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四妙勇安湯

清の道光二十六年(1846年)に鮑相璈が湖南の民間験方を収集して,《験方新編》を撰写し,卷二の中に湿熱毒盛の脱疽(動脈栓塞性壊疽症)を治療する方としてあるのが「四妙勇安湯」(原書では無方名)である。

“四妙”とは,本方の薬は僅か四味といえども,功効は絶妙で,効力大で,服薬の后は,勇猛迅速に,病邪を除去せしめ,身体は健康となり,平安にして虞れるところが無い,故に“四妙勇安湯”と称する。

【組成】 金銀花(90g) 玄参(90g) 当帰(60g) 甘草(30g)

【加減】 如し湿熱重ければ,加黄柏・蒼朮・知母・沢瀉;
血淤者,加桃仁・紅花・虎杖;
気血両虚者,加党参・黄耆・生地・白朮・鶏血藤。

臨床医案

1 小腿丹毒 高某, 女, 23歳。2001年6月21日初診。
本人の説明では脚に感染したのは5日前で, 小腿が紅腫疼痛するようになったのは2日前。
患者は平素から水虫(脚癬)にかかっており, 近日は仕事が忙しくて, 脚癬から感染がひどくなった。
検査では: 双足とも小腿下段に紅腫を伴い, 塗丹の様を呈し, 足趾の縫紋間(足指の又)から糜爛滲出がある, 悪寒発熱(T:38.4) , 舌は暗紅で、苔は薄黄, 脈は滑数である。

辨証: 湿毒熾盛、淤阻脈絡型に属する。
西医診断: 脚癬感染に小腿丹毒を合併している。
治は清熱解毒, 利湿消腫, 活血化淤, 通絡止痛するのが宜しい。

処方: 金銀花18 玄参12 当帰・黄柏6 甘草・牛膝2 意苡仁8

1日后, 患者の体温は恢復して正常になった, 3日后, 腫痛は明らかに緩解した, 第6日には患者の諸症は消失し退院した。

按: 本案は湿毒淤が久しくしてとうとう「化火」したものである, 湿邪は纒綿として愈え難く, 淤阻脈絡もあったところから, 蘊久化火から毒を成し, 脚趾糜爛, 紅腫疼痛から, 継いで小腿に丹毒を形成し, 全身症状を引起したものである。
祖国医学では, 本病に対して早くから認識している,
《諸病源候論》に曰く:“丹とは, 人身に忽然として発赤があり, 塗丹の状の如し, 故に丹と謂う”。
本病の病因について,《聖済総録》に云わく:“熱毒の気が,皮膚間に暴発して, 外泄できないと, 蓄熱して丹毒となる”。
この証の本は湿邪下注の脚癬であり, 標は熱毒熾盛の丹毒である, 総じて病機は湿、毒、淤であり, 毒が主である, 急なれば其の標を治す, 故に金銀花の清熱凉血解毒を重用して君とし, 甘草、玄参、当帰の益気活血解毒を臣とし, 黄柏、意苡仁の清熱燥湿を佐とし, 牛膝の引血して火を下行させるのと, 甘草の諸薬を調和するのを使とした。
標本を兼治して, 熱毒を去らせ、淤血を除き、湿邪を散じて、疾病を消した。

2 下肢血栓性静脈炎 劉某, 女性, 61 歳,退休教師。2002 年9 月16 日初診。
本人の説明では右下肢が腫脹疼痛してから1 週間になる。
患者には平素から下肢静脈炎があり病歴は20年になる,毎回 疼痛発作があると, 西薬の抗生素等の輸液で治療していて, 緩解を得ていた, 今回は中医中薬の診治を求めている。
検査: 右下肢が左下肢よりも腫脹して, 皮色は暗紅で, 表浅性の静脈団塊が見える, 小腿腓腸筋部がもっとも明顕で, 圧痛(+ ) , 按ずるのを拒み, 皮膚温は高く, 歩いた后には疼痛が重くなる, 舌質は紅く、苔は黄, 脈は弦数である。

辨証: 淤阻脈絡型,
西医: 下肢血栓性静脈炎;
治則は補血活血化淤, 清熱解毒,
処方: 当帰18 玄参12 金銀花・鶏血藤・川続断・杜仲6 甘草・牛膝2

3 剤后には病人の煩躁するのが消失し, 体温は正常となり, 腿腫疼痛は略減った, 効果があったので処方は変えず, 継進すること6 剤で, 腿腫は大いに減り, 皮膚の紅紫色は退き, ちょっと暗いがほぼ正常な膚色である, 触れても熱くなく, 普通に歩行できる;

丹参2g を加えて, 継進すること5 剤にして治愈を告げた。

按: 本例の患者には下肢静脈炎の反復発作があり, 日久しくして正気を損傷しており, 虚から淤を, 淤が久しくして「化火成毒」となり, 虚、淤、毒の并重である, 本は正虚で, 標は淤毒阻絡である。
治は補血活血, 清熱解毒を主とする, 故に当帰の補血活血, 通経止痛を君とし重用する, 玄参、金銀花、甘草の清熱解毒を臣とし, 鶏血藤、牛膝、川続断、杜仲の補肝腎強筋骨、引血火下行を佐使とした。

3 痛風 王某, 男性, 46 歳, 干部。2001 年5月18 日初診。
本人の説明では左足拇趾が紅腫疼痛してから2 週間になり, 夜間の痛みが尤甚しい。
検査: 患者は肥満体で, 左足拇趾が紅腫しており跖趾関節が甚しく, 血尿酸が高い。
診断は痛風性関節炎で,辨証は痰淤阻絡, 火毒熾盛型に属する。
治は清熱凉血, 解毒散結, 化淤止痛するのが宜しい。

処方: 玄参・土茯苓12 金銀花・当帰・威霊仙6 白芥子・甘草・牛膝2

再診では, 足趾の紅腫疼痛は減軽しており, 効果があったので処方は変えず継服すること6 剤で, 基本的には痊愈した。

按: “痛風”は祖国医学でも早くから記載されている, 金元時期の朱丹渓《格致余論·痛風論》では, 痛風の本は血熱の感寒受湿であり, 熱血が寒濁を得て凝渋して成るものと提出している。
本病の邪は高梁厚味の嗜食により, 湿熱を滋生し, 久しくして痰淤を醸生し, 熱・痰・淤が互いに結ぼれて流注凝渋と成ったものである。
故に玄参、土茯苓を選び共に君薬とし,清熱利湿、凉血解毒散結させる, 金銀花の清熱凉血解毒と, 当帰の活血化淤止痛を臣とし, 白芥子の利気散結で、皮裏膜外の痰を除き, 威霊仙の通経絡散結, 牛膝の利湿通淋を共に佐薬とし, 甘草の調和諸薬, 牛膝の引血下行を使とした。

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Comments

毎年 手足が凍傷になるという老婦人が10月末に来られまして、当帰四逆湯加味を差し上げました。
以来ずーっと飲み続けておられたのに12月に来られた時には既に手の指は紫色になり浮腫と皮膚の剥離があり熱を持っていました。
文献を見ても凍傷の処方は殆どが温薬ばかりで構成されていて、寒薬としては僅かに木通または通草が入っているだけです。
そこで見つけたのが四妙勇安湯でした。
静脈炎の治癒に卓効を示すというから当帰四逆湯と合わせれば炎症期に入った凍傷には持って来いの処方ではないかと期待しているところです。

Posted by: youjyodo | 2010.12.25 at 04:16 PM

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