む,故に温の中に滲湿薬を佐として加え,湿が停まるのを防ぐ。
湖南の地は高燥のため,凡そ傷寒にかかれば最も化燥し易い,仲景は辛温薬の中に甘潤薬を佐として加え,化燥するのを防いだ。
辛温発汗法は同じでも,佐使の法則は異る。
正傷寒証を治すには,麻桂(麻黄湯・桂枝湯)の二湯を用いれば,速効する。”

(註1:もし正傷寒証でなく風寒挾湿証だと麻桂の類では効かない。「葛根湯への警告 !」で再三云っている事で、漢方かぜ薬は妄信してはならない。)

(註2:風寒挾湿証は現代ではまた挾飲傷寒(傷寒挾水)証としても現れる。もともと停飲がある所へ,風寒を外感するか,或いは先に風寒を受けた后に冷水を飲んだり,冷茶冷酒を飲んだり,或いは瓜果生冷のものを貪食したりした場合である。現代人には大変多いタイプである。)

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紫蘇葉といえば日常的な食品のひとつで珍しくもありません。
しかしこれが馬鹿にならない逸品なのです。

《本草正義》紫蘇葉は,芳香で気が烈しい。
皮毛を外に開いて,肺気を泄して[月奏]理を通します;
上焦では鼻塞を通じ,頭目を清し,風寒外感の霊薬です;
中焦では胸膈を開き,脾胃を醒まし,痰飲を宣化し,鬱結を解き気滞を利します。
今日では茎、葉、種子の三者に分けてそれぞれの症に用います。

葉は軽揚なので,風寒外感に用い,肺閉を疏散し,肌表を宣通し,泄風化邪の効は,最も敏捷です。
茎は質堅だが,中空で,大きく豊厚なので,裏気を開泄し,解結止痛,降逆定喘,開胃醒脾の効があります。開泄といっても外感に対してではありません。
種子は滑利して直下し,降気消痰,止嗽潤肺の効で,又これは別の用途を持っています。

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高血圧

中医では高血圧を四个の類型に分けて認識しています。

A: 実証
(1)肝陽肝火、上亢上炎型
頭暈頭脹、面紅耳赤、心煩易怒、舌紅、脈弦有力。

これは「清肝瀉火法」を取らなければなりません。
西薬治療でβ阻害剤などが選択される場合です。
(しかし実際には西洋医は高血圧と見さえすれば誰にでもβ阻害剤を投與していますが、)
方剤は天麻鈎藤飲、夏枯草などになります。

(2)痰湿内阻型
頭暈、頭痛,但しこの頭暈頭痛は頭沈重を特徴とし,布で裹(つつまれ)た感覚,頭疼、頭暈沈重感で,なお胸悶、腹脹、食欲不振、肢体麻木、身重倦怠、嘔吐痰涎、舌苔白膩、脈搏弦滑。

これは「化痰去湿法」を取らなければなりません。
方剤は半夏天麻白朮湯などになります。

B: 虚証
(3)陰虚陽亢型
頭暈頭痛は空痛の感覚,耳鳴、健忘、五心煩熱、心悸失眠、咽干舌燥、双目干渋、舌紅、脈搏沈細弦。

これは「滋陰降火法」を取らなければなりません。
方剤は知柏地黄丸などになります。

(4)陰陽両虚型
頭暈、目花(かすみ目)、腰膝酸軟無力、面色蒼白、心悸気短、神脾乏力(心神と脾気)、大便溏薄,男性は陽萎遺精、四肢怕冷、舌質淡、脈沈細無力。

これは「兼顧陰陽,要両益陰陽法」を取らなければなりません。
方剤は桂附八味丸などになります。

この四个証型以外にも,淤血、肝風内動証などがありますが、それは上記の四証型に上乗せすれば済みます。

‥‥‥
このように単純化すればおおよそ自分がどの型に分類されるか分かると思います。
先天的な虚弱者や老齢者の多くは B: 虚証に含まれ、中でも多いのは(3)陰虚陽亢型です。
陰虚陽亢の陰虚とは腎陰の虚を指し、陽亢とは心陽の亢奮を指します。
もし頭暈、頭痛、心悸、失眠、煩躁、耳鳴、肢麻、腰膝酸軟などの症状があれば最初に陰虚陽亢型ではないかと疑ってみたらよいでしょう。

本来は「心腎が相い交わり」、腎水が心火を救う(水火既済)ようになっていなければなりません。

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四妙勇安湯

清の道光二十六年(1846年)に鮑相璈が湖南の民間験方を収集して,《験方新編》を撰写し,卷二の中に湿熱毒盛の脱疽(動脈栓塞性壊疽症)を治療する方としてあるのが「四妙勇安湯」(原書では無方名)である。

“四妙”とは,本方の薬は僅か四味といえども,功効は絶妙で,効力大で,服薬の后は,勇猛迅速に,病邪を除去せしめ,身体は健康となり,平安にして虞れるところが無い,故に“四妙勇安湯”と称する。

