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五苓散の解明

 陳瑞春教授は著名な経方の専門家です。
臨床工作に従事すること50年近くになりますが,特に五苓散方の応用を病機より切り開かれました。

五苓散の病機で強調されるのは“気不化水”ということです。
(全身の)気化ができないと,(全身に)水津は分布されず,口渇を現す;
(全身の)水液が潴滞すると,(膀胱では)小便不利を現す;
(膀胱で)気化ができなければ,水は気化せず,尿多の証を現わす。
五苓散が多尿と少尿の両方を治せるのは,皆 気化不利という病機があるからである。

【臨床運用】

 1 多尿症

 臨床で常見するのは小兒及び老年の尿意頻頻・多尿である。

小兒の多くは先天不足により,膀胱の気化不利となり,水が気化しないので多尿となる;

老人は往往にして気血陰陽が倶に虚す,気虚すれば膀胱の気化不利のため,尿意は頻頻となり,甚しければ自制できずに遺尿となる。

若し此の類の病人を腎虚より論治して,補腎渋尿の法を運用すれば,効果は非常に悪いだろうと陳老は云っている。

何故なら老人の尿多(尤も夜尿が多いや遺尿は腎虚に因るのではなく,気虚から膀胱の気化功能が失われるのが直接原因だからです。

この事から,其の治療は温腎化気に,少し固摂を佐として納腎すべきもので,老師は常に五苓散方加桑螵蛸・益智仁等を用いて満足な療効を獲得している。

 例:王某某,女,73歳,2002年1月8日初診。

この患者は乳腺癌の術后に,中医に治療を求めてきた。

問診中に得られた知識では夜尿頻頻で,毎夜5~6次にもなり,睡眠に影響を来たす,飲食は常のようにあり,大便は形を成したものが,日に一次あり,一般情況は良好で,ほかは不適な所はない。

そこで五苓散加減を与えた。

(桂枝・猪苓・沢瀉・白朮・桑螵蛸・益智仁3 茯苓5 芡実7)27

5剤の后,夜尿は2~3次に減った,又服すること5剤にして,夜尿は1~2次に減り,睡眠は大いに好転し,元気が倍増した。

后は益気健脾とし,脾胃を調理する治療に改めた。


 2 遺尿症

 遺尿症の患者は青少年に多く見かけます,往往は僅かに遺尿の一症があるだけで,日中には異常がなく,常人と変わらず,辨証は比較的困難である。

ある人は腎虚より論治し,腎が水液を主るので,収渋の品を用いるが,大抵は効果が出ない。

陳老は:老年で体の弱い人は,腎虚と説いても道理だが,青少年で体が強健な人は,面色も紅潤だし,体質は甚だ佳い,これを腎虚と講じては理が通らない,青少年の遺尿の病機は“気不化水”により,膀胱の気化功能が減弱して,夜間自遺するものである。

治療には五苓散加減を取り,気化を助け,膀胱を約す,気化が行われれば,陽気は通じ,中土は健となり,遺尿は自ずと止る。

 例:羅某某,女,15歳,高安人,2001年12月13日初診。

患者は遺尿すること1个月余,家人は毎夜起こして排尿させているのに,時には遺尿をし,気に病んでいる。

問診では口は干かず,冷えてもおらず,小腹は脹っていないし,納食も睡眠も正常である。

発育は良好で,体形は稍肥胖,智力も正常,小便も正常,舌は淡紅、苔は薄白く潤,脈は緩で力あり。

そこで五苓散加減を与えた。

 (桂枝・猪苓・沢瀉・白朮・石菖蒲3 茯苓5 遠志2)22

本方では五苓散加石菖蒲・遠志を用い,温通心陽、寧心開竅の功を取った。

服すること5剤の后 患者は云った,この5日間は遺尿がない,又服すること5剤の后 2日で1剤に改め,共服すること20剤になるが,今のところ遺尿はない。


 3 小便不利

 《傷寒論》の中では五苓散方は外感后の失治・誤治による小便不利・口渇者の治療に用いているが,陳老は運用に当たって:表証の有無を論ぜず,凡そ“気化不利”の病機に符合する者には均しく運用できると云っている。

