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胃咳

《症因脈治》卷二 咳嗽総論に脾経咳嗽が出ています。
咳をすると右肋下が隠隠と痛み,痛みは心脾に引く;
元気が衰えて嗜臥し,顔色は痿黄となり,腹は脹り黄腫重く動けない,動けば咳が劇しくなるなら,これは脾経咳嗽の症である。
脾咳が已まなければ,胃がその影響を受ける。
胃咳の症状とは,咳して嘔する事である。

【原因】
膏粱の積熱があったり,湿熱が蒸醸したりすると,脾胃の火が,肺へと上熏する;
或いは土が金を生じなければ,母が虚せば子が病む,という事で脾虚脾損もある。
この二つが脾経咳嗽の原因である。

【治療】
肺に熱あれば,家秘瀉白散(桑白皮 地骨皮 甘草)。
脾胃に熱積あれば,梔連二陳湯。
肺気が不足しておれば,生脈散。
土が金を生じなければ,四君子湯;痰あれば,六君子湯;虚熱なら,加丹皮,山梔,熱甚しければ加梔、連。

中医治胃咳案
《黄帝内経》に“六腑咳”という病名があります。
六腑(胃 大小腸 膀胱 胆 三焦)は皆咳嗽の要因となるという意味です。

案例:李某,男,42歳,痩せ型。
咳嗽が二月余も続いており,西薬の抗生素や,中薬の清熱解毒,宣肺止咳の剤を30余剤も并服しているが,効かない。

症見:咳嗽と少しの痰,胃脘は痞悶し,悪心して嘔きそうだ,顔色は萎黄で,食欲はまだあるが,食后には腹が脹り,大便がやや溏。
舌質は淡紅,苔は白膩,脈は沈。
口腔潰瘍に患り易くないかと問えば,“ほとんど毎月患る”と答えた。
即ち胃咳である,証は寒熱錯雑,胃失和降,肺気不利に属する。

処方:(半夏10 黄芩・党参・杏仁3 生甘草・款冬花5 黄連1)30
3剤を,水煎服する。
服后明らかに咳嗽は減軽し,口腔潰瘍は愈えてしまった。
上方を再服すること4剤,咳嗽は痊愈した。

按:患者は初めは外感咳嗽であった,宣達しなければならないのに前医が過って寒凉剤を用いて宣達出来なくした上,寒凉剤で脾胃が傷われ,寒湿が内生し,その湿が長い間に蘊熱となり,脾胃の気機升降に影響して,胃脘痞悶、悪心欲嘔、腹脹、便溏の症が出現するようになった。
此の類の寒熱錯雑の証には一つの典型的特征があり、口腔潰瘍に患り易いと吾が師は総結している。

故に処方は張仲景の甘草瀉心湯加減を選んだ。

甘草瀉心湯に関して,《傷寒論》は云っている:
“傷寒の中風を,医師が反って下してしまい,其の患者は日に数十行の下利をし,食べた穀物は不消化で,腹中が雷鳴し,心下は痞硬満となり,干嘔して心煩し安んずるを得なくなった。医師が心下痞なるを見て,病いがまだ尽きていないと謂い,復た下したので,其の痞は益ます甚しくなった。此れは結熱に非ず,但だ胃中が虚して,客気が上逆して,硬くなっただけである。甘草瀉心湯が主るところである。”

《金匱要略》に云わく:
狐惑病というのがあり,状は傷寒の如くで,黙黙と眠らんと欲しているのに,目を閉じられず,臥しても起きてもどちらも安んじない,喉が蝕ばまれれば「惑」となり,陰が蝕まれれば「狐」という病名になる,飲食を欲せず,食べものの臭いを嫌う,其の顔や目は赤くなったり、黒くなったり、白くなったりと色々変わる。上部が蝕ばまれれば声は喝れる,甘草瀉心湯が主るところである。”
上のことから分かるように,外感病を誤下したり或いは寒凉剤を過用して生じた脾胃系統の変証であり,これは寒熱錯雑証だから,初めに甘草瀉心湯を選び,また款冬花、杏仁等の如き利肺気の品を加入すれば,療効は更に顕著となる。
筆者は臨証で“咳して嘔する”のを見れば即「胃咳」と診断出来ると云っている。

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