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かかりがけの風邪に六味湯加味

恥ずかしながら私は長い間 風邪に対する漢方処方に自信がありませんでした。
風寒証だとか風熱証だとか、弁証について論じる事はあっても、罹りがけの風邪に直ぐに対応できる処方を持っていませんでした。
よく出てくる桑菊飲・銀翹散・荊防敗毒散などは典型的な症状が揃った場合の処方です。
ほんの初期では症状がまだハッキリせず、風寒熱はどちらとも明確ではありません。
背中が薄ら寒くて、咽がイガイガする程度の時には何が挙げられるだろうか?

この度は中国ネットで大きなヒントになる記事を見つけました。(中国ネットは漢方の宝の山です
 高危人群可服“六味湯”

“六味湯”を服用する事は、新型インフルエンザ(H1N1)の予防ワクチンを注射する事に匹敵するし更には治療にもなる、と上海市竜華医院呼吸科の呉銀根 教授は云っている。
教授はかつてSARS(非典型肺炎)流行の時期にも同じように唱え、一定の効果を得ていた。
その時の処方は次の様である。

六味湯加味 (黄耆・白朮5 荊芥・防風・貫衆・金銀花4 陳皮・白僵蚕・桔梗3 生甘草・薄荷2)39

喉科六味湯一案
女,65歳,診于2010年12月29日。
病史:咽が痒くて咳嗽し,咽干,痰色は白質で粘く出難い,その他に不適な所は無い,舌尖が紅く,苔は薄白,脈滑。

六味湯加味:
(桑葉・白芍5 荊芥・防風・桔梗・蝉衣・白僵蚕・杏仁・前胡・百部・牛蒡子3 甘草2)39  3日分。

二診:咽痒と咳嗽は大いに減ったが,なお口咽干があり,舌も前と同じで,脈は細滑だった。
沙参麦冬湯:  3日分で善后を図った。

六味湯加味治療喉源性咳嗽369例(陝西中医2004 年第25 卷第9期)

喉源性咳嗽は咽が痒く、干渋する事によって引き起される刺激性咳嗽で, 多くは久治しても愈えず, 病程は長く数ケ月に達することがある。
我が科では多年の臨床実践において六味湯加味を運用して喉源性咳嗽369例を治療した。

六味湯加味: (荊芥・防風・桔梗・白僵蚕・桑白皮・桑葉4 甘草・薄荷2)28

咳嗽厳重者 加川貝母・紫苑; 咽痒甚者 加蝉衣。

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病案挙例
2002 年9 月15 日診察。範某, 男, 42 歳, 工程師。
咽痒咳嗽を患い 1 年になる, 干咳で毎日多い時は10 数回, 少なくとも4~ 5回ある。
いつも油烟、油漆、灰塵等の刺激性気味を嗅ぐとすぐ咳がひどくなり,面部は紅くなり, 夜間だと咳のため入睡できない。

診断: 喉源性咳嗽

処方: 六味湯加味:
(荊芥・防風・桔梗・白僵蚕・桑白皮・桑葉・川貝母・炙枇杷葉・蝉衣4 甘草・薄荷2)40 7 剤。

9 月23 日2 診,
咽痒干、咳嗽は減軽し, 夜間咳嗽の回数も減少した。
陰虚による燥を考慮して, 原方から防風を去り生地、麦冬を加えて, 更に7 剤。

9 月30 日3 診,
咽干、咳嗽は已に半減し, 夜間も4h は咳をせずに眠れる。更に7 剤。

10 月9 日4 诊
もう咳をしないので基本方に地竜を加えて3 剤后治癒を告げた。

討論
 喉源性咳嗽とは, 干祖望教授(南京中医学院)が最初に発見して命名した病名です。
本病の主要な特点は陣発性の喉頭奇痒と, ついで咳し, 咳嗽が重い時は面色が紅赤になり, 咳后にはまた常人のように戻る。
咽部には痰が貼り附いた感じかあり, 多くは咽干し、陣発咳嗽には痰が無い。
一般には咳嗽后に喉部に軽い舒暢感があり, 喉源性咳嗽は咳をすればするほど痒さは止まらない。
此の種の咳嗽は, 医師が何種の感冒咳嗽かを分まえず, ただ咳を止めることばかりを図り, 解表しなかったために, 寒邪は散らないで, 咽喉に困結したのである。
各種の止咳薬物では, 浮邪は排泄されず, 邪は肺経に困結し, 干咳は止め難くなる。
祖国医学は本病の病因病機に対して分析を加えて,
《証治匯補》に曰く:“外感風寒は, 概ね温散すべきだ, それを知らないと久しくして裏に伝わり, 変じて鬱咳となる”。
《羅氏金約医鏡》には:“内熱を兼ねて火のある者は,須らく真陰を保たなければならない, 壮水すれば自ら能く火を制す”。
筆者は喉源性咳嗽の治療の要は宣肺散風去邪であると考えている。
臨床中に発見した《喉科秘旨》中の六味湯加味は此の類の病症の治療に対して有効である。

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六味湯治療急性喉炎
急性喉炎は常に表衛不固のうえ,風寒や風熱邪毒を外感し,その時に肺気を失宣した結果,喉竅へと上襲したものである。
主症は声音嘶唖、陣咳,重ければ呼吸困難となる。

本病の患者は風寒と風熱の両型に分けられる。
風寒型の表現は声嘶,発声低沈,喉微痛,畏風,流清涕,舌苔薄白,脈浮緊。
治には疏風散寒,利喉開音すべし。

六味湯《喉科秘旨》加減:
(荊芥・防風・紫蘇・蝉蛻3 桔梗・枇杷葉・人参葉5 甘草2)29

風熱型の表現は声嘶,発声不揚,甚しければ失声,咽痛,痰黄,口鼻干燥,舌紅,苔薄黄,脈浮数。

‥‥‥
典型病例:
患者,女,32歳,
エアコンを入れた后、突然 声音嘶唖となり,発声低沈,喉微痛,鼻塞,流清涕,苔薄白,脈浮緊。
これは風寒型に属する。

薬用:(荊芥・防風・蝉蛻3 紫蘇・桔梗・人参葉5 甘草2)26
3剤を服薬して3日后には,諸症は均しく除かれた。

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