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慢性蕁麻疹

瘾疹案/営衛不和型
全某某,男,18歳,学生。
初診(2006.06.20):周身瘙痒と共に風団(地図状蕁麻疹)がでるようになって10ケ月になる。
患者は去年の8月に海鮮を食べてから全身の皮膚に風団瘙痒が出るようになった。
毎日早晨に起床するや発作が始まり,9時を過ぎると自然に消退する。
体が痒くなり風団が出ても,卯(7時)に発疹し巳(11時)には消える。
口が干き水を飲みたがり,大便は干結する。
面色は潮紅で,風団の色は紅い,舌は紅く舌体は小さい,舌の前部には苔なく,中根部は黄色,脈は緩。

此れは海鮮動風の食品を好んだため,化燥傷陰となり,体内が陰虚となり,衛気が相協調できず,営衛不和となり,肌膚の疏泄が失調したものである。

治法は滋陰清熱,調和営衛とすべし。
処方は増液湯合桂枝湯加減とする。

(白芍・生地黄・白蘚皮・意苡仁7 玄参5 防風・麦門冬・青蒿・鬱金・黄岑・地竜3 桂枝・蝉衣2)55

7付,毎日1付,水煎2次,取汁300ml,分2次温服。

生冷、油膩、辛辣発物、魚腥蝦蟹を忌む。

復診(2006.06.27):上方を服用后一周内に発作は2次しか起こらなかった。
大便は稀(柔らかい),日行1-2次,舌脈は前と同じ。

此れはすなわち営陰と衛気が協調を始め,病情が改善してきたものである。
ただ陰柔の品は脾を傷碍するので,前方から麦冬を去り,白朮3 を加え、健脾運湿を図り,桂枝は1.5gに減らして温燥太過となるのを防ぐ。

三診(2006.07.04):風団は消退し再発はしていない。
大便は正常だが,口干を覚え,舌紅で苔は薄微黄,脈は緩。
此れは即ち営衛が調和し,陰陽が平衡を保ち,病は已に治癒に向っている。
前方から桂枝を1gに減らし,芦根3gを加えて生津止渇を図る。

処方は増液湯(生地、玄参、麦冬)に白芍を重用し、黄芩・鬱金・青蒿で滋陰清熱凉血したものである。

皮損が卯に発して巳には消えるのは,太陽病の解せんと欲する時である。
故に桂枝、防風を選用して通陽化気解表を図った。
桂芍を配伍したのは,調和営衛で,桂枝湯の方意である。
営陰虧虚が鍵である,故に白芍を倍用した。

‥‥‥
【my治験例】
ある成人男性、慢性蕁麻疹と診断されて西医の服薬治療を3年間受けているが改善せず、漢方治療へと変更してきた。
この方は週末の飲酒と酒肴の魚類が好物で、しばしば深更に及ぶ事がある。
多分それが蕁麻疹の原因になっていると思われるが、無類の酒好きのためそれらを減らす事は困難である。
発疹は上下全身に及ぶ地図状の紅斑疹のため、あたかも遠山の金さんの桜吹雪もかくやあらんと思わせるという。
それも夜間から出始め、昼前には消えるのが常である。
またブツブツした赤疹が時間を問わず出る事もあり、これは入浴したり運動で体が火照ると軽快する傾向がある。
普通なら体が温まると発疹がひどくなるものだが、逆に消えていくというのが不思議である。
また掻痒感は非常に激しく、爪の先までが痒くなると表現する。

1. 先ず連想したのは、酒や魚からの刺激物の摂取という事から「腸胃積熱型」の蕁麻疹ではないかという事でした。
そこで茵陳蒿湯をはじめ、その加減方を一月ほど試しましたが変化はありませんでした。

2. 次に便秘と痔があるというので、引き続き胃腸実熱型の防風通聖散を加減して一月ほど試しましたが、これでも変化はありませんでした。

3. 次に胃腸から離れて、風熱や湿毒と考えて消風散黄連解毒湯などを中心にして処方をしてまた一月ほど、しかし幾分の軽快はあっても出て来ないところまでは至りません。

4. 長年月にかけて酒や海鮮を多食した事を湿熱毒の積滞とばかり考えてきたが、これ以上は無駄なので路線変更をする。

丁度その頃ネットで「海鮮動風の品を進んで食べていると,ついには化燥傷陰が起こり,体内では陰虚となり,体表の衛気が協調出来ず,営衛不和となり,肌膚の疏泄機能が失われ発疹を見る事になる。」という説明を発見した。

処方:増液湯合桂枝湯加減
(白芍・生地黄・白蘚皮・意苡仁7 玄参5 防風・麦門冬・青蒿・鬱金・黄岑・地竜3 桂枝・蝉衣2)55

この処方に変わってから、最初の一週間でもう殆ど発疹は出なくなりました。
服用を始めてもう既に一ヶ月は経ちましたが、十分に安心できています。

途中で一度風邪を引き、ひどく咳が出た事がありました。
咳がひどくて左脇の腹筋が痛くなり、それが長く治らずヒーヒー云っていました。
考えてみるとどうもそれも営分の陰虚と関わっていて、筋肉痛となっていたのではないかと思われます。
それを見破れず徒に肝火犯肺だと診立てたのは私の未熟でした。(反省)

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