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肝火犯肺(3)

五行説では「金制木」の関係で、本来なら(肺)は(肝)を制しています。

しかし慢性病などで経過が長くなると「肝火」が強くなる場合があります。

肝火が強すぎると逆に肺が熱で焼かれるという逆現象が起こることがあります。

これを肝火犯肺(木火刑金)といい、肝火の暴走です。

肝火が暴走すると実に色々な症状が現れます。

例えば 動物アレルギー、クシャミや鼻水、目の痒み、肛門の痒み、寝汗、夜間の喘息、耳鳴り、怒りっぽく疲れやすい、不眠、被害妄想、物忘れ、抜け毛 などなど。

ひとつひとつの症状を聞いていると、どれも皆相当激しい症状ばかりです。

主証・客証の関係も分からなくなり、症状の多彩さに振り回されます。

私が振り回された2年間の体験を整理しておきます。

その間に使った処方は実に20を越えます。

主なものをあげれば、百合固金丸 秦艽鼈甲散 天王補心丹 当帰六黄湯 月華丸 二陰煎 ほか。

その殆どは滋陰剤でした。

得体の知れない熱の症状を滋陰することによって鎮めようと図っています。

どのようにも工夫すれど、まるで無効で症状は転々しました。

ある時期、多彩な症状のうち最も困っていたのは吸入を必要とするほどの喘息性の咳と胸の痛みでした。

ここでふと、肝火犯肺の証を思い出したのです。

木火刑金などという通常にはあり得ない証を思慮の圏外に置いていました。

しかし方策が無くなって、ついにこの途方もない分野へと入っていかざるを得なくなりました。

それが 瀉白散+黛蛤散(地骨皮・桑白皮・粳米・海蛤殻10 甘草・青黛1)42 でした。

これのどこにも滋陰剤は入っていません。

軽揚な性質の地骨皮・桑白皮に、粳米・海蛤殻・青黛という用途希少の薬味です。

味も淡白で、いままでの濃厚な味に比べればずっと飲みやすいでしょう。

こんな軽い処方で果たしてあの熱が取れるだろうか?

ところが「今回の新しい漢方はとても効いています。胸痛と胃痛もなくなり咳も大分減りました。尻の穴の痒みもなくなりました。」との返事です。

やったね、肝火犯肺のツボさえ抑えておけば何とかコントロール出来そうだ。

長い道のりでしたが、患者さんが信頼してついてきてくれたおかげで私も大きな宝を手に入れることができました。感謝です!

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口角炎

感染性の口角炎にはカンジダ性口角炎とヘルペス性口角炎があるそうです。
だから単純性疱疹(ヘルペス)とヘルペス性口角炎は同類のものになります。
口唇に出るものと口角に出るものの差で、現代医学では同じ扱いをします。

中医学では爛嘴丫子、口丫瘡、燕吻瘡、口吻瘡、燕口(ツバメのくちばしの両端が黄色いのが似ています)、肥瘡などの病名がついています。
わが国の江戸時代には、悪口をいったり憎まれ口を利いたりすると口角瘡ができるぞ云う意味で「からすがおきゅうをすえるぞえ」というそうです。
それから「烏の灸」の名があります。

30年ほど前になりますが、このヘルペス性口角炎になったことがありました。
かさぶたが分厚く出来て、口を開けると亀裂が入り、出血したりして一週間ほど治らなかったものです。
いい大人がみっともなくて人にも会えなかったものです。
当時は治療法が分からず、結局自然に治癒するのを待っていました。

最近、女房が単純性口唇ヘルペスにかかりました。
最初は下唇の中ほどに小さな水泡が出来て、それが次第にかさぶたに変わりみっともないものです。
これを脾胃実熱と弁証して瀉黄散の加減方で短期間で治すことができました。

それでふと昔のことを思い出したのです。
さて、あの時の口角炎をどのように治療すればよかったのだろうか?
比べてみても口角炎と口唇ヘルペスとは部位こそ異なっても感覚的には同じものに思われます。

諸病源候論》には“足の太陰は脾経で,其の気は口に通ずる,また足の陽明は胃経で,手の陽明は大腸経であり,此の二経脈も口を挟む。
この腑蔵が虚したところへ,風邪湿熱が乗ずると,気は経脈へと発し,津液と相搏ち,瘡を生ずる,恒に湿爛して汁あり,世に肥瘡と謂う,亦の名を燕口瘡とも。” 治には清熱、除湿、瀉火するのが宜しい。
三黄凉膈散《喉科紫珍集》等の加減を選用する。

川連 梔子 黄柏 黄芩 川芎 赤芍 甘草 紫蘇葉 薄荷 青皮 陳皮 金銀花 花粉 当帰 射干 元参 各等分

‥‥‥

ちなみに顔面疱疹には とびひ(伝染性膿痂疹) も含まれる。
従って選用される処方も類似したものになる。

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風寒牙痛(歯痛)

2011/04/07 右上の第1歯に変な痛みを感じた。
何秒か間隔を置いてはピクリピクリと瞬間的な痛みが来る。
こんな変わった痛みは初めてだった。
また右鼻の下あたり、その歯根部になるのか押さえると痛む。
歯痛なら胃経の熱だろうと、安易に考えて「清胃散+瀉黄散の加減方」を2日間飲んだが変化なし。
では腎経の熱もあるかと「玉女煎加味」を2日間試したが、やはり効果なし。
持続的でないピクリの痛みはたいして気にならなかったので放っておいたら、

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掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌跖(蹠)膿疱症は何故か手と足に限局して現れる場合が多い。

中医では「湿熱」が(手の平の大小魚際部)と(足の裏の弓部)に循経外越したものと認識している。

掌には心包経の労宮穴があり、ここから心熱を放出する。

足裏の湧泉穴は腎経に属し、同じく腎火を放出する。

心包経と表裏をなすのが三焦経で、これは水湿を運化するのが専門である。

それ故に湿熱は心包経・三焦経・腎経と密接に結びついている。

もともと湿は脾虚から内生し、熱は毒熱や外気の暑熱からもたらされる。

毒熱の由来は不明であるが、歯の金属(金石毒)などを指す事もある。

そこで日本では次の様な漢方処方が引き合いに出されているが、理論的根拠は示されていない。

 三物黄ごん湯・温清飲・越脾加朮湯・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯

川村 力 氏は「陰虚内熱に水停を兼ねる」と弁証し、竜胆瀉肝湯+黄連解毒湯をもって治せるのを報告している。

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