【組成】 金銀花(90g) 玄参(90g) 当帰(60g) 甘草(30g)

【加減】 如し湿熱重ければ,加黄柏・蒼朮・知母・沢瀉;
血淤者,加桃仁・紅花・虎杖;
気血両虚者,加党参・黄耆・生地・白朮・鶏血藤。

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ニキビは何故、青春のシンボルか?(2)

粉刺または*座瘡(ともにニキビのこと)
*座は[病<坐-丙]の文字

王輔民医案:劉某,女,19歳。1989年3月9日初診。
最近、3个月前から顔面に粉刺(ニキビ)が生じた,前額から、鼻旁および面頬が重い,顔面は潮紅し,粉刺が遍布している,大小ばらばらで,面部に[火共]熱を自覚する,微かに癢く微かに痛い,無汗,脈は数弦緊で有力,苔は薄白く潤っている。
「衝任脈が壅実となり,顔面に上蒸して,陽熱が内鬱し,発越(発散)することが出来ない」証である。
「[月奏]理(皮毛)を開啓し(ひらき),鬱熱を発散し,衝任を疏泄する」治法に宜し。

処方:先ず予め大青竜湯:麻黄20g,桂枝10g,杏仁10g,甘草10g,生姜10g,大棗30g,生石膏50g。
日に1剤,水煎して2次に分服,毎晩覆被して微微に汗出せしむ。

3月10日復診:2剤を服した后,汗出すこぶる多く,面部の[火共]熱は消除した。
改めて桂枝茯苓丸の原方を用いる
: 桂枝、茯苓、丹皮、白芍、桃仁各20g,水煎して日に1剤を服する。

3月25日三診:6剤を服した后,*座瘡は松散し稀疏となった。
継いで6剤を服したら,*座瘡は基本的に消失した,惟だ顔面の皮膚は荒れている。
上方を再服すること6剤にして,愈えた。(山東中医雑志1990;<5>:21)

按語:*座瘡の多くは、汗が出るべき時に風に当たったり或いは汗が出るべき時に冷水で体を洗ったため,邪熱が皮[月奏]に鬱して発生する。
《内経》に云わく:“労して汗をかき風に当ると,寒が皮にせまり,鬱すると*座となる”
当今の治法は散風清熱,凉血活血を多用するが,実効は少ない。
本病は青年に好発するのを忘れてはならない,青年は腎気が亢盛で,衝任脈が盛んである,盛んだととかく壅(ふさが)りやすい,風邪の閉束が無くとも,陽熱は内鬱して発病する場合がある,今までに多くの患者に桂枝茯苓丸を服用させて頗る効験があった。
故に此の*座瘡の証とは肌[月奏](皮毛)の鬱熱がで,衝任脈が壅実している事がである事が分かる。
現代医学でも本病の発生には性ホルモン分泌の過盛が関係していると云っている,故に桂枝茯苓丸を用いて其の壅実を泄する,壅実が消えれば,*座瘡は自ら愈える。

※訳者註 衝任脈の壅実を去るのは桂枝茯苓丸には限らない。気血の淤滞を去る処方は色々ある。

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不射精

ネットで調べてみると「男性膣不感症(膣内射精障害)というよくある勃起不全の症状」とあります。
現代医学ではこれをほぼ精神的な原因だと考えて姑息な対応しか提示していません。

ある方から相談があり、不射精のうえ更に「膿精液症」でもあるとのこと。

膿精液症 前立腺や精嚢に炎症があると精液中に白血球が増え、その白血球が精子を食べてしまって精子の膜機能が妨げられるため受精がうまくいかなくなるのが膿精液症です。

漢方では膿精子症という病名ではなく、不射精という症状で考えます。
不射精は男科疾病中にあっても難治の症です。
肝は疎泄(疏泄)をつかさどる」のが本来の機能なのですが“ストレス”や“鬱怒”により肝気が淤滞すると先ず精関の開合が失調して射精出来なくなります。
そしてそれが長く続くと器質的な変化が起こり、痰と淤血が経絡を阻滞するようになります。

単に射精が困難なだけではなく、ほかに性的な興奮が少なく勃起が持続しないとか、排尿時の勢いがなく切れが悪く残尿感があるとか、寒がりなのに足裏がほてるとかがあれば「肝腎陰虚」もあります。
おそらく先天的な禀賦不足や過労による腎精虧耗などと重なり、あわせて「肝腎陰虚・痰淤阻絡」の証が形成されるのでしょう。

中医学では多数の対処方法が紹介されています。

治療不射精的中医験方

不射精症

不射精症中医治療

中医治療不射精

功能性不射精

ここには比較的安全な処方が紹介されていました。

 [熟地・枸杞子4 当帰・菟絲子・赤芍・丹参・穿山甲・柴胡・王不留・紅花・桃仁・牛膝3 蜈蚣1条]38

 ※ ただし穿山甲はワシントン条約に抵触するので入手できません。

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