老師は老年性前列腺増生で小便不利・点滴して下る者の治療に用いている,若し此れは癃閉証だからと,ただ活血化瘀からのみ施治しようとして,穿山甲・王不留行等のごとき薬物を用いても,本病には無益であろう,何故なら老年性前列腺肥大は既に病理変化となってしまったもので,生理的必然でもある,これをどうして活血攻破薬を用いて根治出来ようか,これも臨床事実とは符合しないものである,ただ膀胱の気化不利と,腎虚から不能布化になったものと小便淋瀝不通を認識するのが,道理的である,何故なら老年というものは腎が衰えて,気化功能が失常し,開合失司して小便不利となるものだから。

西医の手術は根本治療ではあるが,中薬を用いても有効であるということは,その増生した実体に影響を与えているという事である,故に五苓散加赤芍・牛膝等を常用して活血化瘀し,以って増生の実体を漸消するのである。

 例:張某某,男,75歳,以夜の尿頻(7~8次/夜),それも点滴して下るので,来診。

超音波スキャン:前列腺肥大に慢性炎症を伴う。

問診で小腹が時に脹痛し,小便が点滴し,大便は1~2天に一次,質は軟,舌は淡紅、歯痕あり,苔白く,脈は微弦と知った。

そこで五苓散加減を与えた。

 (桂枝・茯苓・猪苓・沢瀉・白朮・台烏・香附3 牛膝5)26

3剤の后,小腹脹痛は明らかに軽減し,小便は自然に排出でき,尿量も増加した。

又服すること5剤にして,小便は流暢となった。


 4 尿崩症

 尿崩症とは西医の病名で,是由于抗利尿ホルモンの缺乏により,腎小管から水分を再吸収する功能が障碍されて,多尿・煩渇・多飲を起こし低比重尿となった疾病である。

西医の多くはホルモンや抗利尿薬物を用いて治療する。

この類の病人は多飲・多尿を除いては,他に症状が無いので,陳老は五苓散を用いて治療し,多くは大変好い療効を得ている。

 例:寇某某,男,5歳,この両年 小便が多く,飲水も多く,喝飲と小便が交替に来る,飲一に便一と,夜間も喝飲すれば,小溲も多次になる,其の他には異常がない,発育も良好である。

大医院の診断は尿崩症で,尿崩寧の類の薬物を用いたが,押さえられなかった。

智力は聡穎で,舌脈も正常,陳老は五苓散加芡実、桑螵蛸を用いた。

当日1剤を服したら,その晩はよく安睡でき,喝水もなく小便もせず,一家は歓喜して,薬の神奇さに驚いた。

服薬すること30余剤にして,午前・午後に水を飲むのは2~3次で,毎次約50~60mLである,尿も1~2次となり,清長である。


 5 漏汗

 漏汗とは汗出が多く水のようで,淋漓として尽きないのを指す。

ある人は当帰六黄湯を用いて治愈したと曽つて報道していたが,ある病人には陰虚内熱の象が無く,治療効果は良くなかった。

陳老は辨証論治の原則を根拠として五苓散加減を運用して,予想外の療効を得た。

 例:褚某某,女,60歳,51歳の絶経后から汗出が増々多くなり,植物神経功能紊乱・更年期綜合征とされて多年治療したが,根治できない。

1999年の国慶節前后には更に,毎日衣服を換えること10数回,悪寒・肢冷を覚え,背の悪寒が尤もひどい,メリヤスのシャツを着なければならないし,大きい綿入りの掛け布団を着ている,面色は白く,四肢は清冷にして腫脹しており,大便は稀軟,小便量は減少し,口淡で,舌は胖で歯痕があり,夜は安んじて眠れない,脈は緩で弱。

五苓散加味: (茯苓7 白朮・猪苓・沢瀉・桂枝・防風3 生黄芪5)27

水煎して温服すること,日に1剤。

小便は明らかに増え,一夜の尿が5次,汗は尿が止るに随って減り,次の日には全身舒適を覚え,肌膚は清爽となった,5剤の后,汗の出は基本的に停止し,全身の腫脹感は明らかに軽減し,面色も比較的紅潤となり,大便は形を成した,処方を共服すること25剤,汗が出ても身体は暖かく,元気は倍増し,多年の痼疾は治愈できた。

陈瑞春应用五苓散经验陈瑞春应用五苓散经验

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