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不眠に半夏秫米湯

半夏秫米湯については「不眠症の奇経治療」と「不眠症の奇経治療2」で2度も書いていますが、まだ書き足りていません。
半夏秫米湯は《霊枢》によれば、千里を流れて来た水(長流水)即ち「江河・渓澗の水」を、掬っては何度も何度も上から落として泡立てた清水(甘瀾水)を以て煎じる事になっている。
長流水の質は柔であるが気は剛で、止水と区別される。
瀉剤を煎じるのに適している。

何を瀉すのか?

《霊枢· 大惑論》に曰く:“衛気が陰に入ることが出来ず,常に陽に留れば,陽きょう脈が盛んとなり(陽気満),陰気は虚となり,目を瞑る事が出来なくなる。”
衛気が陰に入るのを妨げているのは「痰飲」である。
だから「半夏を長流水で煎じて」痰飲を除けば「衛気が陰に入り」眠ることが出来るようになる。

半夏秫米汤の半夏は通常の4-6倍量(40-60g)を用いる。
秫米とは粟のことであるが、無ければ薏苡仁でも良いとの事。

 心脾両虚+党参・白朮,痰熱擾心+黄連・竹茹,食滞胃脘+陳皮・六神曲

病案挙例病案1.金某某,女,21歳。
久しく失眠を患っている,毎晩眠れるのはほんの三四時間だけで,寝ても夢が多く醒め易く,醒めると口が苦いが,口渇はない,痰が多く食は少い,食后に噫気あり,多く食せば吐き,干飯を食べると胃脘に梗阻する,大便は隔日に一行あり硬結して渋痛し下り難い,舌は潤で,脈は濡細で稍数。
1963年4月23日の初診には《霊枢》半夏湯加味(半夏一両,糯小米(粟)二両,夜交藤一両)を投じた,連服すること3 剤で,失眠は顕著に好転し,毎晩床に入ると直ぐに,夜明けまで寝入る,だが少しでも声をかけると直ぐに驚いて醒める,醒めたり睡ったりで,いままで醒めるともう入睡出来なかったのとは異なる,大便はなお硬いが出易い,今までのように艱渋難下ではない,痰も亦大いに減り,食欲は漸く出てきた,但し食后なお胃脘不適を感じて時時噫気が出る;
再診時に上方を守り旋覆花・陳皮・甘草各五銭を加えて,再進すること3剤,大便は通暢し,失眠は痊愈した。(万友生《傷寒知要》)

病案2.龚某某,女,26歳,1977年4月28日診治。
失眠になり半年,毎夜睡眠薬を飲まないと眠れない。
口苦,胸悶,心煩,急躁易怒,心悸,時に恐怖感がある。
舌苔黄膩,脈弦滑。
証は痰熱擾心に属する,即ち上方(半夏秫米湯:法半夏、薏苡仁各60g)加黄連15g とする。
西薬を停止する。
服薬当夜から直ぐに安静に入睡できて,夢少く,口苦や胸悶や心煩 亦も減った。
継服すること2剤で,諸症は消えた。(《新中医》1983年第ll期)

病案3.某女,40歳。
半年前に人と喧嘩して心煩不寐となり,眠れない,ひどい時には徹夜不眠で,頭痛頭沈を伴い,五心煩熱するので,半年来 安定剤を服用しているが,効果はない。
そこで半夏秫米湯を与えたら,7日后に睡眠は大いに改善した;
継用すること7日で,諸症は消えた。

(《中医薬臨床雑志》2004年第3期)
‥‥‥
(私事)振り返ると半夏秫米湯をあげておけば良かったと思われた例が多々ありました。
皆さん、私のように酸棗仁湯などでお茶を濁したりしてはいけませんよ。

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